第17話 ノートを作ろう(物理的に)
雑貨屋でまとめて買ってきたフールス紙。ちょっといい値段がしたが、いろいろとメモを取りたかったので奮発した。
鉛筆も元の世界と同じように黒鉛の芯を木で挟んだタイプを何本か購入しておいた。それとは別にインクとペン。
裁縫セットから糸と針を取り出しフールス紙を製本する。師匠から借りた千枚通しで紙に均等な位置に穴をあけていく。和綴じなら奇数個の穴が必要。
しかし上質な紙を使っているので綴じ方が和綴じというだけ。紙の片面だけを使う綴じにはしない。鉛筆なら裏写りを気にしなくていいからね。
千枚通しと一緒に借りたクランプできっちり角を出して固定。まず1/2の位置に一つ。さらに割っていく形で七つの穴をあける。
あとは糸で縫っていくだけだ。末端を残して背表紙に一回転、天に一回転。隣の穴に移って背表紙に一回転、隣の穴に移って……
数分後にはお手製のノートが完成。だいたいA5かB6くらいのサイズになった。あとは牛の革を買ってきて表紙かカバーにすればかなり見栄えも良くなるだろう。製本するかブックカバーにするかは悩みどころだ。
翌朝、道具を師匠に返してノートのできを見てもらう。手先の器用さくらいは伝わるだろう。
「妙な才能があるもんだな。製本のやり方とか知ってるのか」
師匠に感心されてちょっと嬉しくなる。うろ覚えだったがなんとかなるものだ。
「ハードカバーの製本方法とは違う、簡易的なものですけどね」
西洋式の製本は偶数穴で糸かがり綴じをしていたはずだ。そのやり方だと接着剤や見返し用の紙、表紙などが必要になる。
そもそも重たくなるのでメモのように普段から持ち歩くには適さない。とはいえハードカバーは立ったまま書くときは便利だったりするのだが。
「それを売って商売にするのか?」
その発想はなかった。こういうのも商売になるのか。
「いえ、自分用に作っただけです。師匠に教えられたことを記録しておこうと思いまして」
「そのノートブックを
口調はあれだが目は笑っている。
「はい」
ノウハウを持ち出されたら困るのはどこでも一緒なのだな。
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