エピソード56/俊之んチからの帰り道その2

一方、先に俊之としゆきの家から帰った木綿子ゆうこあつしの2人は、それぞれ自転車を引きながら、歩いて木綿子の家へと向かっている。


淳「長谷川はせがわは他には誰にチョコをあげたの?」


木綿子「え!?私は大竹おおたけ君と山ノ井やまのい君だけだよ」


淳「そうなんだ」


木綿子「だって、私は、そんなに親しい男の子、他にはいないもん」


淳「言われてみると、長谷川って山ノ井以外の男とは、余り話をしているところとかは見た事がないな」


木綿子「でしょう。由佳ゆかは男女関係なく、誰とでも親しくなれるみたいだけど」


淳「そうだな。佐藤さとうは本当に誰とでも仲良くしている印象はあるよ」


木綿子「だから、由佳、義理チョコばかり、沢山、用意をしなきゃならないから大変だって」


淳「あはは。でも、佐藤に本命がいないってのは本当なの!?」


木綿子「うん。今はそうみたい」


淳「佐藤、結構、男子に人気があるんだけどな」


木綿子「みたいね。山ノ井君も同じ様な事を言っていたよ」


淳「高望みし過ぎなんじゃねーの」


木綿子「そうなのかなー」


淳「違う!?」


木綿子「私は違うと思うな」


淳「そうなんだ」


木綿子「高望みって感じはしないよ」


淳「じゃあ、何でなんだろうな」


木綿子「さっきも言ったけどさ」


淳「何?」


木綿子「由佳、男の子とも、すぐに仲良くなっちゃうでしょ」


淳「うん」


木綿子「それで、友達以上には考えられなくなっちゃうみたい」


淳「そういうもんなのかなー」


木綿子「一度、友達として仲良くなっちゃうと、中々、恋愛って考えられなくなっちゃうところは、あるんじゃないかな」


淳「それは分からないでもないけど、そうなると男は辛いよな」


木綿子「どうして?」


淳「だって、男はいい関係になりたくて、頑張って仲良くなろうとするじゃん」


木綿子「うん」


淳「だけど、頑張って仲良くなっても、友達にしかなれないって」


木綿子「友達じゃ駄目なの!?」


淳「だから、その辺なんだよね」


木綿子「その辺!?」


淳「山ノ井みたいに決まった相手がいれば、男だって友達で十分だと思うけど」


木綿子「うん」


淳「山ノ井以外で佐藤にちょっかいを出している男達は、みんな、佐藤に気があると思うんだ」


木綿子「それは分かる気がする」


淳「佐藤はその辺を分かっているのかな!?」


木綿子「どうなんだろう~!?でも、そこが私と由佳の違いなのかな」


淳「どう違うの?」


木綿子「私の場合は男の子の方から、ちょっかいを出されると警戒をしちゃうっていうか」


淳「ああ。そういう事ね」


木綿子「それで男の子の友達が余り出来ないんだなって」


淳「そうだよな。じゃなかったら、長谷川も義理チョコ地獄に陥っているはずだよな」


木綿子「何、それ~」


淳「だって、長谷川も男子に人気があるんだぜ」


木綿子「そうなの!?」


淳「佐藤よりも人気があるのかもしれないよ」


木綿子「えー!?由佳には敵わないって」


淳「ははは」


急に淳が笑い出した。


木綿子「どうしたの?」


淳「いや、本人だけは気付かないもんなんだなって」


木綿子「何が?」


淳「だから、さっき佐藤も男の気持ちに気付いていないみたいな話をしたじゃん」


木綿子「だったら、大竹君だって女子に人気があるんだよ」


淳「え!?そうなの?」


木綿子「あはは。本当だ。本人だけは気付かないんだねー」


淳「ってかさー。正直に言うと、好意を持ってくれているんじゃないかって思う事はあるよ」


木綿子「うん」


淳「でも、勘違いだったら恥かしいじゃん。だから、そう感じても、それを否定するしかなくなっちゃうんだよ」


木綿子「私だって同じだよー」


淳「そうなんだ。でも、佐藤はきっと違うぜ」


木綿子「そうかな!?」


淳「佐藤は本当に気付いていないっていうか、気付く気すらない様な気がする」


木綿子「気付く気すらないっていうのは、当たっているのかもしれないわ」


淳「だろ!?」


木綿子「でも、そこが由佳のいいところだって思うんだ」


淳「そうだな。俺達がちょっと考え過ぎなのかもしれないな」


木綿子「それでも、私は由佳の真似は出来ないと思う」


淳「どうしても考えちゃうよな」


木綿子「うん」


二人は、こうして由佳を話のネタにしながら、木綿子の家へと向かっている。


ところどころにある街灯の光が二人を温かく見守っている様だった。

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