エピソード37/突然の好転
後、1週間ちょっともすれば、2学期の期末テストも始まる。
それでも
そして俊之はバイトが終ってから、自転車を飛ばして自宅へと向かって行く。
すると目の前に、
俊之は急ブレーキをかけて、隆行を少し通り過ぎたところで止まる。
隆行も俊之に気付いて、俊之の方へ振り向いた。
俊之「隆行、何、可愛い子を連れちゃってよ~」
隆行「ははは。この子が
俊之「あ、そうなんだ。じゃあ、何!?元に戻ったの?」
隆行「いえ。さっき、書店でばったり会っちゃって、話ついでに家まで送ってるってだけです」
俊之「そうなんだ」
香織「誰!?」
隆行「姉貴の彼氏で俊君っていうんだ」
俊之「だったら、俺、お節介を焼いちゃおうかな」
隆行「何ですか!?お節介って?」
俊之「香織ちゃん」
香織「はい。何でしょうか?」
俊之「隆行の奴、ヘマをしたでしょ」
隆行「俊君~。そんな事を今、言わなくてもいいじゃないですか」
俊之「あはは。でも、それは隆行が香織ちゃんの事を好きで好きで仕方がなかったからなんだよ」
隆行が頭を抱える。
香織「そうなんですか!?」
俊之「だからさ~、出来れば、許してやって欲しいんだけどね」
隆行「俊君の方こそ、もう勘弁してくださいよ~」
俊之「あはは。分かった、分かった。邪魔者はとっとと消えるよ。そんじゃあな」
そう言うと、俊之は再び自転車を飛ばして自宅へと向かった。
そして隆行は再び自転車を引きながら、香織と歩いていく。
隆行「ごめんね。変な話を聞かせちゃって」
香織「いいよ。それよりあの人、いきなり何なの!?」
隆行「俺、俊君に色々と相談に乗って貰っていてさ」
香織「そうなんだ。だから、私の事も知っていたんだ」
隆行「うん」
香織「ねぇ、隆行」
隆行「何?」
香織「ちょっと、そこの公園で話でもしない!?」
隆行「いいよ」
隆行は公園の外に自転車を止めて、二人で公園の中に入りベンチに座った。
香織「隆行、私の事がそんなに好きなの?」
隆行「え!?」
少しの間をおいてから、隆行が答える。
隆行「うん」
香織「そっか~」
隆行は何を言ったらいいのか分からずに言葉を探していた。
香織「私さ~」
隆行「うん」
香織「本当は隆行の事もう、好きじゃなくなったって思っていたんだ」
隆行「そっか」
隆行はちょっと落ち込む。
香織「でも、最近の隆行を見ていたらさ」
隆行「え!?」
隆行の期待が膨らむ。
香織「なんか、ちょっと悔しくてさ」
隆行「何で?」
香織「だって、私と別れてから、すごく勉強を頑張っているみたいじゃん」
隆行「うん」
香織「じゃあ、私って一体、何だったのよって思ったりしてさ」
隆行「ははは」
香織「それで私、また隆行の事が気になってきちゃっていたんだ」
隆行「実はさ、」
香織「うん」
隆行「香織に友達になろうって言われてさ」
香織「うん」
隆行「俺、すごく落ち込んじゃって」
香織「そうだったんだ」
隆行「それで、俊君に相談をしたらさ」
香織「うん」
隆行「香織の事を諦めきれないから、落ち込むんだろって言われて」
香織「そうなんだ」
隆行「それで俺もその通りだと思ってさ」
香織「うん」
隆行「そうしたら、俊君がさ」
香織「うん」
隆行「先ず、何か目標を決めろって言うんだ」
香織「目標!?」
隆行「うん。それで、その目標を達成してから、もう一度、香織にアタックをしてみろって」
香織「そうだったんだ。それで、その目標は何なの?」
隆行「テストでベスト10」
香織「すごいじゃん」
隆行「でも、この間の中間では駄目でさ」
香織「うん」
隆行「それで、また俊君が励ましてくれてさ」
香織「うん」
隆行「今度の期末テストでは、ベスト10に入れる様にって頑張っていて」
香織「うん」
隆行「そしてベスト10に入ったら、香織にもう一度、告ろうかなって思っていたんだけど」
香織「そっか」
隆行「その前に今日、バレちゃったよね」
香織「ふふふ。いいよ」
隆行「え!?何が?」
香織「だから、もう一度、付き合おうよ」
隆行「本当に!?」
香織「嫌だったら、別に構わないけど」
隆行「いや、嫌じゃないって」
慌てて隆行が否定をする。
香織「ふふふ」
隆行「けど、」
香織「けど!?」
隆行「もう少し、待っていて欲しいんだ」
香織「何で?」
隆行「俺、今度の期末テストで、絶対にベスト10に入るからさ」
香織「本当に~!?」
隆行「俺さ、まだ自信がないんだ」
香織「何が絶対よ」
隆行「いや、そうじゃなくって、自分自身に」
香織「自分自身!?」
隆行「だから、先ずベスト10の目標を達成して自分に自信をつけてから、香織ともう一度、やり直したいなって思っているんだけど。駄目かな?」
香織「分かった」
隆行「本当に!?」
香織「何度、言わせるの!?やっぱり、止めようかな」
隆行「えーーー」
香織「あはは。冗談だよ。だって隆行、頑張っているじゃん」
隆行「良かった」
香織「でも、今度の期末テストまでだよ」
隆行「分かった」
香織「なんてね」
隆行「何?」
香織「もっと待ってあげてもいいけど」
隆行「う~ん。それは、ちょっと今は考えたくないな」
香織「そっか。私もさ~」
隆行「うん」
香織「さっき、隆行の事を気になってきちゃったって言ったでしょ」
隆行「うん」
香織「本当はさ~」
隆行「うん」
香織「隆行の気持ちは分かってはいたんだよね。なんとなくだけど」
隆行「そうなんだ」
香織「でも、なんとなくだからさ」
隆行「うん」
香織「もういいかな~、なんて思ってさ」
隆行「何が?」
香織「隆行の事を好きでいる事」
隆行「そっか」
香織「でも、気になってくるとさ」
隆行「うん」
香織「全然、良くなんかなくてさ」
隆行「そうだったんだ」
香織「それで今日、俊君だっけ!?」
隆行「うん」
香織「その俊君に、あんなにはっきり言われちゃったらさ」
隆行「うん」
香織「やっぱり、嬉しかったんだ」
隆行「そうなんだ」
香織「隆行がそんなに私の事を好きでいてくれたんだって分かって」
隆行「ははは」
隆行は照れ笑いをした。
香織「だから、頑張ってね」
隆行「うん。今度は絶対にやってみせる」
香織「絶対だよ」
隆行「ねぇ」
香織「何?」
隆行「キスしてもいい?」
香織「え!?」
香織は少し戸惑う。
隆行「駄目!?」
香織「ん~ん」
それを聞いた隆行がゆっくりと香織の唇に自分の唇を重ねる。
そして数瞬の間、唇を重ねた後、ゆっくりと唇をはがす。
隆行は照れていた。
香織「何で別れる前にしてくれなかったのよ」
隆行「ごめん」
香織「ふふふ。でも、許してあげる」
隆行「ありがとう」
香織「でも、何で今日になったら急に!?」
隆行「俺もよく分かんないんだ」
香織「そうなんだ」
隆行「なんか、すごく香織にキスがしたくなっちゃって」
香織「ふふふ」
隆行「そうしたら、言っちゃっていたんだ」
香織「そっか。でも、嬉しかったよ」
隆行「うん。俺もすごく嬉しかった」
香織「それじゃ、そろそろ帰ろっか」
隆行「うん」
二人は公園を出て、隆行が自分の自転車を引き香織を送っていく。
香織の家はすぐ近くだった。
そして香織を送った後、隆行は一人で自宅へと自転車で向かう。
その隆行の全身には覇気が漲っている様である。
12月も近づき、かなり寒さも深まってはいたが、今の隆行には、そんな寒さなど気にもならない様だった。
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