エピソード32/変な遺伝

今日もまた、絵美えみ由佳ゆか木綿子ゆうこの3人が俊之としゆきの家に来ていた。


そして俊之が居る時は、みんなで勉強をする。


今日、俊之はアルバイトに行っていて、居なかった。


以前は、俊之が居ないと3人でくっちゃべっているだけだったが、最近は、俊之が居ない時も3人は勉強をする様になっている。


しかし、そんな中で絵美だけは勉強に集中が出来ていない様だ。


絵美は由佳と木綿子が一緒に勉強をする様になってからは、おしゃべりをする時間が増えていた。


そして由佳と木綿子は、そんな絵美を適当に相手をしながらも勉強をしている。


傍から見ると、絵美が一人で、くっちゃっべっている様に見えた。


そして絵美は時々、家事をする為に席を外す。


そんなこんなで今日も夕方になって、勉強を終えようとしていた。


絵美「ね~、まだ終んないの!?」


由佳「もう、ちょっと待っていて」


木綿子「私は終ったよ」


絵美「木綿子、アルバイトの方はどう!?」


木綿子「思っていたよりも大変だわ」


絵美「そうなんだ」


木綿子「まあ、慣れれば少しはマシなんだろうけど。絵美は決まったの?」


絵美「うん。私は今度の日曜日からなんだ」


木綿子「そっか」


由佳「終った~」


絵美「由佳はアルバイトを探したの?」


由佳「実はまだ、探していないんだ」


木綿子「由佳は付き合いでやるんだもんね」


由佳「でも、もう絵美も決まった様だし、木綿子ももう始めているでしょ。 私もそろそろ探さないとな~」


木綿子「無理に働かなくたっていいのに」


由佳「だって、日曜日に一人で何をしたらいいのか分かんないし」


絵美「あはは」


由佳「だったら、アルバイトをすればお金も入るし、社会勉強にもなるじゃん」


木綿子「本当に勉強になるわ」


絵美「そんなに大変なんだ」


木綿子「大変なのもあるけどさ~」


由佳「他になんかあるの?」


木綿子「こないださ~、お客さんにナンパをされちゃって」


由佳「えー、だったら、私もファミレスにしようかな」


木綿子「そんなに、いいもんじゃないって」


絵美「そうなの!?」


木綿子「そりゃ、自分好みの男だったら、いいんだろうけどね」


由佳「そっか」


木綿子「ファミレスでナンパなんてする男に、ロクなのいないと思うよ」


絵美「そうなんだ」


木綿子「だから、ナンパなんかされても困るだけでさ」


由佳「なるほどね~」


木綿子「由佳には、ちょっと無理かも」


由佳「何でさ?」


木綿子「由佳、ナンパをされて、断るの下手でしょ!?」


由佳「そうかな!?」


木綿子「下手をしたらお客さんに、ビンタでもかますんじゃないかって」


絵美「あはは」


由佳「そんな事はしないって」


木綿子「それは、そうかもしれないけど、夏休みに海へ行った時、由佳、ナンパをしてきた男の子に喧嘩腰だったじゃん」


由佳「そりゃ、あんな冴えない男共に、ナンパなんかされたって迷惑なだけじゃん」


木綿子「そりゃ、そうかもしれないけどさ」


絵美「でも、そういう事もあるんだね~」


由佳「コンビニでも、そういう事はあるのかな!?」


木綿子「コンビニじゃ、ないんじゃないかな」


由佳「そっか~」


木綿子「気に入ったお客さんが来たら、由佳から声をかけたら!?」


絵美「あはは」


由佳「そういうのも、ありかもね」


絵美「ありなんだ」


そして勝手口のドアが開いた。


俊之の母「ただいま~」


俊之の母が帰って来た。


絵美「おかえりなさい」


絵美が立ち上がって、俊之の母を出迎えに行く。


由佳「お邪魔してます」


木綿子「お邪魔してます」


俊之の母「今日は、みんな揃っているのね。じゃあ、今日はみんな、ウチで夕飯を食べていきなさいよ」


由佳「いいんですか!?」


俊之の母「カレーでよければ、だけど」


由佳「木綿子、どうする!?」


木綿子「どうしようか」


俊之の母「女4人で楽しく食べましょうよ」


由佳「分かりました。いいでしょ!?木綿子も」


木綿子「うん」


由佳「じゃあ、ご馳走になります」


俊之の母「絵美ちゃんはいいでしょ!?」


絵美「うん。でも、ちょっとお母さんに電話をします」


俊之の母「そうね。由佳ちゃんと木綿子ちゃんも、お母さんに電話をしなさい」


絵美と由佳と木綿子は自分の携帯で自宅に電話する。


そして、それぞれ俊之の家で夕飯をご馳走になる事を伝えて電話を切った。


俊之の母「絵美ちゃん、手伝ってくれる!?」


絵美「はい」


由佳「私達も何かお手伝いをしましょうか!?」


俊之の母「こんなところに4人も居たら邪魔になるだけだから、あなた達はおとなしく待っていて頂戴」


由佳「分かりました」


俊之の母と絵美は夕飯の支度を始めた。


リビングでは由佳と木綿子が話をしている。


由佳「山ノ井やまのい君のお母さんって、本当にいい人だよね」


木綿子「そうだね。すごく気さくで親しみ易い感じだし」


由佳「山ノ井君、そういうところ、お母さんに似たみたいだね」


木綿子「本当にそうだね。 だけど、山ノ井君の場合は時々、馴れ馴れしいって思ったりもするけど」


由佳「本当。時々、私達を女の子と思っているの!?って、感じの時はあるよね」


木綿子「山ノ井君のお父さんって、どんな人だったんだろう」


由佳「後でおばさんに訊いてみようよ」


木綿子「そうだね」


由佳と木綿子はおしゃべりを続ける。


俊之の母と絵美はカレーを作っていく。


暫くすると、先ず、炊飯器から、ご飯が炊けた事を知らせる音が鳴った。


そしてカレーの方も出来上がる。


俊之の母「あんた達、自分の分は自分で持っていって」


台所から俊之の母が言う。


それを聞いた由佳と木綿子は立ち上がって台所へ行き、俊之の母がよそってくれたカレーと麦茶の入ったコップを持ってリビングに戻った。


そして絵美も自分のカレーと麦茶の入ったコップ持ってリビングへ来る。


最後に俊之の母が自分のカレーと麦茶の入ったコップを持ってリビングへ来た。


俊之の母は由佳の対面に座る。


由佳の右の側に木綿子が座っていた。


俊之の母「それじゃ、頂きましょ」


絵美「いただきま~す」


由佳「いただきま~す」


木綿子「いただきま~す」


3人は声を揃えて言った。


由佳「美味しい~」


木綿子「本当にすごく美味しい」


俊之の母「あら、嬉しい事を言ってくれるわ」


絵美「私は前に一度、食べた事があるんだ~」


由佳「肉は豚肉ですか?」


俊之の母「そうよ」


由佳「豚のカレーも、こんなに美味しいんだ」


木綿子「ウチはいつも豚だけど」


絵美「ウチもだよ~」


俊之の母「由佳ちゃんチは牛なのかしら?」


由佳「そうです」


俊之の母「ウチは牛肉なんて滅多に食べないから」


木綿子「ウチもそうですよ」


絵美「ウチもそうだな~。たまに、すき焼きの時に食べるくらい」


俊之の母「すき焼きなんて、私は作った事がないわ」


絵美「そうなんですか!?」


木綿子「私も自分チでは、すき焼きなんて食べた事がないです」


由佳「私もすき焼きは殆ど食べた事はないな~」


絵美「そうなの!?」


由佳「ウチは殆どが洋食だからさ~」


絵美「そうなんだ。ウチは逆に殆どが和食系」


由佳「木綿子んチは?」


木綿子「ウチのお母さんは何でも作れるけど、安いものばっかり」


絵美「俊君のお母さんも、何でも作れるよ」


由佳「そうなんですか!?」


俊之の母「まあ、大抵のものは作れると思うけど、木綿子ちゃんチと同じで安いものばかりだけどね」


由佳「いいな~。私はたまに中華とかも食べたいと思うけど、お母さん、作れないからさ」


木綿子「中華って言っても、ウチのチャーハンは、びっくりすると思うな」


絵美「何で?」


木綿子「ベタベタでさ~、とてもチャーハンとは思えない」


俊之の母「チャーハンは意外と難しいのよ。だから、私もチャーハンは作れないのよ」


絵美「チャーハンって、ベタベタだと美味しくないの?」


木綿子「美味しくない訳じゃないけど、チャーハンとは別の料理に思えるんだよね」


絵美「そうなんだ」


木綿子「お店のチャーハンはご飯がパラパラしていて、それが美味しいと思うけど」


由佳「そうだよね。お店のチャーハンはすごく美味しい」


俊之の母「そのご飯をパラパラさせるところが、プロの技なのよ」


由佳「でも、このカレーはお店で食べるよりも美味しいかもしれない」


俊之の母「あら、由佳ちゃん、お上手ね」


木綿子「私もそう思うな~」


俊之の母「まあ、カレーは家庭で、それぞれ味が違っていたりして、そのそれぞれの味がどれも美味しかったりもするからね」


木綿子「ウチも豚のカレーだけど、このカレーとは全然、味が違う」


絵美「ウチのカレーも味は違うけど、ウチのも美味しいよ」


木綿子「ウチのカレーも美味しいけど、おばさんのカレーは本当に美味しいです」


俊之の母「木綿子ちゃんもありがとうね」


そうして4人は、それぞれカレーを平らげる。


俊之の母「おかわりはいいの?」


由佳「はい。もうお腹一杯です」


木綿子「私もです」


絵美「私も~」


俊之の母「じゃあ、食器だけ片付けちゃうわね」


そう言うと、俊之の母は4人の皿を重ね、立ち上がって流しまで持っていく。


そして戻って来て、元の位置に座った。


絵美「お皿、洗いましょうか?」


俊之の母「そんな事はしなくていいわよ。後で私がやるから。それより、みんなでおしゃべりをしましょ」


由佳「おばさんに訊きたい事があるんですけど、いいですか?」


俊之の母「何かしら?」


由佳「山ノ井君のお父さんって、どんな方だったんですか?」


俊之の母「そうね~。とても優しい人だったわ」


木綿子「そうなんだ~」


俊之の母「だけど、ちょっと助平だったけど」


絵美「あはは。俊君と同じだ」


俊之の母「あら、俊之もそんなに助平なの!?」


絵美「うん」


俊之の母「全く、あの子ったら、絵美ちゃんに何をしているんでしょうね」


絵美「へへ~。お父さんはどんな感じだったんですか?」


俊之の母「私、昔、看護士をしていた事があるのよ」


由佳「そうなんだ」


俊之の母「それで、私の勤めていた病院に、お父さんが担ぎ込まれて来たんだよね」


木綿子「へぇ~」


俊之の母「仕事で足を骨折して」


由佳「何の仕事をしていたんですか?」


俊之の母「大工さんだったのよ」


絵美「俊君も今、おじさんのところで、大工さんの手伝いをしているけど」


俊之の母「そのおじさんはお父さんのお兄さんなのよ」


絵美「そうだったんだ」


俊之の母「お父さんは、そのお兄さんの後を追って、大工になったらしいけど」


由佳「山ノ井君も大工さんになるのかな?」


絵美「俊君は大工さんになる気はないみたいだけど」


木綿子「そうなんだ」


俊之の母「それは俊之の好きにすればいいわ」


由佳「それで病院で何かあったんですか?」


俊之の母「そうなのよ。それで、お父さん、入院する事になってね。私がお父さんを担当する事になっちゃったのよ」


木綿子「そうなんだ。そういう出会いもあるんだね~」


俊之の母「それで、お父さんったら、いきなり私のお尻を触ってきたのよ」


由佳「あはは。そうなんだ」


俊之の母「それから、顔を合わす度に私のお尻を触ってくるし」


木綿子「本当に助平だったんだ」


絵美「あはははは。俊君も私のお尻をよく触るよ」


俊之の母「あら、まぁ。本当なの!?」


絵美「うん。だから、私、俊君って、私のお尻が好きなのかな~って思っていたんだ」


俊之の母「あはははは。本当に変なところがお父さんに似ちゃったのね」


由佳「あははは。本当に可笑しい~」


木綿子「あははははは。本当に山ノ井君って面白いね」


4人は笑いが止まらなかった。


そして、暫くしてから、その笑いが収まってくる。


由佳「それで、どうなったんですか?」


俊之の母「そう、それで私も最初は、それが嫌で怒ったりもしたし、 婦長さんに担当を代えて欲しいって、頼んだりもしたのよ」


木綿子「へぇ~」


俊之の母「でも、担当を代えて貰う事は出来なくて、仕方なく、お父さんの担当を続けていたんだけど、その内にお父さんが私の事を好いてくれているから、そういう事をするんだって分かってきて」


由佳「そうなんだ」


俊之の母「そうしたら、今度は私の方が、お父さんの優しいところに惹かれてきちゃってね~」


木綿子「そんなに優しい人だったんですか?」


俊之の母「そうなのよ。助平なところを除けば、とても優しくていい人だったのよ」


由佳「へぇ~」


俊之の母「それで、お父さんが退院をしてから、付き合う様になったんだけどね」


絵美「面白~い」

俊之の母「あら、そんなに面白かった!?」


絵美「うん。だって、俊君もそういう感じだし」


俊之の母「俊之もそんなに優しいところがあるの?」


絵美「うん。お母さんの話を聞いていて、本当にお父さんにそっくりだなって思った」


俊之の母「そうなんだ。でも、お尻を触るところまで似る事はなかったのにね」


由佳「あはははは」


木綿子「あはははは」


絵美「でも、私はそんなに嫌じゃないんだ」


俊之の母「そうなのよね。何とも思ってない時は嫌なんだけど、好意を持っちゃうと嫌ではなくなってきたりしちゃうんだよね」


由佳「そうなんだ」


俊之の母「絵美ちゃん、本当に俊之の事を好いてくれているんだね」


絵美「うん。大好きです」


照れながら、絵美が言った。


木綿子「また、いつものが始まったわ」


由佳「本当にいつもいつも、これだもんね」


俊之の母「あら、そうなの!?」


由佳「いつも私達、あてられっぱなしで」


俊之の母「そうなんだ。由佳ちゃんと木綿子ちゃんには迷惑な話よね」


木綿子「でも、面白いから」


由佳「そうだよね。そうじゃなかったら、一緒に遊んだりはしないよね」


絵美「何、それ~」


俊之の母「あはは。絵美ちゃん、いいお友達を持っているじゃない」


絵美「う~ん。それを簡単に認めちゃっていいのかな」


由佳「なに!?不満でもあるの?」


木綿子「そうよ。絵美が私達に不満を持つなんて、十年、早いわよ」


絵美「も~。こんな友達がいい友達なのか釈然としないんだけど」


俊之の母「あはは。本当に面白いわね。あなた達って」


そして、また勝手口のドアが開く。


俊之「ただいま」


俊之がアルバイトを終え、帰って来た。


俊之の母「おかえり」


絵美「おかえりなさ~い」


俊之「なんだ、今日はまだ、みんな居るんだ」


由佳「お邪魔様」


木綿子「おばさんに夕飯をご馳走になっちゃった」


俊之「そうなんだ。今日の夕飯は何?」


俊之の母「カレーよ」


俊之「そんじゃ、先にシャワーを浴びてくる」


俊之はそう言うと、リビングを出て風呂場へ行った。


由佳「絵美、これからどうするの?」


絵美「私はこのまま残って、俊君と勉強をすると思う」


木綿子「そうなんだ」


絵美「いつも、俊君がアルバイトの時は、ウチで勉強をするんだけどね」


由佳「私達はどうしようか!?」


木綿子「そうね」


絵美「今日は由佳達も一緒に勉強をしようよ」


木綿子「由佳、時間は大丈夫?」


由佳「うん。お母さんに電話をすれば、大丈夫かな」


木綿子「私も一応、電話をしておこう」


由佳「おばさん、大丈夫ですか?」


俊之の母「いいに決まっているでしょ。勉強をする子供達の邪魔なんかしないわよ」


由佳と木綿子は再び、自分の携帯で自宅へ電話をかけた。


そして俊之の家で勉強をするので帰るのが遅くなる事を伝えて電話を切る。


絵美と由佳と木綿子の3人は、そのままリビングでおしゃべりを続けた。


俊之の母は俊之の夕飯の支度をしながら、洗い物を済ませる。


そして俊之がシャワーを浴び終えて、リビングに戻ってきた。


俊之「飯、出来てる!?」


俊之の母「すぐに出来るわよ」


俊之はそのままリビングを通り過ぎて台所に行く。


そして俊之は台所の椅子に座った。


俊之「お前等、今日は一緒に勉強をすんの?」


俊之はリビングにいる由佳達に話しかける。


由佳「そうするつもりだけど」


木綿子「お邪魔かしら!?」


俊之「別に構わないよ」


俊之の母がカレーをよそって俊之に渡す。


そして俊之は勢いよくカレーを食べ始めた。


俊之の母「おかわりは後、1回しか出来ないよ」


俊之「えー、何だよ、それ」


俊之の母「足りなきゃ、うどんを茹でるけど」


俊之「そうだな~、1杯分だけ茹でて。カレーはあるんでしょ!?」


俊之の母「カレーはあるけど、ご飯が、ね」


俊之「だったら、いいよ。俺、カレーうどんも好きだし」


俊之の母はうどんを茹で始めた。


俊之はカレーを食べている。


すぐに1杯目のカレーを食べ終わって、おかわりをした。


俊之が2杯目のカレーを食べている間に、うどんが茹で終わる。


そして俊之の母がカレーうどんを俊之の前に置いた。


俊之は2杯目のカレーを食べ終わると、そのままカレーうどんを食べ始める。


俊之の母が俊之が食べ終ったカレーの皿を、テーブルから流しに持っていき洗った。


そして俊之がカレーうどんも食べ終わる。


俊之の母「私はお風呂に入ったら、今日は寝るから、後はよろしくね」


俊之の母はそう言って、カレーうどんの入っていた丼を流しに持っていき洗う。


俊之「分かった」


俊之はリビングの方へ行く。


俊之「俺、ちょっと勉強道具を持ってくるから待っていて」


絵美「分かった」


そして俊之はリビングを出て自室へと向かった。


少しの間をおいて、今度は俊之の母がリビングに来る。


俊之の母「あなた達、頑張ってね」


由佳「はい」


木綿子「はい」


絵美「お母さんは、どうするんですか?」


俊之の母「私はこれからお風呂に入って、それから少し本でも読んで休ませて貰うわ」


由佳「私達がお邪魔しちゃって、すみません」


俊之の母「いいのよ。子供が勉強をしてくれるのは、親にとって嬉しい事だからね」


俊之の母はそう言うと、リビングから出て風呂場へ行った。


木綿子「そういうものなのかな~」


絵美「私の成績が良くなったら、お母さん、本当に喜んでいたよ」


由佳「じゃあ、私達も頑張らないとね」


そして俊之がリビングに戻ってきた。


俊之「そんじゃ、勉強を始めるか」


そう言いながら、俊之が由佳の対面に座る。


そして4人で勉強を始めた。


時々、由佳や木綿子が俊之に質問し、俊之はそれを丁寧に教える。


暫くすると、絵美がおしゃべりを始めた。


由佳と木綿子は、そんな絵美を適当に相手をしながらも勉強をする。


それでも構わずに、絵美は一人でしゃべっていた。


俊之はそんな絵美を見ると可笑しかったが、何事もなかったかの様に勉強をする。


そして今日は由佳と木綿子が一緒だったので、少し早めに勉強を終えた。


俊之「そんじゃ、送っていくよ」


由佳「そんな事はしなくていいよ~」


俊之「お前等も一応は女の子だからな」


木綿子「一応って、何よ」


俊之「それにお前等、一人で帰ったら、何を言われるか分かんねーぞ」


木綿子「何、それ!?」


俊之「ちゃんと勉強をしていたのかって」


由佳「それは確かに言われそう」


俊之「そんじゃ、行こっか」


そして4人は俊之の家を出て、自転車で先ず、木綿子の家に行く。


木綿子の家は団地の2階だった。


俊之が木綿子について、家の前まで木綿子を送る。


絵美と由佳は木綿子の家の下で、そのまま待つ。


俊之が木綿子の家のチャイムを鳴らす。


木綿子「そんな事はしなくていいって」


俊之「あはは」


木綿子の家のドアが開いて、木綿子の母が顔を出す。


俊之「お嬢さんをお届けに参りました」


木綿子の母「あら、山ノ井君。ご苦労様」


木綿子「ただいま」


俊之「それじゃ、失礼します」


木綿子「山ノ井君、ありがとう」


木綿子の母「気を付けて帰るのよ」


そして木綿子と木綿子の母は家の中に入った。


俊之が戻ると、3人は次に由佳の家へ向かう。


由佳の家につくと、また俊之が由佳についていく。


そして、また俊之が由佳の家のチャイムを鳴らす。


由佳「何をしてんのよ」


俊之「あはは」


少しの間をおいて、由佳の母が玄関のドアを開けて顔を出す。


俊之「お嬢さんをお届けに参りました」


由佳の母「山ノ井君だったのね」


由佳「ただいま」


由佳の母「あんた、本当に勉強をしていたんでしょうね!?」


俊之「あはは」


由佳「お母さん、本当だってば~」


俊之「おばさん、本当ですよ」


由佳の母「なんか、信じられないけど、山ノ井君にそう言われるとね」


俊之「それじゃ、俺、絵美を送らなきゃならないから失礼します」


由佳「山ノ井君、ありがとう」


由佳の母「ご苦労様」


由佳と由佳の母は家の中に入る。


俊之と絵美は2人で自転車に乗り、絵美の家へと向かった。


俊之「佐藤さとうの奴、本当にお母さんに信じて貰えてなかったよ」


絵美「あはは。そうなんだ」


俊之「それよりも絵美って本当に勉強が嫌いなんだな」


絵美「えー、そんな事はないよー」


俊之「だって、佐藤と長谷川はせがわと一緒に勉強をすると、絵美、しゃべってばかりじゃん」


絵美「そう!?」


俊之「本当に一人でしゃべっているよ」


絵美「えー、そんな事はないって」


俊之「まあ、そんな絵美も俺からしたら、可愛らしくてたまんないんだけどね」


絵美「俊君ったら~」


俊之「あはは」


絵美「ねぇ、俊君」


俊之「何?」


絵美「俊君は私のお尻が好きなの?」


俊之「ははは。何だ!?急に?」


絵美「いいから、どうなの?」


俊之「う~ん。好きというか、大好き」


絵美「やっぱり、そうなんだ」


俊之「やっぱり!?」


絵美「だって、俊君、ちょくちょく私のお尻を触るじゃん」


俊之「仕方がないだろ。見ず知らずの女の子のお尻を触る訳にはいかないじゃん」


絵美「えーーー。他の女の子のお尻も触りたいの?」


俊之「そうじゃないよ。絵美のお尻が触れれば、それで満足」


絵美「俊君ったら~」


俊之「嫌?」


絵美「ん~ん。それに他の女の子のお尻を俊君に触らせる訳にはいかないじゃん」


俊之「あはは。絵美も言うようになったじゃん」


絵美「だって私、俊君の事が大好きだし」


俊之「俺も絵美が大好きだよ」


絵美「でね。今日さ~」


俊之「何?」


絵美「俊君のお母さんから聞いちゃったんだ~」


俊之「何を?」


絵美「俊君のお父さんの事」


俊之「そうなんだ。どんな事を聞いたの?」


絵美「俊君のお父さんって、どんな人だったのかって」


俊之「で、お袋は何て言っていたの?」


絵美「俊君のお父さんも助平だったんだって」


俊之「何だよ、それ」


絵美「俊君のお父さんも、お母さんのお尻をよく触っていたんだって」


俊之「マジかよ!?」


絵美「本当みたい。だから、俊君と同じだって、みんなで笑ったんだ」


俊之「え!?じゃあ、それって佐藤と長谷川も聞いたの?」


絵美「そうだよ。それで4人で大笑いしたんだもん」


俊之「アチャー」


絵美「どうしたの?」


俊之「佐藤と長谷川に、それを知られると、俺、変態扱いをされそうじゃん」


絵美「あはは。もう遅いよ」


俊之「そうだよな。でも、親父もそうだったんだ~」


絵美「俊君は聞いた事がないの?」


俊之「うん。俺は親父の事は聞かない様にしているからさ」


絵美「何で?」


俊之「だって、今更じゃん」


絵美「そっか」


俊之「俺が親父の事を知ったところで、どうにもなるもんじゃないし」


絵美「でも、本当に可笑しかったんだ」


俊之「そうだろうな」


絵美「そんなところまで似なくてもいいのにって」


俊之「あははは。本当にそうかも。でも、他にも似ているところはあったの?」


絵美「うん。話を聞くと俊君って、お父さんにそっくりだって、私は思った」


俊之「そうなんだ」


絵美「俊君の優しいところもお父さんに似たんだなって」


俊之「へぇ~。親父って優しかったんだ。で、俺も優しいの!?」


絵美「うん。私からしたら、とても優しく思えるよ」


俊之「そっか~。それって喜んでいいんだよね!?」


絵美「いいんじゃないかな。私、俊君の優しいところ、好きだし」


俊之「だったら、俺、優しくて良かった」


絵美「あはは。自分で言うと、おかしいよ」


俊之「あはは。そうだよな」


そして二人は絵美の家へと着いた。


いつもなら、俊之は此処で帰るのだが、今日は絵美についていく。


そして俊之が絵美の家のチャイムを鳴らす。


絵美「チャイムなんて鳴らさなくて良かったのに」


俊之「あはは」


玄関の戸が開いて、絵美の母が出てきた。


絵美の母「あら。俊君だったのね」


俊之「お嬢さんをお届けに参りました」


絵美「ただいま」


絵美の母「俊君ったら、悪ふざけをしちゃって」


俊之「すみません」


絵美の母「少し、上がって行く?」


俊之「いえ、今日はもう遅いので帰ります」


絵美の母「そうね。気を付けて帰るのよ」


俊之「はい。それじゃ、また明日」


絵美「バイバイ」


そして俊之は一人で自宅へと帰っていく。


一人になると、寒さがより身に染みてくる。


もう冬が、そこまで来ている事を感じずにはいられない様な夜だった。

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