エピソード27/恋人から友達へ
今日も
そして俊之が隆行の部屋へ入る。
俊之「うぃ~っす」
隆行「俊君。俺、ふられちゃいました」
俊之「何だ、何だ」
そう言いながら、俊之が隆行の対面に座る。
俊之「いきなりの急展開だな」
隆行「
俊之「そっか」
隆行「それって、やっぱり、ふられたんですよね!?」
俊之「今更、慰めを言っても仕方がないから、そういう事なんじゃないかな」
隆行「はぁ~」
俊之「ははは。何、溜息をついているんだよ」
隆行「だって~」
俊之「だって、じゃねーよ」
隆行「やっぱり、辛いですよ」
俊之「そうだろうな」
隆行「友達って何なんですか!?」
俊之「ははは。まあ、いいじゃねーか」
隆行「全然、良くなんてないですよ」
俊之「隆行がそんなんじゃ、どうにもなんないって」
隆行「どういう事ですか!?」
俊之「だから、隆行がそんなんだから、ふられたんじゃないのかって」
隆行「そりゃ、そうかもしれませんけど」
俊之「だったら、先ず、お前がしっかりしなきゃ」
隆行「そんな事を言われても、今更ですよ」
俊之「アホ。何が今更だよ」
隆行「もう、ふられちゃったんですよ!?」
俊之「お前がそれでいいって言うのなら、俺はもう何も言わないよ」
隆行「え!?」
俊之「それで、きっぱり諦められるんだったら、他の女の子を好きになればいいだけじゃん」
隆行「そんなに簡単に諦められるんだったら、俺だって、こんなに、」
俊之「だったら、しっかりしろよ」
隆行「そんな事を言われても、」
俊之「じゃあ、今、お前が諦められないからって、彼女はそれを受け止めてくれるわけ!?」
隆行は何も言い返せなかった。
俊之「だったら、先ず、お前が変わらなきゃ」
隆行「変わるんですか!?」
俊之「月曜日に話をしたじゃん。目標を決めてみたら、どうかって」
隆行「うん」
俊之「その目標をクリアして、それから、もう一度、お前の気持ちを伝えてみたら、どうかな!?」
隆行「う~ん」
俊之「確かに、今、彼女の気持ちは隆行から離れてしまったのかもしれない」
隆行「うん」
俊之「でも、少しはまだ、隆行に期待をしている部分があるんじゃないかな」
隆行「そうなんですか!?」
俊之「そうじゃなかったら、友達に戻ろうなんて事は言わないんじゃないの!?」
隆行「そうなのかな~」
俊之「勿論、単なる社交辞令みたいなもんなのかもしれない」
隆行「社交辞令ですか」
俊之「それなら、それでも、いいじゃねーか」
隆行「はぁ~」
俊之「先ず、お前が変わってみせろよ」
隆行「う~ん」
俊之「そうすれば、彼女だって隆行の事をもう一度、好きになってみようかなって思うのかもしれないじゃん」
隆行「そうですかね~」
俊之「それでも駄目だったら、その時に諦めれば、いい話じゃん」
隆行「それは、そうですね」
俊之「それにさ」
隆行「何ですか?」
俊之「そういう意味では逆にこれで、かえって良かったのかもしれないよ」
隆行「どういう事ですか?」
俊之「一応は友達になったんだろ!?」
隆行「そうですね」
俊之「だから、恋人という関係よりは距離が開いちゃった訳じゃん」
隆行「うん」
俊之「そうしたら、隆行は必要以上に彼女の事を意識する事は出来なくなるんじゃないかな」
隆行「それは、そうかもしれませんね」
俊之「彼女も辛かったと思うんだ」
隆行「何がですか?」
俊之「隆行を見ていてさ」
隆行「やっぱり、俺が悪いんですかね」
俊之「だから、いてもたってもいられなくなって、距離をとろうとしたのかもしれないし」
隆行「うん」
俊之「まだ気まずい感じなんだろ!?」
隆行「そうですね」
俊之「だったら彼女も、ひょっとしたらだけど、関係修復の為にわざと、そうしたって可能性もあるのかもしれないし」
隆行「そうなのかな~」
俊之「ははは。そう深く考え込む事はないって。あくまでも推測なんだから」
隆行「はい」
俊之「とにかく、距離をとる事で気まずさを取り除けるかもしれないし、隆行からしたら、余計な雑念が減るって事じゃん」
隆行「なるほど」
俊之「だから、目標をクリアする為って考えれば、かえって良かったのかもしれないじゃん」
隆行「そうかもしれませんね」
俊之「だったら、先ず自分が出来る事をするべきだろ!?」
隆行「そうですね」
俊之「先ず目標を決めて、それをクリアする」
隆行「うん」
俊之「それから、もう一度、彼女にアタックをする」
隆行「うん」
俊之「それで、いいんじゃないのかな」
隆行「分かりました」
俊之「それで彼女が隆行の変化を感じ取る事が出来れば、きっと元に戻れると俺は思うよ」
隆行「だったら、いいんですけどね」
俊之「だったら、とか言っているんじゃねーよ」
隆行「ははは」
俊之「そんな事を言う前に変ってみせろっての」
隆行「分かりました」
俊之「じゃあ、今日はちょっとリキを入れて勉強をすっか」
隆行「ちょっと待って下さい」
俊之「どうした!?」
隆行「目標の事なんですけど」
俊之「うん」
隆行「香織とは友達になっちゃったから、香織との間で目標が立てられなくなっちゃったじゃないですか」
俊之「そうだな」
隆行「だったら、俺も俊君みたいに勉強で目標を立ててみようかなって」
俊之「いいんじゃねーの」
隆行「俊君みたいに1番って訳にはいかないけど」
俊之「じゃあ、何番にすんの?」
隆行「ベスト10ってところで、どうですかね!?」
俊之「そうだな~。まあ、やってみろよ」
隆行「はい」
俊之「じゃあ、これからは、ちょっと気合を入れて勉強をしなきゃな」
隆行「そうですね」
俊之「俺、偉そうな事を言っているけど、1番の目標、まだ達成は出来ていないし」
隆行「ははは」
俊之「今度のテストでは絶対に1番を獲ってやる」
隆行「俺も絶対にベスト10に入ってやる」
俊之「そんで、もう一回、ちゃんと
隆行「そうなんですか!?」
俊之「俺は目標を達成する前に告白をしなきゃならない状況になっちゃったから、仕方なく告白をしたら、たまたま上手くいっちゃったってだけだからさ」
隆行「上手くいったんだったら、いいじゃないですか」
俊之「そうなんだけどね。でも、俺の中じゃ、やんなきゃなんねーんだ」
隆行「そうなんだ」
俊之「そういう風に思っていたから、上手くいったんだとも思うし、だったら、それだけは、ちゃんとやり遂げなきゃってさ」
隆行「だったら、俺も何としてでもやり遂げて、香織にもう一度、告白をしてやる」
俊之「その意気だよ」
隆行「はい」
俊之「じゃあ、始めるか」
隆行「はい」
俊之「その前に絵美の様子を見て来よう」
隆行「俊君~」
俊之「ははは。お前は先に始めていろよ」
隆行「はい」
そして俊之は隆行の部屋を出て、絵美の部屋へ行った。
隆行は一人で勉強を始める。
数分もすると、俊之も隆行の部屋に戻って来て、勉強を始めた。
時々、隆行が俊之に質問をして、俊之が隆行に丁寧な説明をする。
そんなこんなで今日の夜も更けていく。
外では朝からの長雨が、まだ降り続いていた。
その雨音が二人の若き男達を励ましている。
そんな夜であった。
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