エピソード22/由佳と絵美

絵美えみ由佳ゆかの家に到着をする。


庭先に自転車を止めて、玄関のチャイムを鳴らした。


由佳が玄関のドアを開けて顔を出す。


由佳「いらっしゃい」


絵美が玄関から家の中に入る。


絵美「お邪魔します」


由佳に促されて、絵美が家に上がった。


廊下を歩いて由佳の部屋へ行く途中、リビングの横を通る。


絵美「こんにちは」


由佳の母「いらっしゃい」


リビングに居た由佳の母が応える。


一緒に居た由佳の父は何も言わなかった。


いつもの事である。


二人は二階へ上がり、由佳の部屋に入った。


由佳はベッドの縁に座って、絵美は床にあったクッションに腰を下ろす。


由佳「ごめんね。呼び出しちゃったりして」


絵美「いいよ。由佳んチ、クーラーがあるから、涼めるじゃん」


由佳「そうなのよね~。だから、夏場は余り、絵美んチは行きたくないんだよね」


絵美「あはは。木綿子ゆうこはどうしているの?」


由佳「木綿子、風邪で寝込んでいるんだって」


絵美「そうなんだ」


由佳「だから、絵美を呼んだんだ。木綿子が居ても呼ぶつもりだったけど」


絵美「木綿子は大丈夫なの?」


由佳「大丈夫でしょ。ただの風邪なんだから」


絵美「そっか。由佳はもう、お昼ご飯は食べたの?」


由佳「食べてないよ」


絵美「食べなくていいの?」


由佳「今、ダイエット中だって言ったじゃん」


絵美「そうだったね」


由佳「絵美は食べてきたんでしょ!?」


絵美「私は朝ご飯が遅かったから、昼は、いいやって思って」


由佳「どうりで来るのが早いと思った」


絵美「うん。電話を貰って、すぐに来たからさ」


由佳「それにしても、遅い朝ご飯って。この、この~」


絵美「えへへ」


由佳「で、どうだったの?」


絵美「どうだったって言われてもね~」


絵美は少し照れ臭そうだった。


由佳「実を言うと、私まだ、ラブホテルに行った事がないんだ」


絵美「そうなんだ」


由佳「健二けんじと何度か、Hをした事はあるんだけど、全部、健二の部屋だったからさ」


絵美「私もこの間までは、そうだったんだよ」


由佳「そりゃあ、ねぇ」


絵美「それでとし君のお母さんに、家でHをしちゃ駄目って言われちゃってさ」


由佳「あはは。本当に!?」


絵美「それでホテルに行く事になったんだけどね~」


由佳「ホテルデビューは絵美に先を越されちゃったな~」


絵美「えへへ。でも、正直、余り覚えていないんだ」


由佳「そうなの!?」


絵美「うん。ただ、広かったな~って印象が強くて」


由佳「ふ~ん」


絵美「部屋も広くて、ベッドも広くて。お風呂も広かったな~」


由佳「そうなんだ」


絵美「それで最初は私も俊君も緊張をしちゃってさ」


由佳「緊張!?」


絵美「うん。私はなんか、照れ臭い感じだったけど、俊君は落ち着かない感じだって言っていたよ」


由佳「へぇ~」


絵美「でも、一回しちゃったら、そういうのは無くなったんだけどね」


由佳「なるほどね。それで何回したのよ?」


絵美「分かんない」


由佳「何それ!?」


絵美「分かんなくなるくらいに沢山しちゃったんだ。だから、余り覚えていなくて」


申し訳なさそうにしながら、絵美が言った。


由佳「あはは。まさか、絵美から、そんな台詞を聞くとは思わなかったな~」


絵美「自分でもさ、」


由佳「うん」


絵美「自分がこんなにエッチだったなんてって、ちょっと不思議な感じがするんだ」


由佳「そっか。でも、これでHの経験も絵美に追い越されちゃったのかな」


絵美「えへへ」


由佳「本当はそういう事、認めたくないと言うか、納得が出来ない部分もあるんだけどさ」


絵美「なんでよ~!?」


由佳「絵美と山ノ井やまのい君を見ていると、仕方がないのかなって思っちゃうんだよね」


絵美「そうなの!?」


由佳「なんか、強引に納得させられちゃう感じ」


絵美「ふーん」


由佳「あんた達、その内、結婚をするんでしょ!?」


絵美「まだ、そんなの分かんないよ~」


由佳「だって、プロポーズをされたって言っていたじゃん」


絵美「それは、そうだけど、まだ、仮みたいなもんだしさ~」


由佳「でも、傍から見ていても、絵美と山ノ井君って、その内、結婚をするんだろうなって思えるもん」


絵美「そうなんだ」


由佳「ちょっと妬けちゃうな」


絵美「由佳」


由佳「気にしないで。もう引きずっている訳じゃないから」


絵美「うん」


由佳「一人の女として、そういうの羨ましいなって。それだけの事だから」


絵美「そっか」


由佳「それより、あんた、山ノ井君とどんなHをしているのよ?」


絵美「えーーー!?由佳、変な事を訊かないでよ」


絵美が照れた。


由佳「何を今更、恥ずかしがっているのよ」


絵美「だって」


由佳「だって、じゃないわよ」


絵美「うーん。普通だと思うよ。普通」


由佳「ふーん。山ノ井君、上手なの?」


絵美「そんなの分かんないよー」


由佳「あはは」


絵美「笑わないでよ~」


由佳「ごめん、ごめん。それで正直に言って、絵美は気持ちがいいの?」


絵美「うん。なんか、する度に気持ちが良くなっていく感じ」


由佳「そうなんだ。じゃあ、きっと山ノ井君、上手なのよ」


絵美「そうなの!?」


由佳「余り、こんな事を言っちゃいけないのかもしれないけど、健二はさ、そんなに上手ではなかったと思うんだ」


絵美「そうなんだ」


由佳「私が健二の事を本当の意味で好きになれなかったのは、そういうところもあると思うんだ」


絵美「そっか」


由佳「勿論、上手い下手だけじゃなくてさ、相性みたいなものもあるのでしょうけど」


絵美「それだったら、解る様な気がする」


由佳「あんた達、傍から見ていても相性は抜群だもんね」


絵美「ねぇ、由佳」


由佳「何?」


絵美「川崎かわさき君とHをする時、ちゃんと避妊をしていた?」


由佳「当たり前じゃん。何!?山ノ井君、避妊をしてくれないの?」


絵美「そういう訳じゃないんだけど」


由佳「健二はちゃんと、避妊はしてくれていたな~」


絵美「俊君もしてくれるよ」


由佳「ん!?じゃあ、何で、そんな事を訊いてきたの?」


絵美「だから、由佳は避妊をしないでHをした事があるのかなって」


由佳「ああ、そういう事ね。だったら、私はないよ」


絵美「そっか」


由佳「絵美、山ノ井君に何か言われたの?」


絵美「ん~ん。俊君は何も言っていないんだけど」


由佳「けど!?」


絵美「実は私、昨日、安全日だったんだ」


由佳「ひょっとして!?」


絵美「うん。私の方から避妊をしないでしてみないって」


絵美は少し照れ臭そうだった。


由佳「あはは。へぇ~、絵美の方からねぇ」


絵美「それって、やっぱり、おかしいのかな!?」


由佳「ちょっと、それは私には分からないな」


絵美「そっか」


由佳「私は健二に対して、そう思った事はないし」


絵美「うん」


由佳「だから、逆に私の方が絵美に訊いてみたいんだけど」


絵美「何を?」


由佳「何で、そう思ったのかって事」


絵美「何でなんだろうな~。ただ、私、俊君と一緒に居るだけで、すごく幸せな感じで、」


由佳「うん」


絵美「Hをしていると、すごく気持ちがいいし、もっと、すごく幸せな感じになって」


由佳「そっか」


絵美「幸せに思えば思う程に、もっと幸せになりたいっていうか」


由佳「ふ~ん」


絵美「よくは分かんないんだけどね~」


由佳「そういうもんなのかもしれないね」


絵美「そういうもん!?」


由佳「うん。本当に相手の事を好きになっちゃうと、そういう風になっちゃうんじゃないかって」


絵美「そっか」


由佳「私は健二の事を、そこまで好きになれなかったから、そう思った事はないんだけどね」


絵美「そう言われると、そうなのかなって思っちゃうな」


由佳「だから、それで避妊をしないでHをしちゃってさ」


絵美「うん」


由佳「高校生で妊娠をしちゃったりする子もいるんじゃないのかな」


絵美「そうかもしれないね」


由佳「それより、あんた達はそれで、どうしたの?」


絵美「俊君に駄目だって言われちゃった」


由佳「そうなんだ。やっぱり、山ノ井君、変わっているわね」


絵美「そうかな!?」


由佳「だって、普通の男の子だったら、女の子から、そんな風に言われたら、大喜びして飛び掛かって来そうじゃん」


絵美「あはは」


由佳「でも、山ノ井君のそういう所って、同い年の他の男の子と比べて魅力的ではあるよね」


絵美「うん。ウチのお父さんとお母さんも俊君の事、とても高校生とは思えないって言っていたよ」


由佳「あはは。まあ、その分、可愛いげはないけどね」


絵美「そんな事はないよ。俊君、結構、可愛い所もあるんだよ」 


由佳「そうなんだ。とにかく、あんた達は本当に羨ましいって思うよ」


絵美「えへへ」


由佳「親、公認なんだもんね~」


絵美「うん」


由佳「ウチじゃ、絶対にそんな事は有り得ないもん」


絵美「でも、それは由佳の事が大切だから」


由佳「それは、解っているんだけどさ」


絵美「ウチのお母さんが言っていたよ」


由佳「何を?」


絵美「男親にとって、女の子供って特別なんだって」


由佳「特別だからって私からしたら、そんな理由で、あれこれ束縛をされたら、たまったもんじゃないわ」


絵美「そうかもしれないけどさ~」


由佳「あんたのお父さんは山ノ井君の事を許してくれたんでしょ!?」


絵美「うん。結果的にはね」


由佳「結果的!?」


絵美「だから、最初にお父さんと俊君が会った時、」


由佳「うん」


絵美「私、傍から見ていて、ヒヤヒヤする様な場面はあったんだよ」


由佳「そうだったんだ」


絵美「でも、俊君がちゃんと私のお父さんと話をしてくれて」


由佳「うん」


絵美「それで結局、お父さんも俊君の事を許してくれたんだけど」


由佳「うん」


絵美「お父さんは俊君だから、許してくれたみたいな感じなんだ」


由佳「ん!?どういう事?」


絵美「だから、もし私が俊君以外の男の子を紹介していたら、反対をされていたと思うんだ」


由佳「そっか~」


絵美「そういう意味でも私、俊君の事を好きになって、本当に良かったなって思えたりもするんだ」


由佳「何!?結局、惚気話になっちゃうの!?」


絵美「ははは。ごめんなさい。別に惚気るつもりじゃなかったんだけど」


由佳「ふ~ん。どうだかねぇ」


絵美「本当だってば~」


由佳「解っているって」


絵美「それで、その時にお父さんが私の事を特別に思ってくれているって、すごく伝わってきてさ」


由佳「そうなんだ」


絵美「本当に由佳には信じて貰えないのかもしれないけど」


由佳「うん」


絵美「ウチのお父さんも由佳のお父さんと同じなんだなって」


由佳「えーーー、全然、違うじゃん」


絵美「だから、信じられないのかもしれないけどさ~」


由佳「うん」


絵美「お父さん達が私達の事を特別に思ってくれているって事は、同じなんじゃないかなって」


由佳「ふ~ん」


絵美「それで俊君は、そんなお父さんと同じくらいに、私の事を大切に思ってくれているんだなって」


由佳「また、惚気!?」


絵美「最後まで聞いてよ」


由佳「ごめん、ごめん」


絵美「だから、お父さんもそれを感じる事が出来たから、俊君の事を許してくれたんじゃないのかなって」


由佳「そっか~」


絵美「由佳も由佳の事を、それくらい大切に思ってくれる彼を見つければ、お父さんもきっと、許してくれるんじゃないのかなって、私は思うよ」


由佳「そうなのかな~」


絵美「そうだよ~」


由佳「ウチのお父さんを見ていると、とても、そんな風には思えないけどね~」


絵美「ふふふ」


由佳「それにさ」


絵美「うん」


由佳「例え、そうであってもさ」


絵美「うん」


由佳「そういう彼を見つけるのって、そんなに簡単じゃないんじゃない!?」


絵美「それは、そうかもしれないけどさ」


由佳「なんか、憂鬱になってくるな~」


絵美「大丈夫だよ。由佳、モテるじゃん」


由佳「そんなに、モテてないって」


絵美「それに由佳、スタイルが抜群だし」


由佳「そりゃあ、スタイルには自信があるけどさ」


絵美「でしょ」


由佳「だって、スタイルを保つ為に苦労して、ダイエットをしているんだからねぇ」


絵美「本当に私からしたら羨ましいよ」


由佳「スタイルで絵美に負けたりなんかしたら、恥だわ」


絵美「酷~い!そこまで言う事はないんじゃない!?」


由佳「何を言っているのよ。散々、私に惚気ておいて」


絵美「えへへ」


由佳「でも、スタイルがいいってのも考えものよね」


絵美「何で?」


由佳「スタイルに釣られて寄って来る男にロクな男は居やしない」


絵美「あはは。じゃあ、私とスタイルを取っ替えっこしようよ」


由佳「それだけは死んでも嫌だわ」


絵美「本当に由佳って酷い事を言うね」


由佳「あんたに同情なんかはしてらんないわ」


絵美「私、せめて、もう少し、おっぱいが大っきくなれたらな~」


由佳「それだけは、少しだけ同情をしてあげる」


絵美「由佳ったら、もう~」


由佳「いいじゃない。あんたには山ノ井君が居るんだから」


絵美「そうなんだけどさ~」


由佳「山ノ井君もおっぱいは大きい方が好きなの?」


絵美「分かんない。私、俊君にそれ、訊いた事がないんだ」


由佳「そうなんだ」


絵美「今度、訊いてみよ」


由佳と絵美の話は尽きる事が無く、夕方まで二人で話をし続けた。


外では、山の方から蜩の鳴き声が届いてくる。


昼間はまだ、夏が終わっていない事を主張する様な暑さだったが、さすがに夕方になると、もうすぐ夏が終わる事を実感する事も出来た。

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