第58話 戀文にて侯

万吉 「ごめん下さい」

 

 何でも屋の万吉と仙吉が、お駒の家にやって来た。


お照 「はい、あら、何でも屋の」

万吉 「まあ、お照ちゃん、嫁に行くんだって。ああ、さみしくなるなぁ」

仙吉 「何ですか、兄貴。お祝いも言わないで」

万吉 「そんなに気になれないねぇ」

仙吉 「駄目すねぇ。あの、お照ちゃん、この度はおめでとうございます」

お照 「ありがとうございます」

仙吉 「すいませんねぇ、うちの兄貴、この通り、どうしようもないもんで」

万吉 「なに、調子こいてんだよ。仙吉だって、がっかりしてたじゃないか」

仙吉 「それはそれ、これはこれとして。ところで、姉さんは」

万吉 「あのさ、それ先に言う」

仙吉 「いや、早いもの勝ちってことで」

万吉 「大体、お前が付いて来ることなかったんだよ。こんな用事俺一人で充分す

   ぎるくらいなんだからさ。すまないねぇ、余計な者がくっついて来て。とこ

   ろで、姉さん、まだお休みですか」

仙吉 「ふぁっ、どっちが調子こいてんだか」

万吉 「うるせっ」

お照 「姉さんはお散歩ですよ。もうそろそろお戻りになりますから、どうぞ、お

   上がりになって下さい。今、お茶入れますから」

万吉 「お邪魔します」

 

 万吉と仙吉は上がらせてもらう。


お照 「でも、二人揃って、どんなご用ですか」

万吉 「だからさ、こいつ、仙公が余計なんで」

仙吉 「まあ、そんなぁ」

万吉 「どっかで聞いたことあるな、それ」

仙吉 「ちょいと使い古された言葉ですけどね」

万吉 「だから、お前が余計なの」

仙吉 「大体、これは俺の仕事ですよ。何しろこの通りの使いっぱしりですから

   ね。それを兄貴が横取りしたんじゃないすか」

万吉 「人聞きの悪いこと言うねぃ」

お照 「お茶をどうぞ」

万吉 「すいませんねぇ、余計者にまで気を使わせて」

仙吉 「一々、余計者って言わなくてもいいっしょ。この横取り野郎」

お照 「何かあったんですか」

 

 お照も気になるようだ。


万吉 「ちょいとね。姉さん早く帰って来ないかな。これはおいしいお茶」

仙吉 「ほんとだ」

万吉 「お照ちゃん、いいおかみさんになれますよ」

 

 どうして男は茶くらいでこんな事を言うのだろう。

 その時、お駒が帰って来た。


仙吉 「姉さん」

万吉 「お邪魔してます」

 

 お駒にしても、まさかこの二人が待っているとは思わなかった。


お駒 「おや、お照ちゃん、勝手に引っ越し決めちゃいけないよ。あんたはここか

   ら出て行くけど、私はさ、まだ当分ここにいるつもりだよ」

万吉 「姉さん、引っ越しじゃありませんよ」

お駒 「引っ越しでないなら、若い男が二人雁首揃えて、何かしら」

万吉 「それが、ちょっと…な話です」

お駒 「へーぇ、で、どんな話」

仙吉 「あの真之介旦那が」

万吉 「お前は付け足しだから黙ってな。実は真之介旦那が、姉さんにお会いした

   いそうです」

仙吉 「それで、ご都合をお伺いしてくれって」

お駒 「まあ、それを言いにわざわざ、二人して」

万吉 「ですから、俺が一人でいいっていうのに、こいつが付いて来たんですよ」

仙吉 「いいえ、兄貴が俺の仕事を横取りしたんですよ」

 

 お照はおかしくてたまらない。この二人は先程から、同じことばかり繰り返している。


お駒 「それはどっちでもいいけど、真之介旦那が何の用かしら」

万吉 「さあ、それは俺たちにもわかりません」

仙吉 「ええ、何か、大事なお話みたいで」

お駒 「そんなに大事な話なら、結び文でも付けてほしかった…」

万吉 「それは…」

仙吉 「あのぅ…」

万吉 「ですから、それは直接おっしゃりたいのでは。姉さんの顔を見ながら…」

仙吉 「あのぅ…」

万吉 「何だ、お前。さっきからあのばっかりでよ」

仙吉 「実は…」

万吉 「だから、何なんだよ」

仙吉 「これ…」

 

 と、懐から、結び文を取りだす仙吉だった。


万吉 「ええっ、こんなの、いつの間に…」

お駒 「あら、まあ、そうだったの。じゃ、早く」

 

 それでも、ためらいながら、おずおずと結び文を手渡す仙吉だったが、万吉にはさっぱりわからない。いつの間に、真之介はこんな結び文を。それも万吉、いや、お澄にならともかく仙吉に託すとは…。

 お駒の指が結び目を解いて行く。


お駒 「仙ちゃん」 

 

 それは冷ややかなお駒の声だった。

 お駒の手から滑り落ちた結び文を万吉が素早く拾う。


万吉 「な、何だ!この野郎!お前、よくも姉さんにこんなものを。この下手な字ぃ

   お前の字じゃねぇか!それにこんな事書きやがって!おい!姉さん馬鹿にしてん

   のか!」

仙吉 「ち、違い、違いますよ!馬鹿にしてるだなんて、それはその、ちょいと…」

万吉 「何がちょいとだ。ふざけやがって。すいませんね、姉さん。こいつがここ

   まで馬鹿だとは思いませんでしたよ。こらっ!お前も早く謝れ」

仙吉 「いえ、これには深い訳がありまして」

万吉 「お前に深い訳なんぞあるか、この大馬鹿野郎のこんこんちき!」

お駒 「その深い訳を言ってごらんよ」

仙吉 「それが、その…。はいっ!では、姉さん。そう言う結び文、どうでしょう

   か」

お駒 「どうもこうもと言うものじゃないよ、これは」

仙吉 「やっぱり、駄目ですかね、これでは」

お駒 「駄目」

万吉 「そら見ろ!姉さん、怒ってなさるじゃねぇか。早く謝れ、このとんちき!」

お駒 「別に怒ってやしないよ。感心と呆れが半分てとこ。だからさ仙ちゃん、こ

   のふみ、本当は誰に渡すつもりだったの」

仙吉 「それは…。ちょいと、気になる子がいまして…」


 万吉が驚いている。


仙吉 「そんで、付け文でもしようかなって思ったんですけど、いざ、書き始めた

   ものの、もう、何をどのように書いていいのやら、さっぱり筆が進まなく

   て…。そん時にひらめいたのが、これでして。それで、ここは姉さんに見て

   いただいて、感想なんか聞いてみたいなと思いまして。すいません!それを旦

   那からのように思わせてしまいまして、申し訳ありんせん!」

万吉 「お前、いつの間に…。それ、どこの誰だい。この野郎、さっさと白状し

   ねぇか、おい!」

仙吉 「く、苦しい、し、死ぬぅ」

 

 万吉が仙吉の襟首をつかめば、仙吉は大仰に手をばたつかせ、万吉がその手をさっと離すとのけ反りそうになる。


仙吉 「もう、急に離したりするんだから、やれやれ」

万吉 「何が、やれやれだ。こっちが、姉さんの方がやれやれじゃねぇか。だか

   ら、どこの誰なんだ」

仙吉 「それは…」

万吉 「あっ、ひょっとして、隣のお鹿さんかい」

仙吉 「誰が、あんな、婆ぁ」

万吉 「お前、姉さんみたいな年上の女もいいなって言ってたじゃないか」

仙吉 「そりゃ、姉さんはいいけど、幾らなんでも隣のお鹿婆さんじゃ」

万吉 「あっ、そっ。じゃ、お鹿さんに言ってやるわ。仙公の奴、お鹿さんのこ

   と、あちこちで強欲婆ぁ婆ぁって言いふらしてるって」

仙吉 「そんなこと言ってないしょ!」

万吉 「るせっ、とっとと白状しやがれ」

仙吉 「それが、そのぅ」

お駒 「いいじゃないの、仙ちゃん今は言いたくないようだから。そのうちわかる

   さ」

仙吉 「そ、そうなんです。で、やっぱし、それ、駄目ですか」

お駒 「駄目」

仙吉 「どうしても?」

 

 仙吉には何が駄目なのか良くわからない。


お照 「ああっ!わかった!」


 声を上げたのはお照だった。お照も最初はどうしてお駒がこれが駄目と言うのかよくわからなかった。そこで、文面をよくよく眺めてみればとんでもない間違いに気が付く。


お照 「仙ちゃん、やっぱり、これ、駄目よ」

仙吉 「やっぱり、女の人って、こう言うのもらってうれしくないんですかね」

万吉 「そうだよ。これじゃ、あっさりしすぎ」

 

 万吉が紙をひらひらさせながら言う。

 その紙には『戀文にて侯』とだけ書かれていた。


万吉 「戀文にて。こんなの駄目に決まってんだろ!戀文ってのはな、もっと夢のある

   優しい言葉を書くもんだよ」

お駒 「そうじゃないよ」

 

 お駒が笑いながら言う。お照も笑っている。


お駒 「まだ、気が付かない?この発想はすごくいいの、こんなの貰ったら私だっ

   て嬉しいよ」

お照 「右に同じく!」

仙吉 「それなら、どうして…」

お駒 「惜しいと言うか。字が間違ってんの」

仙吉 「えっ!そんな!えーと、戀と言う字は糸し糸しと言う心でしょ。で、そうろ

   うは人偏で、造りはこれでっと、これ違ってますかね」

お駒 「そうろうはさ、人偏は合ってるけど、造りとの間に一本棒が入るの。仙

   ちゃんが書いた字は、候ではなくて侯。縦棒が一本抜けてんの」

 

 仙吉は言葉が出ない…。


万吉 「そら見ろ!やっぱりな。前々からどこか抜けてると思ってたら、やっぱり抜

   けてたな。こりゃ、よかったね。はは、はははははっ」

お照 「そう言う万吉さんも、侯の間違いには気がつかなくて候」

 

 お照に指摘され、万吉も思わずぎくっとする。


仙吉 「そうだ、兄貴もじゃないすか。もう、人のこと言えねぇ」

万吉 「それはっ。一番は、最初に間違えたお前が悪いんじゃねぇか!」

仙吉 「そりゃ、間違えた俺も悪いけど、姉さんとお照ちゃんが気が付いたのに、

   何で、兄貴は気が付かないんですかい!」

お駒 「お止しよ。もう、お止しったら。兄弟喧嘩はよそでやっとくれ」

万吉 「あの、こんな奴と兄弟じゃありませんので」

仙吉 「左に同じく」

お駒 「わかったから、続きは外で」

お照 「でも、仙ちゃん、よかったじゃない。出す前に姉さんに見てもらって」

仙吉 「ええ、お陰さまで、これからはもちっと字の勉強しやす」

 

 仙吉は万吉をちらと見る。


万吉 「それで、姉さん。旦那の方は…」

 

 万吉は素知らぬ顔で言う。

 真之介の話の見当はついている。



 兵馬はあれから毎日の様にやって来た。エゲレス語に興味を持ったようで、そのことは真之介、ふみにとっても喜ばしいことだった。やはり、何か目標が欲しかったのだろう。

 婚姻より妊娠が先となったいわゆるデキ婚だが、どちらにしても、兵馬にとっては青天の霹靂だった。それどころか、妊娠と言う即物的な事実がまだ受け入れられない、いや、そのことに嫌悪感すら感じているのだ。

 真之介は、極力、夫婦や家庭の話題を避け、知っている限りの外国の話をし、関連する書物も勧めた。


兵馬 「はい、これからは私もしっかりせねばと思っています。何しろ、父上があ

   のような次第ですので」

 

 父の播馬は今は落ち着きを取り戻しているが、たまにおかしなことを言いだすと言う。


兵馬 「父上は確かにあの時、町人姿の兄上を見た。また、姉上にも同じような格

   好をさせてたとか言うのです」

真之介「世の中には自分と似た者が三人いると言います。きっと、似た者と見間違

   えられたのでしょう」

 

 事実、その通りであるのだが、真之介の出が町人であるところから、わが娘にもそのような格好で歩かせていると思ってしまったようだ。


ふみ 「そうです。私に似た女もいるそうで、あちらの母上とお伸殿が見かけたそ

   うです」

 

 ついに、ふみもそのことに気付いた様だが、今は父と母のことが心配なだけだ。出来るなら、毎日でも実家に様子を見に行きたいのだが、園枝の手前そうもいかない。だが、あの供侍が必死に否定していると言う。


供侍 「そんな者はおりません!私は何も見ておりません!ならば、それは幻覚でしか

   ありません!」

播馬 「いや!確かに見た!」

 

 と、見た見ないの水掛け論が始まり、どうやらあの供侍は融通の聞かぬ性格の様で、かたくなに否定して播馬と衝突していると言う。


兵馬 「元々頑固な父でしたが、近頃はさらにひどくなり、周囲も手を焼いており

   ます。お歳のせいですかね」

真之介「はぁ…」  

 

 真之介も何と言っていいのかわからないが、このことで、兵馬が当主としての自覚を持ってくれることを願うばかりだ。

 それに付けても、やはり気になるのは自分たちによく似たあの夫婦のことだった。幸いなことに、ふみに似たお夏と言う女はお駒の従妹だと言う。ここはお駒に会って、あれこれ聞いてみようと思った。

 そして、約束の日、鰻屋の二階で待っていると、お駒はやって来た。


お駒 「遅くなりまして」

真之介「いや、私も今来たところだ。それより、今日はわざわざ呼び出して、忙し

   いところを申し訳ない」

お駒 「いいえ、旦那のためなら、火の中水の中は駄目ですけど、時間と足くら

   い、お安いことで」

真之介「火の中は熱くて駄目だが、水の中なら良いとか言ってほしかったな」

お駒 「私は泳げませんので。旦那は泳げるんですか」

真之介「少しは泳げる。やはり、まだ冷たいかな」

 

 お駒に茶が運ばれて来た。


真之介「姉さん、飲まないそうだな」

お駒 「ええ、さっぱり。ああ、どうぞ、私に構わずお飲みになって下さい」

真之介「いや、私も夜しか飲まない。やはり、飲みすぎるのはよくない…」

お駒 「そうですね」

 

 お駒は何かほっとしていた。こうして、真之介と対峙していると、どうしても清十郎が紛いものに思えてしまうのだ。清十郎もあれはあれでいいのだが、やはり、老舗には勝てない…。


お駒 「あれから、大変だったのでは」

真之介「あれからとは?」

お駒 「お夏から聞きましたけど、旦那のお舅様が清十郎とお夏の二人を見て驚か

   れ、急に苦しまれたそうですね。その後、お加減は」

真之介「ああ、思ったほどのことはなく、今は元気になられたようだが、やはり、

   あの二人を私とふみだと思っている様で…」

お駒 「そのことで責められてるのですか」

真之介「直接責められてはおらぬが、疑われていることは確かだ。それと言うの

   も、あの時のお供の者があれは幻覚だとかたくなに言い張っており、例え、

   私を問い詰めたとして白を切り通すに違いない。ならばと、近頃はあの界隈

   に出かけようとなさるそうだ。ならば、いっそ、引き合わせた方がいいかと

   思ったりしている。それで、あの従妹夫婦は今、どうしている」

 

 そこへ、鰻が運ばれて来た。鰻は注文を受けてから焼くので時間のかかる食べ物だが、こんなに早く出てくるとは、少し前に来たとか言っていたが、真之介が早めに来て注文をしてくれたのだ。


お駒 「ええ、あの後しばらくはうちに居りましたが、今は長屋住いしてます。

   それが、あの清十郎、役者になりまして」

真之介「役者!?」

お駒 「まあ、役者と言っても、まだその他大勢のほんのチョイ役ですけど、結構

   合ってるらしく、そこで、二人してやっていくことを勧めたんですよ。とは

   言っても、亭主の給金だけじゃ暮らせませんから、お夏の方はうちで下働き

   やってます。でも、これがまた、ほとんど何も出来ないんですから、教える

   こっちがくたびれちまいますよ」

真之介「そうだったのか…」

お駒 「あぁ、清十郎はあの通り、芝居小屋と長屋の往復でして。お夏もこの界隈

   に出て来ることはそうないと思いますよ。全く方向が違いますから」

 

 播馬に自分たちに「似た夫婦」を引き合わせればそれで済むこと事だが、それをかわら版屋の繁次がかぎつければ、またネタにされてしまう。さらに、拮平があの無い頭を使い、これまたろくでもないことを思いつかないとも限らない。その可能性は十分にある。そして、その後始末を…。

----当分この界隈に足を踏み入れないのなら、このまま…。


お駒 「ところで、あの話、本当はどうなんです」

真之介「あの話とは?」

お駒 「ほら、どこかの旗本の息子の髷切り事件ですよ」

真之介「あぁ…」

お駒 「あれ、本当は旦那もその一味じゃ。いえ、首謀者だったりして」

真之介「まあな」

お駒 「さすが」

真之介「いやいや、相手は三人、こちらはその倍以上の人数でやった事だ」

お駒 「それにしても、計画立てたのは旦那でしょ。あの計画はすごいですよ。で

   も、どうして、別々に晒そうと思ったんですか」

真之介「あの野郎に手籠めされた娘たちは一人で歩いて帰るしかない。その時の気

   持ちを思うと…。いや、男が容易に想像出来るものではないが、そんな気持

   ちを少しでも味合わせてやりたかった。親の権勢と家来に守られている奴が

   髷を切られ、一人になった時どうするか見てやろうと思ってな」

お駒 「家来の方の髷を切らなかったのは」

真之介「上の者に媚び諂ってやりたい放題やるのも許せないが、所詮は小者。どう

   せ屋敷を追い出されるだろう。そんな時に髷無しで生きていける筈もなく、

   食うに困って押し込みでもやられては藪蛇だからな」

お駒 「なるほど。で、仁神の馬鹿息子はあのかっぱ寺の近くから、どうやって屋

   敷まで帰ったんですか」

真之介「あちこちでぼこぼこにされ、うずくまっているところを、あの尾崎友之進

   に発見され、駕籠で帰った」

お駒 「そうだったんですか…」

 

 お駒も尾崎友之進の話は知っている。


お駒 「でも、私など、戯作物書くだけで四苦八苦してますのに、お一人で脚本、

   演出、主演なさるとは、私もうかうかしていられませんね」

真之介「いやいや、苦肉の策と運が良かっただけだ」

お駒 「運も実力のうちですよ。で、どのように運が良かったんですか」

真之介「何より、邪魔が入らなかった事だ」

お駒 「夜だから、邪魔されることは余りないのでは」

真之介「その邪魔者がいない筈の夜に、数人の男がことをなそうとしているのだ。

   そんな輩が他にいないとは限らんだろ」

お駒 「はぁ。でも、それにしてはかわら版に詳しく載ってましたね。まるで見て

   来たように」

真之介「ああ、言い忘れたが、かわら版屋に嗅ぎつけられてな。そいつが一部始終

   を見ていたと言う訳だ」

 

 もう一人、とんでもない小物の珍入もあったが…。


真之介「しかし、かわら版にはこっち側に侍がいたとは書いてなかったのに、どう

   して私が一枚噛んでると」

お駒 「あれだけのことを町人だけでは無理でしょ。相当の策士が付いていると

   思ってましたよ。その後、渦中の方をお迎えになられたでしょ」

 

 真之介は苦笑するしかない。


お駒 「そこまで思われて、奥方様はお幸せな方ですね」

真之介「そう言う話になっているのか…」




























  










 








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