第11話 借金王、セクハラ疑惑を受ける
「ダリルっち……そんなエッチな視線で全身をジロジロ見られたら……恥ずかしいでちよ? ああっ、でも魅力的過ぎるボクが悪いんでちね……」
「だ、ダリルさんっ!? 」
顔を真っ赤にしてジャンヌが叫んだ。
「なっ、なに言ってんだ!? か、顔しか見てねーよ!」
「なるほど。ボクのロリロリ美少女フェイスに見とれてたでちね?」
「ちっがーう!! 」
「ひどいです……最近はダリルさん、クリスさんともいい雰囲気ですし……」
いつの間に注文したのか、ジャンヌは
「やっぱり私は……ひとりぼっちれす…………」
「ジャンヌ、落ち着け! アリーゼも冗談はいい加減にしろ!」
「ほうほう。ダリルっちはこの
「ダリルさんは〈ハーレム王〉じゃなくて〈借金王〉なんれすよぉ……」
「だーっ!! いい加減にしろ!」
くそ……アリーゼは宮廷魔術師に推薦されたんじゃなくて、単に魔術大学から厄介払いされただけなんじゃないだろうか? 楽しそうに笑う彼女を見つつ、俺は深刻な疑念に捕われ始めていた。
***
それから半日ほどでクリスが戻ってきた。どうやら王太子はブルゴーニュ公というフランスの大貴族に捕えられているらしい。
さらに見せたいものがあると言われ、俺達は酒場の裏に連れて行かれる。そこには毛並みのいい五頭の馬がつながれていた。
「へえ……立派な馬だな。これ、どうしたんだ?」
「伯爵の厩舎からいただいてきた」
「おいおい! そりゃ、まずいだろ!」
だがクリスは涼しい顔だった。
「王太子救出の報酬を一部前払いでもらったと思えばいいだろう? それとも、王太子の命は馬五頭より安いのか?」
「その理屈……伯爵に通じるとは思えねーぞ!? ……ま、今さら仕方ねぇか。面倒なことになる前に出発しようぜ」
「それがいいだろう。ところで、私がいない間に何があった?」
クリスはニヤニヤするアリーゼとしょんぼりしているジャンヌを見ながら首をかしげた。俺は聞こえないふりをして馬の鞍に荷物をくくりつけ、出発の準備を始めた。
***
その日の夕方、俺達はブルゴーニュ公国の首都ディジョンへと出発した。ジャンヌは俺の馬に乗せていくことにする。
「落ちねーように気をつけろよ?」
「はい!」
後ろからジャンヌがギュッとしがみついてきた。いやおうなしに彼女の胸が背中に当たったが、俺は馬をあやつる方に意識を集中する。なぜかご機嫌になったジャンヌがニコニコしながら話しかけてきた。
「ダリルさん! 王太子様……絶対お助けしましょうね!」
「ああ、借金返済の為にな! しかし、ブルゴーニュ公って奴はフランスの大貴族なんだろ? どうして王太子を捕まえるんだ?」
「イングランドと手を結び、自分がフランス王になろうとしているそうだ。……戦争が終わった後、フランス王国が残るとは思えんがな」
クリスは肩をすくめる。
「それにしてもひどいものでちね……。ここまでに見た村はほとんど焼き払われているでちよ?」
街道を走り始めてから口数が減っていたアリーゼがボソリとつぶやいた。
「それがイングランド軍を率いる
「こんなことをしてどれだけの孤児が生まれたと思っているでちか……。ボクの魔術でイングランドの連中を教育してやるでちよ」
アリーゼは何かを決意したかのように遠くを睨みつけていた。
「ところで、どうやって潜入するつもりだ?」
「そうだな……あれで行くか」
クリスの問いかけに、俺は街道の向こうから近づいてくる旅芸人一座を指さした。こんな時代だからこそ旅芸人は市民にも軍隊にも歓迎される。アリーゼに借りた金で五人分の芸人衣裳を買取り、俺達はブルゴーニュ公の居城へ急いだ。
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