28・永遠の魔法少女



 青井響歌。

 赤沢菜穂香。


 先に魔法少女になったのは響歌だった。

 家族のいない響歌は、失うものがなかった。

 たったひとりで、まるで親の元に行きたがるように、闇の幹部やコテンパーンを恐れず、泣き言を一切言わないで、戦闘用ロボットのように戦っていった。


 コテンパーンと戦闘中。


 クラスメイトの菜穂香が巻き込まれた。

 響歌は、菜穂香を庇って怪我を負った。

 彼女を守るために、菜穂香は、精霊にお願いして、自分から魔法少女になった。

 響歌と菜穂香はタッグを組んで、一緒に戦うようになった。


 知と技の響歌。

 力の菜穂香。


 パワー不足の響歌を菜穂香のパワーがカバーし、一方的な攻撃しかできない菜穂香を響歌の知能と豊富な技術力でカバーをして、互いの弱点をおぎないながら、手と手を取り合って戦うことで、闇の世界の幹部たちを次々と倒していった。

 自分たちが得た変身能力が、魔法少女という名しかないのを知った二人は、


『フランジェルカ』


 というチーム名を作った。


 『光』と『天使』で、フラッシュエンジェル。

 それを省略して、フランジェル。

 その最後に、菜穂香と響歌の『か』を取って、


 『フランジェルカ』


 調子に乗っていたときは、変身したときに


「菜穂香、響歌、ふたりは最強、フランジェルカ!」


 とポーズを決めていたとも聞いているわ。

 それもあって、今では黒歴史となっているようで、フランジェルカの名は言おうとしないみたいだけどね。

 最強の戦士がついに登場して、ガディスは大喜び。

 二人をさらに強くさせるべく、次々と刺客を送っていった。

 フランジェルカは、その希望を叶えたわ。

 この世界を守り、光の世界を救うために、激戦に次ぐ激戦を勝ち抜いていった。

 そして、闇の王ガディスと戦い、勝利を収めた。

 自分よりも強いものに倒されたのだから、ガディスは感無量ってところでしょうね。

 その自己満足に巻き込まれた光、闇、地上の三つの世界にとっては、最悪もいいところだけど。

 ガディスの肉体は滅びたとはいえ、死ぬことのない生命体だから、概念としてどっかに浮遊しているけど、まあ、概念でしかないから、気にすることもないでしょうね。

 女神エリーゼは復活し、光の世界から光が戻った。

 死んでいった精霊たちもエリーゼの守護によって、少しずつだけど新しく生まれ変わろうとしていた。

 闇の世界も、フランジェルカに協力した奴が新しい王になったから、ガディスのように暴走することもない。

 世界に平和が訪れて、めでたし、めでたし……。

 といきたかったんだけどね。


 そうはいかなかった。

 ガディスは厄介なのを残していたの。


――破滅の種。


 ありとあらゆる世界を破滅させる、意思のない生命体。

 ガディスですら、こいつはヤバイと封印させたほど強烈な力を持っていた。

 それが目覚めようとしていた。

 闇に光に地上界。すべての世界が、破滅へと向かってしまう。

 それを阻止するためには、再び封印をするしかない。

 女神エリーゼが、そうするべく光の力を使おうとした。

 けれど、ガディスのように完全に封じきることは不可能。数年後に封印が破られるのは確実だった。そしたら、また封印をしなくてはならない。

 数年、また数年と、封印の繰り返す羽目になる。

 しかも、封印している間に、破滅の種が、エネルギーである恐怖心を集めていき、さらなる力を得てしまっていく。

 エリーゼの力に限界が来たとき、破滅の種が世界を滅ぼす。

 その恐怖に私たちは怯えることとなる。

 その怯えが、破滅の種のエネルギーとなる。


 悪循環よ。


 それを知ったフランジェルカが

「破滅の種の封印を解こう」

 と提案したの。

 誰もが、正気か、世界を滅ぼす気かと、耳を疑った。けれどフランジェルカは言った。


「私たちが破滅の種を倒す。いつかは倒さなくてはならない奴なんでしょ。それは今です。先延ばしになんかできません。私たちがやります。お願いします。ガディスを倒した、私たちに掛けて下さい!」


 彼女たちの言う通り、誰かが破滅の種を倒さなければ、世界は滅びることとなる。それが可能なのは、フランジェルカしかいない。


 かけに乗ることにしたわ。


 エリーゼを中心にして、光と闇が力を合わせて、強力な結界を作った。水と油の関係である、二つの世界が協力しあうなんて初めてのことよ。

 闇と光が合わさった結界を戦場にし、フランジェルカは破滅の種と戦った。


 激戦だった。


 フランジェルカは、自らの力の限界を超えた状態で戦い続けた。

 何日も、何日も、終わりの見えない戦いだった。

 予想を超える長期戦となった。

 結界を張っていた、女神エリーゼ、精霊たち、闇の世界の魔物たち、元魔法少女の方に限界が来てしまった。結界が破られそうになった。私たちの世界が巻き込まれてしまう。そうなると何億もの生命が犠牲となる。


 そのとき、フランジェルカが結界を張った。


 しかも、結界を張った状態で、破滅の種と戦っていった。

 無茶な戦いよ。

 なぜ、そこまでして戦うのか、誰もが信じられない思いだった。

 そんな彼女たちに心を打たれた。


 誰もが。


 フランジェルカに懐疑的だった者も協力するようになった。

 そして、光と闇の者。

 生き延びた魔法少女。

 魔法少女を知る地上界の人間。

 すべてが一丸となり、結界を張り続けた。


 破滅の種を倒すのに百日かかった。

 それで、百日戦争と、私たちは呼ぶようになった。

 フランジェルカは、世界を救った英雄。

 神と言える存在になっていた。

 けれど、彼女たちには哀れな結末が待っていたの。

 ふたりはもはや、人間ではなくなっていた。

 長期間ものあいだ限界を超えて戦い続けた影響で、肉体が滅びてしまっていたのよ。彼女たちは光のエネルギー体でしかなくなっていた。

 人間に、戻れなくなってしまった。


 永遠の魔法少女。


 エリーゼ様は、それを憐れんだ。

 それで、フランジェルカに、魔法少女から人間に変身する力を与えたの。

 逆転しちゃったのよね。

 今の彼女たちは、魔法少女が元の姿。人間に変身することで、巨大な力をセーブさせて、日常生活を送っているの。


 ガディスと破滅の種の破壊によって、光の国はボロボロの状態になっていた。

 元の輝かしい国に復興し、傷ついた精霊たちに安らぎと平和を与えるために、フランジェルカは光の世界の扉を封印した。

 その前に、光の世界で暮らさないかと誘われたようだけど、「家族がいるから」と断ってね。

 地上界に帰ってきた響歌と菜穂香については、あなたのほうがよく知っているでしょ。

 いつも一緒にいて、ベタベタベタベタするあまりに、友情をあっさり超えて、禁断の関係となり、十年以上経った今もラブラブに暮らしていましたとさ。

 めでたしめでたし……といったところね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

Androidでは正しく
設定できないことがあります。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

新規ユーザー登録無料