6・動きを封じたわ



 バンバン!


 一瞬の光と同時に銃声。

 上に乗っかるゾンビを押した。あっけなくどいてくれた。

 立ち上がった。

 ゾンビの頭を目掛けて、引き金を引く。

 倒れた。

 解放された右手で、日本刀を振り回す。

 割れた。

 一人、二人、三人、四人、五人。

 撃って、斬って、撃って、斬って。

 ゾンビを次々と倒していく。

 ピクピクと痙攣するゾンビの頭を撃つ。動きが止まり、機能が完全に停止した。

 全滅。

 全部で13人。


「ぜぃ……はぁ……ぜぃ……」


 俺は日本刀を畳に突き刺した。

 握りを両手で掴んで、肩で呼吸をする。俺の呼吸音だけがする静寂のなか、周囲を見回す。

 立っているのは篠崎黒龍。ただ一人。

 和室の向こうに、ゾンビが隠れていることもなさそうだ。自分の身体を確認する。血の跡があるが、それはゾンビのものだ。ウィルスに感染されてはいないだろう。

 試合終了。俺の勝利だ。

 いや、大ボスが残っているか。


「次はおまえの番だ」


 日本刀の先端を篠崎に突き付けた。


「ブラボーッ! ブラボーッ!」


 動じない。篠崎はのんきに拍手をする。


「あのピンチからの大勝利。感動しましたよ。いったいどのようなマジックを使ったのでしょうか?」

「こいつらが、元ヤクザで助かったってだけだ。ズボンの中に硬いもんを見付けた。いちもつって硬さじゃなかった。一か八かでそれを奪って、トリガーらしき部分をひいてみた。持ち主が人間だったころ、これでゾンビかなんかと戦ってたんだろ。すでに発砲が可能な状態になってた。運が良かっただけだ」


 命を救った拳銃を確認する。

 ダブルアクションオートマチック。SIG P220。

 自衛隊が使用しているタイプだから、その辺りから流れてきたものだろう。


「いやはや、ブラボーッ、ブラボーッ!」


 篠崎は拍手を続ける。


「赤沢くんは最高の戦士となるでしょう。私の忠実なシモベとなり、憎き女を倒そうじゃありませんか」

「ふざけるんじゃねぇ!」


 銃を撃った。

 バン!バン!バン!バン!バン!

 弾が尽きるまで撃ち続けた。


「おや、蚊に刺されましたかな?」


 ノーダメージ。頭を掻くだけだ。


「化け物が……」

「地上界の人間ごときが、闇の世界の魔物に挑もうなんて無駄なあがきですよ」

「闇だと?」

「なにも知らないようですな。闇の世界、光の世界、伝説の魔法少女、フランジェルカ……そう、赤沢くんのお姉さまが何者であるのか、なにもかも……」

「意味不明だ。俺の姉がなんだというんだ?」

「記憶が封じられて、かわいそうなことです」

「記憶だと?」

「私の相手となるのはあなたの……おや?」


 篠崎は下を向く。

 床が光っている。篠崎を中心にして、魔法陣のような模様がついた円が出来上がっていた。


「動きを封じたわ」


 女の声。

 黒セーラー服に黒タイツを着た、真っ黒な長いストレートの髪に、真っ白い肌をした少女が歩いてくる。

 燃えるような真っ赤な瞳が、暗闇に潜む獣のように存在感を放っている。

 日本人じゃないのかもしれない。あるいはハーフ。胸当てに付いた紋章は、妹が通う野乃原中学校のものだ。

 年は十四歳ほど。妹と同い年ぐらいだ。


「斬りなさい」


 俺に命令をする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

Androidでは正しく
設定できないことがあります。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

新規ユーザー登録無料