2章ー幸せをくれた人
彼―アルセンとの初めての出会い。
リムルは改めてアルセンが自分に訪ねてきた理由を聞いた。
彼が訪ねてきた理由は、この【黒の真実】と銘打っている古代文字の書物の解読の手伝いをお願いしたいとのことでした。
アルセンはどうやらいくつかの文の解読に手こずっているらしかった。
解読に手詰まりを感じ、一度村から本土に向かい参考になりそうな資料を求めようかと思っていたらしい。
そんな時にリムルの両親がアルセンの元に訪ねて、最初は両親もただ娘に一目でもいいので『書物』を見せてもらえないか交渉しに行ったのだ。
最初は難色を示したアルセンだったが、娘であるリムルは”解読”能力があると伝えると、態度が軟化していった。
そして一度会って確認してみようかと思うようになった。
そしてこうして会ったと言う事でした。
そしてリムルが古代文字を解読するだけの能力があると分かると、『書物』の解読の助手を願いだしたのでした。
リムルも興味があった『書物』に触れ関われると知り喜んで引き受けた。
そしてリムルはアルセンの家に出掛け、彼のサポートをするようになった。
解読の作業は彼の家で行うことになった。
彼の自室には色んな書物が置かれているので参考になるだろうと言う理由でした。
始めは家以外の外に出るのは恐怖が少なからずあったが、好奇心が勝っていた。
そして彼の家に着き中に案内された。「ちょっと汚いけど…」と彼は言ったのだが、中に入るとリムルはギョッとした。
それは散かっていた空間が多すぎた事でした。
アルセンは一人暮らしで興味ある考古学に関わる事以外は無頓着になる性格でした。
当然と言うか掃除の類も本当に必要最低限しかしていなかったのでした。
本読み引き籠りであったリムルだが、ちゃんと家事の類を母から教わり出来る。
自室もきちんと整頓し清潔に心がけていた。
だからこそこの環境に納得する事が出来ず、異議なしの掃除を行った。
「えぇ!?」
「アルセンさん、何か不満でも!」
「い、いえ、リムルさんの仰せのままに」
初日はこうして彼の家の大掃除で終わった。
+
そして彼の解読のサポートをする為に彼の自宅に通う過程で、他の村の住人とも声を掛けられる時が増えた。
特に同年代の男性からよく声を掛けられるようになった。
それはリムルの容姿が優れていたからでした。
サラサラの白色の腰位の長さのロングストレートの髪。
宝石の様な赤い瞳。
ここ数年で成長した胸の存在もあったのしょうか。
世話焼きな所や優しく家庭的な雰囲気が異性の目を引き寄せていた。
ただそんな周囲の好意など気付いていなかったリムル。
リムルの頭にあったのはアルセンの家にある多くの書物に触れること、家事能力が疎かな彼を支えてあげる事、そして最大の理由である『書物』の解読作業の手伝いしかなかった。
他の男に告白されても目にくれないほどだった。
甲斐甲斐しくアルセンの家に通うリムルの楽しそうな表情と雰囲気にいつしか周りは見守るになった。
+
そんなこんなとリムルがアルセンの家に通い解読作業の手伝いをするようになって半年が過ぎていた。
半年間リムルは楽しかったと心から思った。
外に出ることで世界が広がった気すらした。
人間に対しての見方も変わった。
その理由の一つはやはり彼の存在でした。
アルセンはリムルの正体が獣人族であると言う事を気付いていたのです。
アルセンには”心眼”と言う相手の能力を確認する技能を有していました。
だから初めて会ったの瞬間には既に気付いていたと後から教えてもらった。
リムルは「どうして私が獣人族だと知っていながらも普通の人間の様に接してくれたの?」と正体を知っている事を暴露された際に訊ねた。
そんなリムルの問いにアルセンは「気にしてなかった。人間だろうが、獣人族だろうが、関係ないよ。だってリムルさんは僕と同じ生きている一個の命を持つ人なんだから」と笑いながら言った。
そんなことを言うのはおそらく彼だけだとリムルは思った。ほかの、この村の人がもしリムル達の正体を知れば即迫害に転じるだろうと思っていた。この獣人差別の強い帝国の地ではまずありえない思想。
心の優しい人。
アルセンという一人の人に、リムルは初めて好意をはっきりと自覚した。
机に向かい真剣な面持ちで解読作業をする彼。
生活力が不足している彼。
心が温かくなる優しい笑み。
リムルはそんなアルセンに、自覚した想いを告げた。
こんな風に自分を受け入れてくれる人なんて今後現れるか分からない、と思ったらじっとしていられなかった。
両親に相談したら、「彼なら私達も信じられる。だからリムルの好きなようにしなさい」と背中を押してくれた。
「アルセンさん。私は貴方が好きです!この獣人の血を引く私でも好ければ、私と付き合って下さい!」
只只純粋に今の自分の好きな想いをアルセンに伝えた。
そしてアルセンはその純粋なリムルの告白に、
「凄く嬉しいですリムルさん。こんな不精な僕を支えてくれる事が出来るのは貴女だけだと思う。だから喜んで一緒になりたい!」
とリムルの告白を受け入れてくれた。
リムルは嬉し涙を流しながらアルセンに抱き着く。
幸せでいっぱいだった。
それからは恋人となり、両親からは「よかったわね」と祝福してくれた。
それからの日々は本当に幸せだった。
ある時期に流行り病が村を襲い、その病にリムルの両親が罹り亡くなる事件はあった。
大好きな両親の死に凄く悲しみ涙を流した。
けど両親の最後の言葉である「…彼と一緒に幸せにな」と最後まで娘の幸せを願い笑って逝った両親の為にも幸せの日々を送ろうと、愛する夫であるアルセンと共に生きた。
両親の葬式はリムルとアルセンの2人だけで行った。
両親は獣人族であることから周囲に隠す為でした。
正体を隠していましたが両親は村の人達に慕われていたのか、沢山の人から感謝などの言葉を頂いた。
そして月日が流れ、リムルが19歳の時に妊娠したことが分かった。
この時は夫婦揃って嬉し泣き、幸せの証の芽吹きに神に感謝した。
そして順調に成長し無事に女の子の赤ちゃんを出産した。
その女の子こそが愛しい娘であるヴァニラ。
今は亡き夫の残してくれた幸せの証。
(あの子がいなかったら、生きる目的がなくて私は亡き夫の追っていたと今でも思うわ…)
今では元気一杯に育ってくれた娘。
元気すぎてやんちゃな所は一体誰に似たのでしょうか?
まあ元気なのは何よりよね。
外見は母であるリムルの兎人の特徴を持って生まれた。
髪はリムルの白色とは真逆の黒。夫であるアルセンの濃い青が色濃く出たのかなと思ったのだけど、彼―オウマさんに出会ったことで、娘の髪の質は彼に近い様な気がした。
活気のある兎人の赤い瞳。
ヴァニラには人間である父であるアルセンの血も継いでおり、本来魔力を持たない獣人族でありながら魔力が宿っていました。
ただヴァニラとしては魔力の扱いより、
ふと机に向かい迷宮ガルダの最深部らしき場所で見つけた解読不可の碑文を書き出している惶真にリムルは視線を向けた。
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