102区 麻子の兄弟

お風呂と服を借りたついでに、ドライヤーも借りて髪を乾かす。乾かし終わると、久美子先輩と揃ってリビングへと行く。


「あたしにボムを投げて来るとはええ度胸やね、健太。だが、死ね。超必殺、極大魔法陣・蒼き鎮魂歌! か~ら~の~、ラストアクション・美しき地獄絵図!」

「げ、いつの間にゲージ溜めてやがったん。麻子姉、鬼や」


麻子がかなり本気で、弟とゲームをしていた。

多分、格闘ゲームとか言うやつだろう。


普段ゲームなんてまったくやらないので、何がなんだかさっぱりだが、麻子が小学生の弟と本気で遊んでいる姿がなんとも面白かった。


今の麻子を見ると、部活でのあの積極的な行動や発言も何となくわかる気がする。


「さて、健太。お姉ちゃんは友達と部屋に行くから、あとは1人でやってな」

弟にそう言うと、私と久美子先輩を見ながら二階を指差す麻子。


多分、自分の部屋が二階だから、そこに行こうということだろう。


 私と久美子先輩がリビングから出ると、後ろから麻子が声をかけて来る。


「2階に上がって一番奥の部屋だから」

返答する代わりに私は左手を上げ、階段を登り出す。


2階に上がると扉が3つほどあった。


 麻子に言われたとおり、一番奥の部屋まで行き、ドアを開ける。


「きゃっ!」


部屋の中を見た瞬間、私は思わず叫び声を上げてしまう。


部屋の一番奥にベッドがあり、そこに男の人が寝ていた。


私の叫び声で目が覚めたのか、男の人が体を起こしてこっちを見て来る。

寝起きで随分と眠そうな顔をしているが、目には戸惑いと驚きの表情が映っていた。


この状況が理解出来ず、思わず後ろにいる久美子先輩を見る。


と、久美子先輩もじっと男の人を見つめているだけだった。


「えっと……。麻子の友達かい?」

男の人が訪ねてくるが、「え……ええ……」と気のない返事を返すのが精一杯。


「おまたせー。お、やっぱり兄貴起きてる。あたしの作戦は成功だったか。あ、聖香、久美子さん。取りあえず下着は乾いたんで持って来ました。ウインドブレーカーとかはもうちょっと待ってください」


ものすごい笑顔で麻子が部屋に入って来る。

しかも、普通に私達の下着を手に持って……。

いや、正確にはその下着を旗のように振りながら……。


「ちょっと、麻子! この状況はなんなの! てか、男性の前で下着を堂々と見せないで!」

私は麻子の手から下着を奪い取り、説明を求めるよう促しながら麻子を睨む。


「やっぱり女姉妹で育つとそういうの気になるの? あたしは、全然気にしないけど? 夏とか暑かったら、風呂上がりに下着のままリビングでお茶飲んだりしてるわよ」


空いた口が塞がらなかった。私の生活の中でそんなことは絶対にあり得ない。破天荒を絵で描いたような姉ですらなかったくらいだ。


てか、ふと思った。麻子は下着を見られるのは平気なくせして、ユニホームから脚とか腋がが露出するのをメチャクチャ恥ずかしがっていたのだが……。


基準がまったく分からない。

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