12区 姉の汚部屋お掃除大作戦
「信じられない。友達とか呼べばいいでしょ?」
「みんな忙しそうなんだもん。それに、聖香に用事があったのも事実」
姉がちょっと拗ねながら、ぶつぶつつぶやく。
もう怒る気も失せ、ため息しか出なかった。仕方ない。今日の寝床を確保するためにも掃除をしよう。姉の思惑どおりに話が進んでるのが気に喰わないが。
まずは部屋の足場を確保することから始める。パッと見て、部屋には三種類の物がある。あきらかなゴミ。いるかいらないかよく分からない物。最後に洗濯物だ。
まずはこれらを分類しながらまとめて行く。
私は洗濯物をまとめることにした。
姉にはその間にあきらかなゴミを捨ててもらう。
靴下、ジャージ、スカート、ブラ。靴下、Tシャツ、パンツ。ジャージ、ブラ、Tシャツ。いったい、何日洗濯していないのだろうか。脱いだら脱ぎっぱなしなのだろう。
「あ、服は洗濯済みと洗う前のものがあるから」
「そんなの分かるわけないじゃない! 全部もう一度洗って!」
姉の一言に思わずキレてしまう。
洗濯物をすべてまとめて姉に渡す。姉はさっそく洗濯機にそれらを持って行く。
私はその間に、いるかいらないか分からない物をまとめる。最終判断は姉に任せるしかないが、なるべくなら捨てて欲しいと思った。
なぜなら、あきらかに収納できるスペースよりも、床に散乱している物の方が多いからだ。
まずは本をまとめる。
『これであなたも片付け上手』
『ここが肝心! 片付け術』
『知らないと損をする! 片付け方法100選』
ダメだ。まったく役に立ってない。
むしろ、これらの本に憐れみすら感じる。
他にも大学の教科書が何冊も埋もれていた。
姉は授業をどうやって受けているのだろか?
「あぁ、それ全部1年生で使ったやつ」
疑問に思って姉に聞くとそう返答があった。
つまり2年間もほったらかしということか。
他にもグルメガイド、料理本、週刊誌、漫画、小説。
ありとあらゆる種類の本が出て来た。
本が好きなのは昔から変わっていないようだ。
あらかた本のまとめも終わり、今度は細かい物の分類に入る。
1分もしないうちに、爪切り、綿棒、耳かき、ウエットティッシュなどが出てきた。
ため息をつきながら、部屋の反対側に移動して整理を再開する。
なぜかまた耳かきが出てくる。それも2本も。
姉に対し厳しく追及すると、探すのが面倒くさいから、ないと思ったら近所の100円ショップで買って来るのだと言われた。
もう怒りを通り越してあきれてしまう。
途中、昼食休憩を挟みながらも、どうにか夕方前には掃除が終わる。おかしい。姉に会ったら熊本観光に連れて行ってもらおうと密かに考えていたのだが……。
観光どころか部屋から出ていない。
それでも頑張ったかいがあり、汚いドブ川から、アユやサワガニが見つかる綺麗な川へと復興することが出来た。すぐにドブ川に戻らないことを祈りたい。
「ありがとう。聖香が来てくれて助かった。お礼に今日の晩御飯はあたしが奢るから。なんでも好きな物を食べて」
姉が部屋を見渡し私の肩を叩く。
まだ17時と晩御飯には少しだけ早かったが、動き続けたせいか、お腹も空いていたので、さっそく食事へと出かける。
しかし、私は軽い目まいがした。姉と歩いて到着したのは、桂水市にも何店舗かあるファミリーレストランだったのだ。というより、この前駅伝部のみんなで御飯を食べたのと同じ店だ。
熊本に来て美味しい物が食べられると思っていたのに。
姉に期待した私がバカだった
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