防人の慟哭 その3
「・・・瀬さ・・・!?白・・・さ・・・!?わかりますか!?私です、第4潜水隊の八重潮です!わかりますか!?聞こえますか?白瀬さん?」
誰か・・・呼んでる・・・八重潮・・・さん?・・・
「あ・・・の・・・八重潮・・・2佐さんが・・・なぜ・・・?」
「良かった!意識を取り戻したみたいですね?今のご自分の状況、わかりますか?」
状況・・・ですか・・・?
「
「朝の時よりは・・・良くなってると思います。」
頭が段々、はっきりしてきています。どうしてかはわかりませんが、落ち着いた気分になってきます。
「良かったぁ!!白瀬1尉、良かったです!」
私が・・・泣かせてしまいました・・・
「・・・ごめんなさい・・・
「なぜ、白瀬さんが謝るんですか?謝る必要なんて無いですよ?それより、横になってて下さい。」
「ありがとうございます、八重潮2佐さん。お言葉に・・・その・・・甘えさせていただきます。」
「ぜひ、甘えて下さい。それから私は、少し
八重潮2佐さん・・・いつもは私とは、挨拶くらいでお話らしいお話もしていないのに・・・
ありがとう・・・ございます・・・。
「もう一度、最初から話を聞かせてもらいますけど、良いですね?」
「はい、昨日の白瀬1尉の雰囲気や口調がおかしかったと、話をしていたんです。どんな口調かを白瀬1尉に聞かれ答えたら、その口調で間違いないかと聞かれました。その通りと答えたら、顔色が悪くなられて、そのまま意識を・・・」
「昨日のその時はどんな口調だったんですか?」
「はい、『どうしたん
「らしくはないですが、間違いなく白瀬さんだったんですよね?他に気がついたことは?」
「特に・・・あっ、関係あるかわからないんですが、救急箱を探してました。手を怪我したからって。でも、おかしいんですよね?だって、救急箱探さなくても、治療室があるんですから、そこに行かないのかな?って。前に
「はい、なんでしょう?」
「あの時の白瀬1尉は、本当に
「それは私にもわかりません。ですが、白瀬1尉は白瀬1尉です。他の誰でもありません。それから、この事は秘密でお願いします。話に尾ひれがついたら、白瀬さんが立ち直れなくなるかもしれません。」
「わかりました。この事は他言無用でいます。それから、あの・・・」
「何でしょうか、
「八重潮2佐に話を持って行ったのは、偶然だったのかもしれませんが、正解だったかもしれません。ありがとうございます。」
「正解も何も無いですよ?たまたま近くに私がいただけのことですから。」
「あの、白瀬1尉の看病、お願いします。私は明日の早朝から断続的に入港予定があるらしいんで、もう戻らないとです。明日、終わったらすぐ来ますので、それまで白瀬1尉をよろしくお願いします。」
「いえ、私の方こそよろしくお願いします。明日は1日ついていられますが、あの様子では恐らく2~3日は、かかるかもしれませんから。」
夜遅くなのか、朝早くなのか、目が覚めると八重潮2佐さんが、私の机に突っ伏して寝ていらっしゃいます。
毛布でもかけて上げようと、起き上がろうとしたのですが力が上手く入らず、ベッドから出られません。
悔しくなってきます・・・。
あんな大きな災害があったのに、すぐ駆けつけることも出来ず、なにも出来ないまま、横須賀でひたすら待つだけなんて・・・。
それだけならまだしも、みんなの足を引っ張るようなことになってしまっています・・・。
布団を頭まで被り、体の右側を下にします。申し訳なさ過ぎて、八重潮2佐さんの方を向けません・・・。
情けなさすぎます・・・悔しすぎます・・・。
そんな風に考えてると、誰かが近づいてくる気配がします。八重潮2佐さんでしょうか?
「白瀬さん?」
八重潮2佐さんが、話かけてきます。でも、今は顔を見られたくありません・・・。
「窓でも開いてましたか?」
えっ!?窓?この部屋には窓は無いはずです。
「雨の降る音が聞こえます。ハンカチを枕元に置いておきます。必要なら、雨で濡れた顔をそれで拭いて下さい。」
椅子のところに戻る気配がします。
今日は、天気が良いはずです。雨なんて降ってはいません。
でも・・・気付きました・・・
私、泣いていたんですよね・・・。
その瞬間、さらにこみ上げてくる何かが、涙をもっと押し出すように溢れてきます。
もう、考えてることが滅茶苦茶になって・・・いえ、考えているのか、すらもわからないです。
でも、我慢します。聞かれたら、八重潮2佐さんが心配すると思って。
「起きてらっしゃるかわかりませんので、独り言を言います。」
八重潮2佐さん?
「白瀬さんは、独りではありません。私達、潜水艦がいます。
もう、我慢をしていることが出来ません。
涙も・・・声を出すことも・・・
「ごめんなさい!私、お役にたてなくて!!みんなの足を引っ張って!!」
これだけは布団の中から言えましたが、これ以上は言葉が・・・続きませんでした。
泣いて・・・泣いて・・・泣き続けてしまいました・・・
どのくらい泣き続けたのでしょうか?
段々落ち着いてきて気がつくと、部屋の中に八重潮2佐さんの気配が無い気がします。
布団を捲って、部屋の様子を見ると八重潮2佐さんはいてくれました。ちょっと・・・ほっとしました。
枕元を見ると、水色の布で青いイルカさんのハンカチが置いてあります。
八重潮2佐さん・・・ありがとう・・・
「おはよう・・・ございます。ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした。」
頭を下げますが、申し訳無い気持ちで一杯で、上げることが出来ません。
「大丈夫ですよ。迷惑だなんて、思っていないですから。とにかく、頭を上げて下さい。」
ゆっくりというか、恐る恐るというか、頭を上げようとすると扉からノックする音が聞こえます。
八重潮2佐さんが扉を開けると、
「白瀬1尉、起きてらっしゃたんですね?お元気そうで良かったです!あ、これ八重潮2佐さんから頼まれてお持ちした朝食です。3人で食べましょう!」
美味しそうな匂いがします。ご飯とお味噌汁と、あれは焼き魚でしょうか?サラダと納豆もあるようです。あとあのラップがついた小鉢は何でしょうか?。
「魚がお好みかわからなかったので、白瀬さんの所の食堂から持ってきてしまいました。卵とベーコンの炒め物です。八重潮2佐の分もあります。」
ググウゥ~・・・
お・・・お腹の虫が・・・は、はずかしいです!多分今、顔が真っ赤になっていると思います!
上げかけた頭を、また下げてしまいました。
そう言えば昨日は1日、ほとんど食事がとれていなかったでしたっけ。
「私もお腹空きました。白瀬1尉、
この部屋は、2人部屋をこっそり使っているので、広さはあるのですが、3人で食べるとなると、少々不便です。
「椅子を隣から持ってきます。ちょっと待ってて下さい。」
そう言って立ち上がろうとすると、「私、持ってきますから」と
「白瀬さん、自分1人で出来る事には限界があります。白瀬さんも私も、曳船さん達の手伝いがないと出入港が難しいですよね?」
「はい、いつもお世話になってます。でも、お世話になりっぱなしで・・・」
「でも白瀬さんは、ほかの方の出入港、手伝えますか?」
「そ、それは・・・」
絶対にそれは出来ません。小回りは利かないですし、あんなに優しくなんて、多分押せません。
「私も、曳船さん達の仕事はできません。だからと言うわけでは無いですが、曳船さん達を頼っています。それに白瀬さんも、私や曳船さん達に出来ない仕事、されてるじゃありませんか?」
私にしか出来ない仕事ですか?
「もっと自信を持っても大丈夫ですよ。『南極に行って帰ってくることが出来ます』って。羨ましいです。自衛艦では、唯一ですよ?南極へ行って、見てくることが出来るなんて。とっても素敵じゃないですか。私達潜水艦には、その・・・色々な制限がありますから・・・」
とても・・・とても淋しそうな目をしています。
「お待たせしました、早く一緒に食べましょう!」
隣から椅子を持ってきた
「そうですね、早く食べましょう。白瀬さんは、左側で良いですか?」
と八重潮2佐さんは左側の机に、私のトレイをずらそうとしています。
「真ん中の机は小さいですから、私が使います。こっちの大きい方、使って下さい。」
「大丈夫ですよ、白瀬さん。小さい所や狭い所は慣れてますから。」
私は八重潮2佐さんの持ってるトレイを受け取って、左側の机に、
本当はマナー違反なのでしょうが、私はさっと真ん中に座ると、「真ん中なら、どちらからも近いですし、八重潮2佐さんには、ここが広いと思われるかわかりませんが、窮屈な思いしないで食べて欲しいんです。」と、座るように促します。
「私達にある士官の3人部屋より広いと思いますよ。十分過ぎます。正直に話すと・・・羨ましいですね。」
そうに言いながら八重潮2佐さんは左側に座ります。でも知りませんでした。潜水艦の幹部の方達が3人部屋だなんて。
「私達曳船には無いですから、私から見れば、お二方が羨ましいですよ。」
そう言いながら、
それから、3人で「いただきます」と言って食べ始めます。
私と
「八重潮2佐さん、あの、お味噌汁いつの間にそんなに飲まれたんですか?音が全然聞こえなかったので、びっくりしちゃいました。」
「え?本当だぁ!いつの間に?」
「私は、いつも少し温くなるまで待ってから飲んでます。音を出さないのようにするのは、当然と言えば当然ですけど、仕方無いですよ、こればっかりは。」
確かに潜水艦の方々は、静粛性が求められると聞いたことはありますが・・・
「でも、ここは『しらせ』ですから、音を出しても大丈夫ですよ?」
そう、ここは潜水艦ではありません。別に音をたてても問題無いのですが?
「潜水艦の持って生まれた生活習慣、とでも言っておきます。これが私達の『普通』ですから、こちらに来たからと言って、すぐにそういったことが出来るわけではないんですよ。別の言い方をするなら自衛官さん達の言う、『職業病』でしょうか?」
「職業病ですか?そう言うのがあるんですね?」
「それって、帝都海運汽船の新人の、茅ヶ崎丸さんだったかな?見てて手伝いたくなる、みたいな事ですか?」
「それは
「
「わ、私は、ちょっと茅ヶ崎丸さんが頼り無いなって、思っただけですから!」
「
「八重潮2佐さ~ん!ひどいですよ~!」
笑ってはいけないのかもしれませんが、声を出して笑ってしまいます。
「あ~!白瀬1尉まで!もお~!」
ふと、八重潮2佐さんを見ると、静かに笑おうとしていますが、それでも声が少し漏れてしまっています。
ひとしきり笑って気がつくと0748になっていました。みんなで急いで片付けをして、小鉢は私の食堂に、それ以外は八重潮2佐さんの所に片付けます。
「5分前!」
間もなく自衛艦旗掲揚です。八重潮2佐さんも私の飛行甲板に間に合いました。
こんな風に、他の方と自衛艦旗掲揚に参加するのは、初めてです。でも、八重潮2佐さんと
0800、信号ラッパで君が代が鳴らされる中、自衛艦旗が掲げられ、一度上まで揚がった後、半分くらい下げられました。
まだ、半旗で掲揚なんです。
そして解散になり、2人共戻られると思っていたのですが、残られています。
部屋に戻って少しすると、
私もお出迎えにと思ったのですが、八重潮2佐さんに止められてしまいました。八重潮2佐さんが
確かに昨日の今日なので、お出迎えの最中に気分でも悪くなったら、心配をかけてしまいます。思う所はありますが、仕方無いですよね。
しばらくすると橋立2尉が、私のところに来てくれたんです。
「白瀬1尉、お加減はいかがですの?具合を悪くされたと伺ったのですが?」
橋立2尉は普段だと、常装冬服や第1種夏服を着ている事が多くて、今日みたいに濃紺の作業服に作業帽姿は、初めてに近い位に見たかもしれません。
「はい、もう良くなったみたいです。まだ気分は少しだけ優れないですが、昨日よりも良くなってますので、ご安心下さい、橋立2尉。」
私は八重潮2佐さんと橋立2尉に、椅子を勧めて座ってもらい、自分はベッドに腰掛けます。
「白瀬1尉?"みたい"では、まだ良くない証拠ですわよ?無理はくれぐれもなさらないで下さいね?」
自分ではだいぶ良くなったと思ったんですが、逆に心配させてしまったようです。
「実は橋立さんには、私が呼んで来てもらったんです。」
八重潮2佐さんが私に向き直りながら、そうに言ったんです。
「どういう・・・事ですか?」
「八重潮2佐、
八重潮2佐さんは、一旦目を閉じると、目を開けて私を見ます。
「橋立さんは、横須賀地方総監部で曳船等の方々を取りまとめていらっしゃいますし、白瀬さんも横須賀地方総監部の直属ですから、橋立2尉にも一度耳に入れておいた方が、余計なことだとは思いましたが、その方がよろしいかと思います。白瀬さん、また具合を悪くされるかもしれませんが、お話しを聞かせていただいてもよろしいですか?」
「・・・はい、もう大丈夫だと思いますので。」
多分、大丈夫だと思います。でも、こうに言うという事は、聞きたいのは昨日の事でしょう。
そして
「そうでしたか。それで、気になったのが
「はい、間違いないです。でも、声・・・あっ・・・いえ、何でもないです。」
「白瀬1尉?声がどうかされたのですか?」
声の人の事は関係ないと思って、黙っていようと思ったんですが、つい口が滑ってしまい、やっぱり話すことにしました。
「声の人・・・ですか。口調も似ていると・・・。」
「はい。なので私が、声の人と同じ口調で
「白瀬1尉?右手の怪我を治療したのは、どなたか御存知なのですの?」
私はうなずくと、立って本棚からその日の日記帳から、あのメモを取り出し、「声の人です。このメモが救急箱のそばに。」と2人に見せます。
「八重潮2佐?いかがなさいました?」
八重潮2佐さんの顔が曇っています。どうしたのでしょうか?
「橋立さんは気付かれていない様ですね?私はこの字を幾度か見たことがあるんです。申し訳ないですが確認したいので、白瀬さんの日記帳も見せていただいてよろしいですか?」
今、八重潮2佐さんが見たことがあるって・・・。会ったことがあるのでしょうか?
何でもないように振る舞いながら、日記帳を渡したのですが、とても心がざわつきます。
「やっぱり、間違いないですね。橋立さん見て下さい、ここ。」
八重潮2佐さんが日記帳を指差して、橋立2尉に見せています。橋立2尉もメモと日記帳を見比べています。
「白瀬さん、このメモの、"ま"、"よ"、"ね"、ですが、丸の部分が大きいのが特徴で、白瀬さんの字とそっくりです。」
「えっ!?そうなんですか?」
メモと日記帳を受け取って見比べると、確かに・・・そっくりです。他の字も似ているみたいです。言われるまで、気付きませんでした。
2人はそれぞれ、手帳を取り出すと何かを書いて見せてきます。そこには"ま"、"よ"、"ね"が書かれていますが、丸の部分がお二人で違い、私の字とも違います。
「白瀬さんは、双子・・・と言うことはありませんか?」
「双子って、私は双子だったんですか?」
思い当たるのは初代の白瀬さん位で、会った事はありますが、姿は少ししか似ていないですし、口調も声の人とは違います。それに今は、千葉県の船橋にいると聞きましたが、横須賀に来るには遠すぎます。そもそも、南極にいるときにも聞こえてましたから、初代の白瀬さんは関係ないと思います。
「すみません、思い付きで言ってしまいました。それ位しか思い付かなかったものですから。」
八重潮2佐さんが謝ってきますが、そういう事もあり得るのかもしれません。でも、双子だったとしても、夢に出てくるのでしょうか?わかりません・・・。
そうこうしているうちに、お昼になり私の食堂からお昼を持ってくることになりました。
朝に続いて、八重潮2佐さんと橋立2尉とも一緒に食べられるなんて、思っていませんでした。
そういえば、橋立2尉の給養員さん達のレベルは高いと聞いています。
美味しいって言ってもらえるかわかりません。でも私に乗ってくれている給養員さん達も一生懸命作ってくれていて、私は絶対に海自1だと自負しています。
今日は木曜日。明日だったら自慢のカレーを食べてもらえるんですが、仕方ありません。
食堂に近付くと、肉野菜炒めの匂いが私の鼻を刺激して、またお腹が鳴ってしまいました。食欲があるのは良いんですが、恥ずかしいものは、やっぱり恥ずかしいです。
3人でそれぞれトレイを持って部屋に戻ります。
部屋の扉を開けると、八重潮2佐さんが机に向かっているのですが、真ん中の机にトレイを置いています!
いけません!八重潮2佐さんにはゆったりしてもらいたいのに!
でも、予め用意していた3つ目の椅子に座ってしまい、橋立さんも左側に座ってしまいました。私は右側に座るしかありません。
「八重潮2佐さん、良いんですか?こっちの方が広いですよ?」って言ったんですが、「私は気にしていないですから。」と言われてしまいました。
食事も終わり片付けていると橋立さんが、「日記帳の事ですけども」と話かけてきました。
私が一度持ったトレイを机に置いて「どういった事でしょうか?」と答えると、橋立2尉は机の上の日記帳を見てから私を見ます。
「あの日記には、ご自身だけでなく、我々地方隊や自衛艦隊、果ては陸上自衛隊さんや航空自衛隊さんの事まで書かれていますが、どうして書かれていらっしゃるのですの?」
「それは夢の中で、声の人が『自分の周りでおきていることだけが、全てではないよ?調べられることは調べた方が良いねぇ。』って。だから、わかる範囲で調べて書いているんです。」
そう言うと、机の上の日記をしまい、3月11日が含まれている日記帳を探して橋立さんに渡します。11日からのなら以前のも書いてあるので、どう変化したか、わかってもらえるかもしれません。
あ、食器が無い!いつの間にか八重潮2佐さんが持って行ってくれたようです。ごめんなさい、お手数おかけして。
「JST(日本標準時)1446東北沖地震発災・・・1451海自第1配備・・・1530前後、津波襲来・・・空自松島基地、航空機と建物水没・・・陸自多賀城駐屯地、待機車両並びに援助物資水没・・・12日0359、長野県北部でM6.7の地震発災・・・陸自第1空挺団東北へ給水や輸送の支援・・・13日、空自百里救難隊ヘリ約47名救助・・・」
橋立さんは小声で読みながら、何ともいえない表情になっています。
「同日、陸自第6後方支援連隊、
日記帳を何ページか遡ったり、先に進んだりしながら、読み終えたのでしょうか?閉じると、橋立さんは私の方を向きます。
「白瀬1尉、お疲れになりませんの?」
「いつもの事ですから、気になりませんよ?それにこんなに細かくなったのは、震災以降ですし。」
「お気をつけ下さいませ?いつか取り返しのつかないことになりますわよ?特に・・・心が。」
橋立2尉が心配そうな顔で、両手を左胸に当てています。
「心・・・ですか?」
「ええ壊れてしまったら、元に戻れないか、戻るとしても時間がかかりますわ。ですからもう少し、気楽になさるとよろしいと思いますの。今からでも、少しずつでも。」
やっぱり、橋立2尉にも心配されちゃってます・・・。
そう言った橋立2尉は、「申し訳ありませんが、一旦失礼いたします」と部屋から出ました。ご自分の所に戻るみたいです。
はぁ・・・私、どうしてこんなに皆に心配かけちゃうんだろう・・・。
※このお話は、あくまでもフィクションです。
東日本大震災がテーマとなっていますが、実在の人物・団体等とは関係がありませんのでご了承下さい。
※作中の曳船・YT99に関しまして、この当時進水しておりませんでしたが、フィクションということで、お許し下さい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます