雪町料理店奇譚

作者 碧乃琥珀

27

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★★ Very Good!!

料理屋と怪奇譚の組み合わせは個人的に新鮮に感じました。とはいえ恐ろしいホラー要素が強いわけでもなく、昌陽を始めとした登場人物達の日常の一部であるのが良かったです。料理も不思議な出来事も、彼らの生活には当たり前に存在するもの。新しい日常系とも言える作品だと思いました。
出てくる料理も、オーバーリアクションや綿密な描写こそないものの、素朴でリアルな食事シーンや反応によって、和食的な味わい深さを感じ取ることができました。出てくる料理のラインナップだけでも、お腹の空く思いでした。
割烹『さか井』に行ってみたい、食べてみたいと思わせる技術はなかなか真似できそうにないですね。空腹な夜中に読むのはちょっとオススメできません。
難点はやはり序盤から登場キャラが多く、初見の人は覚えきれず苦労するかと思います。それに食事と不思議と、それらの要素ももう少し上手く掛け合わせることができるんじゃないかなとも思いました。
しかし噛めば噛むほど味が出る料理のような、読めば読むほど魅力の増す良作だと感じました。

★★★ Excellent!!!

雪は冷たいけれど、でもその内側は、不思議な温かさに満ちている。
住人たちを守るように雪で囲まれたその町は、だからとても温かい。
人も食べ物も妖しのものさえ、温かな「心」があるのだ。

間章の「雪町の春 」を読み終えるころには、完全にこの物語に
心を奪われていた。まず時系列を遡る間章をそこにもってくるのか
というタイミングの絶妙さに、著者の魅せかたのセンスを感じさせる。
読みながら自然に微笑んでしまう素敵な間章。

その話の余韻に浸っているうちに、「隣にいる人」がはじまり、
今度は泣かされてしまう。そしてその涙さえ温かいことに気づかされるのだ。

温かでいながら、でもこの物語にはどこかにいつも別離の予感が潜んでいる。
貴重なものは必ず失われるのだということを示されているような気持ちになる。
けれど失われても、それは最初からなかったことにはならないのだと。
失ったものも、わたしが覚えているかぎり「喪って」はいないのだと。
いつでもわたしの気づかないところで見守ってくれているのだと。
そんなことを信じたくなるような物語です。

★★ Very Good!!

 書くのは初めてということもあってか、序盤はややぎこちなさが残ってるんすよねー。なもんで、読み始めは星一つかな~とか思ってたんですけど、話が進むにつれて確実に上達してるんですよ。
 いやー、創作中に上達が見られるなんてのは、こういった投稿サイトならではの楽しみですね。俺も負けてらんねー!

 この作品の何が良いって、料理とあやかしというテーマの掛け合わせ。割烹とか得体の知れない何かって元々は身近な存在として在ったはずなんすよ。でも、時代の流れもあってか関わり合う機会も無くなりつつあります。惜しい話っす。
 んで、この作品ではそんな二つを一つにしてます。現代の話なんですけど、どことなく懐かしくて落ち着いた雰囲気があるのは、そのせいなんでしょう。
 特に出てくる料理がいい。割烹って事で、なじみ深い料理が並んでます。イメージしやすいんで、集中力を想像力に引っ張られずにシナリオへ目を向けられるんですね。フレンチなんかの横文字オンリーの料理をずらっと並べられると、確かに字面は良くなりますし格好いいんですけど読んでいてイメージがしにくい。相当描写力に自信が無いと、料理が伝わりにくいんですよ。
 でも、コロッケとかブリの照り焼きとか、豆ご飯なんかは味もしっかりと思い浮かべられる。この効果は大きい。しかし、豆ご飯……いいっすね~ (俺も歳かな(笑))

 シナリオは現代ドラマ寄りでぬくもりのあるファンタジックストーリー。細かいことをゴチャゴチャと書いてないので、肩肘張らずに楽しめるっす。
 キャラが多いんで覚えるのにちょっと苦労するかもですけど、被らないように気を配って書かれてますし、掛け合いも特徴を踏まえた上で進行してるんで、読んでいけば自然と覚えられるかな。
 無駄なギスギス感がないので単純に楽しめます。

 ラノベばっかり読んでると失われてく何かを、補充できるような作品って気がして… 続きを読む