episode3

――まどろむ意識。


見覚えのある場所が視界に入り込んできた。


草原に、お城?


あれ? この風景、朝にも見た?


だけど朝に見た夢とはちょっと違う所がある。


風景は白くなかった。そして遊牧民風の服を着た人がもう一人、合計二人いた。


「……まさか、“失われた魔術(ロスト・マギカ)”の一つが貴方に宿っているとは」


しかも今回は喋っている声さえ耳に入ってきた。所で、ロストマギカ??


「“失われた魔術”の一つ【色即是脳(オストワルト)】という瞳……これも運命なのか?」



ロストマギカ? オストワルト?


聞いた事もない言葉が出てきた。


まるでゲームみたいな名前。明らかにこれは夢ね。うん。


「私はこの世界を滅ぼしたくはない」

「だけど、それが覚醒したという事は」


え? 滅ぼす? どういう


『……らち』


え? らち?


「倉地っ!」

「うあっ?」


突如呼ばれた緋菜はパチッと目を開くと、目の前には数学の荒川先生の顔が。


「まだ本格的な授業でもないのに居眠りするとは、大したやつだな。倉地は先生専用ブラックリストに第一号として載せておくかな」

「!」


その一言でやっと意識が覚醒した緋菜は、ギョッとした顔となる。周りはドッと笑い声に包まれていた。


「ちょっ、いきなりブラリですか?」

「要注意人物という事だ。居眠りには気を付けろよ」


そう言って、荒川先生は教卓に戻っていった。

納得のいかないような表情で緋菜は頬杖をつき、黒板を見つめる。


(またあの夢……一日に同じ風景の出る夢を見るなんて、珍しいなぁ)


だが、敢えて深くは考えず、携帯か何かで見れる夢辞典でどんな意味があるか調べてみるかな。程度にしか考えていなかった――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る