第80話 辿り着いた先で

 老騎士が消え去ると次の扉が重低音と共に開かれていく。


 トワは轟音と閃光で動けないミリアに近寄り、踞っているミリアの目線の高さまで腰を降ろす。


 ミリアはスタングレネードと銃の轟音で目と耳の機能が低下している為、先程から耳鳴りが治まらない耳に手を当てている。


 トワはミリアの肩に手をやる、ミリアは霞んだ目をトワに向けミリアが落ち着くのを待つ。


「大丈夫か?」


「視界は戻りましたが、まだ耳鳴りが治まりません」


 トワは立ち上がってミリアに手を差し伸べる、ミリアはトワの手を取り立ち上がる、ミリアはうまく力が入らない為に倒れかけるが、それをトワが受け止めた。


「す、すいません、今退けます」


「もう少し休んでから行くか?」


「だ、大丈夫です、ちょと立ち眩みしただけなので」


 ミリアは慌てて離れて大丈夫のポーズをとる、トワはミリアが言うのならと言及はしなかった、理由としてあの老騎士の言葉を信じるならば、この先には目的地の宝庫があるだけなのだから。


 トワは肩に手を回す、離れようとしたミリアは有無を言わさぬ行動に唖然とする、それをトワはミリアがまだ歩けないと勘違いしてそのまま抱え込む、所謂お姫様だっこである。


「え、え」


「少しの間だ我慢してくれ」


 ミリアは困惑し更に固まる、トワはミリアが嫌がっているのだろう思いながらも歩みを進めた。


 開かれた扉をくぐり抜け通路を歩く、暫くなだらかな上り坂になっていた、その先に光が漏れる扉が現れる。


「もう大丈夫なので下ろして貰ってもいいですか?」


 言われた通りにミリアを降ろす、ミリアは自分の足で立つと乱れていた服装を直しながらトワに問う。


「ここが終着点ですか?」


「そのようだな」


「もう色々とお腹が一杯なのでこれ以上は遠慮したいですね」


「まぁ開ければ判るだろう」


 トワは光の漏れる扉のノブに手を伸ばして徐に開く、暗い洞窟内いた為に二人は光源に目を潜め、目が光に慣れるの待つ、トワは周囲を警戒したが殺気が無い事から武器に手を伸ばす事まではしなかった。


「あれは‼」


 眼前に広がる景色、山々に囲また空間であり煌々と光が射し込んで深緑が至るところある、しかし、そこに横たわっている生物がいた、外見は爬虫類に酷似していたが背中に羽根、口には鋭い牙と手足に切り裂く為の爪が有り、そしてその大きさは運動施設程の大きさがある、その後ろには財宝などが高く積み上げられていた。


「あの生き物の事をなにか知っているのか?」


「あ、あの生き物は、ドラゴンです、でも何でこんなところに!?」


 トワはデータベースからドラゴンの資料を閲覧するが、それはトワの世界の物で創作や妄想の類いであり必要な情報は特に無かった。


 さてどうするか、驚異が無ければ素通り出来るが、普通に考えるならばあのドラゴンはこの宝物庫の番人なのだろう、大人しく通して貰えば良いが、ここで考えていてもしかないとトワはドラゴンに近付いて行くと、首を起こしてトワを見る。


『Gaaaa』


「やはり素通りはさせてくれないか」


「トワさん!」


「ミリアは隠れていろ」


 空に成った重火器を降ろしてナイフを抜いてドラゴンに立ち向かう。

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