第72話 魔都に漂う者 魔都機甲戦 決



 レイドとアシュラの互いの攻撃が接触した瞬間、目を開いていられない程の閃光が辺りを覆った。

 人々が閃光の眩しさから視力が戻ると二体の巨人は互いの武装で鍔迫り合いの状態でいた、しかし、閃光で姿が見えなくなる前とは明らかに変わっていた、レイドの方は打ち出された翼は全て地面に墜ち、光輝いていた姿は霞んでしまい更に片腕が損傷して間接部が曲がっており、間接部から時折が火花出ている、対してアシュラは六本有った腕は一本を残して全て破壊されて尚且つ全身から異音と火花を出していた。


『腕部間接部損傷・・・中破、今戦闘中に復旧の見込み無し、アシュラの腕部武装五本大破』


「流石は隊長」


 正面モニターに映るホークはうっすら笑みを浮かべてトワに称賛を送る。


「笑えない冗談だ、こっちは翼を全て打ち出して終らせるつもりでその厄介な腕を潰しに行ったのに、きっちりと腕を一本護りきって、更に置き土産で片腕にダメージを加えていくなど、本当に笑えない」


 トワは突き放す物言いでホークの言葉を流す。


「ふ、ふふ、ははは、実に、実に愉快だよ隊長、いや、トワ・レイブン、捨て身で、ようやく、ようやく腕一つずつを護り損傷を与えられた、本当にふざけたような機体と腕前だ」


 狂気とも言える表情になりながら言い終えると、ホークはアシュラに残った一本の腕に力が入る、鍔迫り合い状態で拮抗していた二体のバランスが崩れる、トワは直ぐ様レイドを操作して力に逆らわずにアシュラの力を利用して後方に跳ぶ。


 それからは互いに決定力に欠けている為に千日手に陥った、ホークのアシュラはメイン武装である腕が一本の為に言葉通りに決定力無く、トワのレイドは現状に最適な武装のウイングアローは、アシュラの武装を無力化して地面に墜ちている、現在レイドの武装は片手に有る接近戦用刀身型武装一本だけである。

 アシュラは残った一本腕で力押しの様に攻める、それをレイドは機動力で回避をしながら刀身型武装で受け流し攻撃を加えるが、刀身型武装はアシュラのシールドコーティングに阻まれ繰り返される状態が続くとホークが間合を取り構える。


「いい加減仕舞にしましょう、次の一撃には全力で打ち込む」


 アシュラの残った一本の腕にエネルギー源が流れていく、アシュラ背中のスラスターがゴー、ゴーと鳴らして今か今かと待っている、それをアシュラの脚部は留めている為に地面に減り込んでいく。

 対するレイドは刀身型武装を地面に深々と刺して姿勢を低くする。


「ニーナ。接触する前にシールドを全開で展開」

『了解しましたマスター、一応の提案ですが回避を選択も可能ですが』

「いや、回避をした場合は後方の魔都に突っ込むだろう、ホークも此方が回避しない事を分かった上で仕掛けてきた」

『後方の都市を見捨てる事は?』


 ニーナの言葉を聞いたケラーは目を見開きトワの服を掴んだ。


「と、トワ殿、勝手な事言うのは分かっているが、魔都を救って貰いたい、もし救って頂けるのならこの身を好きにしていい」


 ケラーの声は後半の部分はか細くなっていく、トワは服を掴んでいない方の手がケラーの頭を撫でながら言う。


「大丈夫だ、大人しく椅子に座って待て」


 ケラーの撫でて落ち着かせて椅子に座らせるが、トワはケラーが女で有ること知らずに頭を撫でていたが、ソフィアとニーナの無言の抗議の様な空気が流れた、これは無意識にやったことでトワは深く認識していない為に対処に困ったが、諦めて目の前の問題を片付ける事にした。

 通信を開き画面に出るホーク。


「止めてやるから掛かってこい、ホーク」


 軽く、ご教示かの如く構えるトワ。

 トワの言葉を皮切りにアシュラは弾ける様に突っ込んでくる、レイドとアシュラが接触する瞬間、可視可能な薄い膜が二体の接触を拒絶する様に遮った。


「何時まで持ちますかな隊長?」


 ホークの言葉通りにアシュラの腕が目の前の膜を少しずつ侵食していく。


「いや、これでいい」


 トワは無邪気な笑みでしてやったと、端から見ると悪戯が成功して笑う子供に見えただろう、ホークはその笑み理由を理解したがアシュラは操作を受け付けない状態であり、ホークは笑いながら言う。


「成る程、今回は自分の負けですね、それではまた何処かでお会いしましょう」


 ホークは別れを告げると、アシュラの脱出装置を使い姿をコックピットから消した。

 残されたアシュラは主人がいなくなっているのにも関わらず防壁を突破しようとていた。


「・・・逃げられたか、遠隔起動開始」


 トワの言葉に反応して、地面に墜ちていた翼がアシュラに殺到する、アシュラはレイドの防壁に捕まっている状態で腕以外は無防備であり、翼は無慈悲な迄にアシュラを貫いた。

 翼は自分の仕事が終わったと認識したのだろう、レイドの背中に格納されて、レイドは翼を拡げると空の彼方に消えた、こうして長い魔都の事変は終わった。


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