第43話 ゲートキーパー
五階に降りると冒険者の情報通り大広間になっていて、大広間の中央に奴はいた、静かに獲物を待ち構えている、風貌はライオンを一回り大きくしたサイズで赤い瞳が薄暗い洞窟内で妖しく光っている。
『Boooou』
どうやらあちらはヤル気のようだ、手で合図してリリア達はここで待機してもらう、一緒に来る替わりに指示に従ってもらう事を約束して貰い、危なくなったら逃げるように指示にする。
「トワさん、無理はもうしているので、無事に戻ってきてください」
「トワくん、チーチェちゃんとリリアちゃんの事は任せてよ、だからさ、おもいっきりやっちゃって」
「師匠、師匠の戦い振りを此所から拝見させて貰います」
チーチェとリリアの頭を撫で、コロラとアイコンタクトで頷き合ってから、ハウンドウルフと対峙する。
「待たせたな、まさか律儀に待っててくれたのか?」
『UOOOON』
「魔物にも知性はあるようだな、さあ、始めようか」
シャーと音鳴らしてトワはナイフを抜くと、ハウンドウルフは体格に似合わない、しなやかで素早い動きでトワに襲い掛かる。
「とと」
前足でトワを引っ掻こうとするのを数歩下がり避け、引っ掻こうとした前足をナイフで斬ろうとしたらナイフが来る前に軌道を変えて回避して間合いを取った。
「このナイフに警戒している?」
試しにポーチから切れ味の悪くなった包丁を投擲するとハウンドウルフは前足で器用に弾く、もちろんハウンドウルフに傷は付かない。
「野生の感なのか、危険度で対応を変えている!?なら、これはどうだ」
トワはもう一度ポーチから取り出した物を投擲する、ハウンドウルフは同じ様に弾くが、弾いた瞬間に粉塵が拡がりハウンドウルフを包む。
『Kaaan』
ハウンドウルフは苦しそうに鳴く、トワはこの隙に距離を詰めハウンドウルフに肉薄するがトワは急いで飛び退く、ハウンドウルフの鼻と目を粉塵で潰したと思ったが、ハウンドウルフは片目を閉じていてトワが接近すると閉じていた片目を開いた。
「ははは、これは下手な人間より厄介だな、だが、片目と鼻の機能は奪った、来いよ犬畜生」
トワは両手に持ったナイフを担ぐように構えてハウンドウルフを迎え撃つ。
「はあああ」
ハウンドウルフに向けてナイフを投擲する、片方はハウンドウルフの肩に刺さりもう片方は避けられて壁に突き刺さる。
ハウンドウルフは武器を手放したトワに襲い掛るのをバックステップで躱す。
ハウンドウルフが再びトワに飛び掛かろうした時、トワは片手を出して引っ張る動作をする。
『!?Kaaain』
ハウンドウルフが悲鳴を上げると横腹に壁に突き刺さっていたナイフが刺さっている。
「どうした、犬畜生、たかがナイフが横腹に刺さっただけだぞ」
トワは今度は反対の腕を引き寄せる動作をすると、ハウンドウルフの肩に刺さったナイフが抜けてトワの手に収まった、ナイフをよく観ると柄頭から極薄の繊維がトワに向かって延びている。
「さて、理解できたか犬畜生?」
トワが何も握っていない手を頭上に持っていく、ハウンドウルフはトワに飛び掛かろうするがトワは悠然とした態度で告げる。
「終わりだ」
正に死刑執行するが如く手を振り下ろすと、ハウンドウルフの腹からナイフが突き破ってトワの手に血塗れのナイフが収まる、力を無くし飛び掛かったハウンドウルフを余裕で避ける。
「ふむ、サポート無しでもこれぐらいは大丈夫か」
トワはナイフを血払いして、ポーチから血取りの紙で拭いてからナイフを鞘に収める。
レイドが現在充電待機中なので、戦闘中のサポート無しで戦闘が出来るかを確認するのが今回の目的だった。
「師匠~」
「トワさん」
チーチェ達が戦闘が終わったので、近付いて来る。
「楽しかったよ、犬畜生」
ハウンドウルフに一瞥してから、チーチェ達を迎え入れる。
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