第38話 メンバー集め

 ステラ達と外出してから魔都出発する日まで、あと三日間の余裕がある、前日と前々日は図書がある場所で情報収集をして過ごした。


 トワある目的の為に今魔法ギルドに来ていた。

 ギルドに入って目的の人物を探していたら声を掛けられた。


「貴様見ないヤツだな」


 声を掛けられた方を見る、ローブを纏って白髪混じりのボサボサ髪の男がこちらに近付いて来た。


「あんたは?」


「この魔法ギルドの職員をしているパンザだ、それで貴様の名は?」


「自分は旅をしている名前トワと言う」


「ふーむ、それで旅人が魔法ギルドに如何様だ?」


「ここの魔法ギルドで登録している、チーチェとアルタを探しているのだが知っているか?」


「チーチェとアルタか、ちょっと待て」


 パンザは受け付けのカウンターまで行くと身を乗り出して何かの書類の束を持って戻って来た。


「あの二人は・・・今は依頼等は受けていないな、だとすればそろそろギルドに顔を出す時間だな」


「そうか、助かった」


「いや、仕事だからな構わん、そこに突っ立っている方が邪魔だ、そこの椅子にでも座って待ってろ」


「ああ」


 パンザが指差した椅子に座って待つことにした。


 しばらくギルドの中の様子を眺めていると、賑やかな声が外から聞こえてきて、バンと勢いよく扉を開くチーチェとアルタがギルドに入ってきた。


「おはようございます」


 チーチェは元気に挨拶をしながら受け付けに行く、それの後をアルタが付いていく。


「おう、おはよう、二人を探しているヤツが来てるぞ」


 パンザがこちらを指差しチーチェとアルタがこちらを見る、チーチェは笑顔で走り寄って来た、対照的にアルタは顰め面でゆっくり歩いてくる。


「トワさん、私を探していたて本当ですか?」


 チーチェが聞いてくるので、首を縦に振り肯定する。


「折角探していてくれるなら、ユーラさんが良かったな、・・・いてて」


 アルタは文句を言うとチーチェがアルタの耳を引っ張る。


「アルにぃ、ごめんなさいトワさん、それで私達になんのご用ですか?」


「四日後に王都をしばらく離れるから、挨拶に来た」


「トワさん、何処に行くですか!?」


「依頼で魔都まで行く事になった」


「魔都かよ、彼処は今魔物の発生率が急に上がっているって聞いたぞ」


 珍しくアルタがトワに警告してくれる。


「そうなのか、情報提供感謝する」


「あのー、魔都に行くまでの残りの日は何しているんですか?」


 チーチェが質問してくるので、考えていた予定を話す


「三日間で行って帰れる場所の依頼でも受けて行こうと思っている」


「えーと、その日程でしたら狩猟か採取がいいですね、事後報告や採取してから依頼を受ければ、いいので」


「なるほど、助かったよ、そちらの方向性やってみるよ、じゃもう行くよ」


「あ、あのー」


 チーチェが外套を掴んで呼び止める。


「どうした?」


「私とアルにぃも一緒に行っていいですか?」


「おい、チー、俺はい・・」


 何かいい掛けたアルタの口をチーチェがふさいでいる。


「構わないが」


「良かった、三日でしたら、茜いろのダンジョンに行きませんか」


「ダンジョン?」


 ダンジョンか確かに残花の祠に挑む前に他のダンジョンを確かめておくといいかもしれないな。


「では、そこに行くか、それとチーチェ、アルタの顔色が良くないから手を離してあげなくていいのか?」


「ああ、アルにぃ‼」


 アルタはチーチェが手を離すと思い切り空気を吸う。


「チー、ぜぇぜぇ俺を殺す気か」


「ご、ごめんアルにぃ、アルにぃが口を出すと話が拗れるから」


「チー・・・、まぁいい、茜いろ行くなら、前衛と後衛がいるな、前衛は何でもいいが、後衛は回復役がいるな」


「だったらさ、ナーガルさんに聞いてみない?」


「ナーガルさんか、妥当だけどいるかな」


「ダメならダメで考えよ、行きましょトワさん」


 チーチェがトワの手を引っ張っていく。


「おいトワ、気安く妹に触れるな!」


「アルにぃは黙ってて」


 チーチェがアルタを睨むと、はい、と言った大人しく付いてくる。


***


 引っ張られて着いた先は冒険者ギルドだった。

 ギルドの中は閑散としていた、チーチェ達に聞くと朝一の混雑を過ぎると何処のギルドもこんな感じらしい、チーチェは周囲を見渡すと探していた人物がいたらしく近寄って行く。


「ナーガルさん」


「おお、チーの嬢ちゃんとアル坊か、どうした俺になんか用か?」


 四十代位で、刈り上げた髪に全身レザー系の防具を身に付けて、背中に槍を背負ったいかにも冒険者の風貌の男性だった。


「はい、このあいだにお会いしたとき娘さんのリリアちゃんの実戦訓練するって言ってましたよね、もう終わりました?」


「いや、リリアが嫌がってな、何とか今日はギルドまで引っ張ってこれたが手詰まりでな」


「でしたら、私達と茜いろに行きませんか?」


「茜いろか、確かに初心者向けだな、リリアが了承すればいいが、リリア」


 ナーガルが椅子に座っていたリリアを呼んで紹介する。


「会うのは初めてだな、娘のリリアだ」


「私はチーチェで、こっちの無愛想なのが兄のアルタです、それと旅をしているトワさんです」


 少し離れた所で話を聞いていてアルタとトワは紹介されて近寄る。


「アルタだ、よろしくなリリアちゃん」


「トワだ、よろしく」


「リリアです、初めまして」


 金髪の髪をサイドポニーテールして、緑色の瞳が印象的な12.3才ぐらい少女で、服は長袖のシャツにハーフパンツで腰にウエストバックパックを身に付ける活発そうな印象を受ける。


「それでリリアちゃんは実戦の訓練しないの?」


「嫌」


 取りつく島もないがチーチェは懸命に説得する。


「何で嫌なの?」


「お父さんと行きたくない」


 リリアの言葉を聞いたナーガルは崩れ落ちた。


「ナーガルさんが嫌いななの?」


「うーうん、違うよ」


 リリアの言葉でナーガルは復活する。


「じゃあ、何で?」


「お父さんと行くときって、おじさんばっかりで嫌なの」


「だった私達と一緒に茜いろのダンジョンに行かない?」


「ウーン」


「アルにぃとかいるよ」


「えー、四十点」


「なにをー、俺だってお前見たいなチンチクリンはタイプじゃねいよ、俺はお姉さんタイプが好きなんだよ」


「うわ、キモ」


 アルタとリリアが口論して、先に進まないからチーチェが仲裁する。


「アルにぃ、年下の子に優しくしなきゃダメだよ、トワさんも見てるから止めてよね」


「こいつから・・・はい、すみません」


 チーチェがアルタに説教を始める、その際ギルド職員に呼ばれたナーガルが席を外す、トワとリリアだけになったが取り合えずリリアを説得する事にする。


「リリアだったか、それで自分達と一緒に行くかい?」


「えーと、トワさんでしたっけ、すみませんけどしゃがんでもらえます」


 トワは言われるがままにしゃがむとリリアはトワに話し出す。


「あの、トワさんって戦うのって恐く無いんですか?」


「うーん、どうだろう昔は恐かったのかな?当たり前だったからな、そんな事を考えた時は無かったな」


 トワは曖昧な返答をする。


「トワさんって結構な実力者ですよね?」


「どうなんだろ、取り合えず今まで生き残ってこれたが、自分が強いと思った時は無かったな」


「あの、お願いがあります、私と茜いろのダンジョンに行ってくれませんか?」


「ああ構わないが、どうして急に、嫌がっていたと思ったが?」


「お父さんの知り合いだと大雑把に戦闘が基本で、私が参考に人がいないんです、トワさんの得物ナイフですよね、ですから一度戦闘を見たくて」


 リリアがトワにしゃがむ様に言ったのは武器の確認をするためなのか、なかなかの観察力だと思う、これなら指導すれば伸びる人材だな。


「じゃあ、一緒に行こう」


「はい、お願いします」


 これで茜いろのダンジョンに行くメンバーが決まった。

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