第37話 王都での休日3

「ありがとうございました、またのご来店を」と店員の声に見送られて店を出て時間を確認してする、服屋で服を買っただけなのだがすでに昼下がりになっていた、荒事には慣れているが女性の対応にはからっきしなトワは疲れたので、トワは昼食を提案する。


「何処か落ち着いて軽食でも食べないかい?」


 トワの提案に女性方は承諾してくれた、これでもう一軒行くと言われたらトワは全力で回避もしくは撤退を考えていた。


「なにを食べましょう?」


「自分は店の事はよく知らないから任せてもいいかい皆?」


 少女達四人は話し合いを始めた、一方エリザはトワの手を握って大人しく待っていた。


 行く店が決まって少し歩き着いた先は、お洒落な感じでいかにも女性向けの佇まいなのだがトワは不穏な空気を感じて逃げる体勢を取ろうとするがトワは戦慄した、右手にエリザが手を握ってその横にキティがエリザの反対の手を握って、左腕にステラが腕を絡めていて、後ろをサクラが付いてきて、前方をユーラが歩いている、トワはこの状態は囲まれていると今気づいた。


「えっと、なんで囲んでるのかい?」


「もちろん、トワくんが逃げないようにね」


 トワは諦めて店内入る。


***


「キャー」


 女性達が悲鳴を上げているが、トワはなにもしていない、店内に入るや否やキティが店員から何かを受け取ってトワに渡し、ステラが。


「この間着けていたものを着けてよ」


 と渡された服に着替えて来てと言われて、個室に案内されて着替えをして個室を出たら女性達に叫ばれたのだ。


「トワ様完璧な着こなしです」


 キティが刺すような眼差しで見てくる、他の三人も似たような気配がする中で、エリザだけは「格好いいです、お兄様」と拍手をしながら嬉しそうにする。


 今トワの格好は髪をオールバックにして、モノクル型情報端末を着け服は執事服を着ているが状況がさっぱり分からない。


「食事をしにきたんだよな?」


「え、うん、そーだね」


 気の無い返事が返ってくる、他いる人達も同じ様子だ。


「トワ様、このお店はですね、男性店員さんにもてなしてもらうお店なんですよ」


 キティがこの店のコンセプトを説明する。


「じゃあ、自分は?」


 トワは店員じゃないのに何故この格好をしているのだと聞く。


「それはですね、最近始めたサービスなのです、来店した女性が自分で男性を連れてきて、その男性にやってもらえる、今王都で人気のサービスなのです」


「自分がやる理由が無いのだが」


「え~と、トワくん、いつ執事の技術が必用になるか分からないでしょ、だからトワくんのために来たんだよ」


 ステラは取って付けた様な言い分だったが、今日ぐらいは皆に付き合うかと納得する。


「やるのはいいが、何をすればいいだ?」


「それはですね、店員さーん」


 キティが店員を呼ぶ、トワは店員から説明を受ける、説明を終わってトワは執事の真似事する。


 妙な視線が周りに居る女性客から感じるが、トワは対する視線を気にしない様にこなしていく、女性陣が満足するまで付き合って店を出られた時はもう夕方頃になっていた。


 店を出て通りを歩いているとエリザは疲れたか眠たそうにしていた。


「エリー疲れたのか?」


 トワはしゃがみ腕を広げる、エリザは少し戸惑ったがトワに抱き付き、トワはエリザを抱え込んで歩くとしばらくするとエリザは寝息をたて始める。


「エリー疲れちゃったんだね、トワくんに抱えられて安心して眠ってるね」


 ステラは微笑んでエリザを見る。

 



 途中で教会騎士のサクラとユーラは宿舎に帰ると言って別れキティは用事があるらしく一足先に王城に帰っていった、トワはステラが寄りたい場所があると言われたので、ステラに腕を組まれ行きたい場所を目指して歩く、城壁に着くとステラは兵士に声を掛け城壁の階段を登っていく。


 城壁の階段を登りきると丁度、夕陽が沈もうとしていた。


「僕はさ、ここから見える景色が好きなんだ、だからさエリーに見せてあげたかったんだ」


 ステラは自慢の宝物を見せる様な顔で言った。


「ああ、確かに見晴らしがいいな、エリー、エリー起きてくれ」


 ステラに同意すると嬉しそうに腕を絡めてくる、エリザを揺さぶって起こすと目を覚ましたようだ。


 エリザは寝惚け眼を手で擦り周囲を見ると目を見広げる。


「・・・綺麗な景色」


「エリー、エリーがさ元気になったら連れてきたかったんだ」


「ステラお姉様・・・ありがとうございます」


 エリザは泣き笑いをしてステラに感謝の言葉伝える。


 エリザは病で殆ど寝たきりだった為に、外に出れなかった、それ故にこの夕焼けが沈む景色が斬新なのだろう、言葉も無く感動しているので、トワも景色を楽しむ事にした。


 日が沈み辺りが暗くなると城下町の家々に灯りが点り始めると先程とは別の顔表すとエリザはふたたび感動する。


「夜の光ってやさしいですね」


「そうだな」


「はい、しばらく眺めていたいですね・・・くしゅん」


「少し冷えてきたようだな、今日はもう帰ろう」


「ですが」


「また、こればいいさ」


「その時はトワ兄様も一緒に来てくれます?」


「分かった」


「約束ですよ」


「うん、うん、じゃあ帰ろうかエリー」


「はいステラお姉様」


 そうして日の暮れた城下町を通って城に帰る三人だった。

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