第312話 もう少しで……

俺達は、早速サラに調達してもらった、特注のダラ車で元クックルへと向かう。

そして数日。

「一切、敵が出ないな。もう少し妨害が入るものと思っていたが。」

「ここまで順調だと、罠の可能性も出てくるかもしれません。」

順調すぎるくらいに進みすぎて、むしろ不安になってくる。


「元のクックルがある場所までは、後どのくらいだ?」

「このスピードだと、おそらく一日くらいで着くかと思います。」

ダラ車は脳筋が御者をやり、俺がその隣に座っている。

あまり一人に任せると負担が大きくなるから、一人だけに頼らないようには

したいが、俺を含めて他に馬に乗った事すらないから仕方ない。


「疲れたなら、すぐに言えよ?明日にでも着くなら、お前も十分に休みを

取るようにしておけ。」

ダラ自体が生き物のため、あまり無理をしない程度に走らせて、多めに休憩

してはいるが、疲労はどうしたって溜まる。


「大丈夫です。それに、もう日が暮れかけていますので、今日の野営まで

もう少しですから。」

確かに薄暗くなってきているしな。





さらにしばらく走らせたところでダラ車を止め、野営の準備をする。

「それにしても、この客車は楽でいいわ~。」

「前までのは、必ず吐きそうになったもんね。」

スターナとフィルが乗り心地について感想を言ってるが、俺もそう思う。

御者席に乗ってても、そこまで振動を感じる事もなかったし、

脳筋もずっと座っているが、特に問題は無いみたいだしな。


「サラには礼を言っておかないとな。」

「そうであるね。相当、無茶な注文を聞いてくれたであるから」

……いや、まぁ分かってはいるがな。

礼だのについては後回しにするとして、野営場所の設置を済ませて、晩飯の

準備をする。


「出来たよ~。」

「あ、美味しそうじゃない。」

「へっへ~ん!腕によりをかけたもんね。」

俺達はフィルが作った料理に舌鼓を打ちながら、休息を取っていたが、

全員の口数がいつもより少なかった。

今まで、あまりそういう空気を感じてはいなかったが、緊張でもしているんだろう。

晩飯も早めに切り上げ、寝て体力を回復することにした。




「…… ……」

俺が見張りを担当している時、どこからか声?のようなものが聞こえた気がした。

【見識】で確認すると、それは間違っていなかったらしい。

「全員、起きろ。」

五人に声を掛け、寝ているのを起こす。


「ん、何……?」

「!……もしかして、敵ですか?」

「おそらくな。」

敵でもなければ、俺達を囲むような配置はしないだろうからな。

そして、囲んでいる印の一つが動き、近づいてくる。


「やあ、小汚い盗人君。久しぶりだね。」

相も変わらず、ムカつくやつだ。

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