第305話 寄り道を終えて

俺達はヴァディマールで出会った老夫婦を、村の近くで待機していた馬車まで

送っていく。そこには護衛もいるという。

「送るのはともかく、何で村まで一緒に来なかったんだ?」

「お恥ずかしい話ですが、田舎の者というのは閉鎖的なところがありまして……

下手に大勢で押しかけると、一切相手をしてくれない事もあるのですよ。」

そんなものか?


「それに近くまで来たら、人が住んでるから安全だと思いまして。まさか廃村に

なっているとは露知らず。」

それについては悪かった。

だが、さすがにそう遠いところに待機させていた訳ではないらしく、十数分歩くと

馬車や護衛の姿が見えてきた。





「本当にありがとうございました。」

「いえいえ~、ご無事で何でしたわ~。」

「あの、目的地が同じであれば、ご一緒にいかがでしょう?」

親切心で言ってくれたんだろうが、俺達が乗って変なのに襲われるとも限らん。

丁重に断って、その場を後にした。

最後に、暇な時でいいからクックルで開いてる商店に顔を出してほしいと頼まれて。


「さて、と。じゃあ私達もさっさと行きましょうか。」

馬車を見送って、俺達は歩き出した。


「仲の良さそうなご夫婦でしたね。」

「そうね。でも何だか見覚えがあったような?」

「我が輩は覚えてないである。」

詐欺師の言う通り、俺もどこかで見たような顔つきだと思ったが、向こうも

特に何も言ってこなかったので、まあいいだろう。


それから旅を続けるうち、やはりこの国にもゾンビもどきがいると判明した。

必ず不意を突いて攻撃を仕掛けてくるのだ。

それにも慣れたもので、今は普通に対応する事が出来るようになっているが。


「そ~れ!」

スターナの鞭が唸ると、二体まとめて体をズタズタに切り裂かれた。

「ふぅ……こんなものかしら~。」

「お疲れ様。それにしても、あと何体くらいいるのかな?」

魔鉱石は大量にあるんだろうが、あの地下で見た光景だと、人間の死体を

使わないといけないはずだからな。そう数が多いわけでもないと思うが……


「とにかく、ウルムに会って確かめるしかないか。」

「あの、勇者殿……」

「何だ?」

「本当にウルム王が黒幕なんでしょうか?」

そうか。脳筋も騎士の端くれだったな。不安はあるんだろう。

が、こうも状況証拠が揃ってるとなると、疑わない方が無理がある。


「少なくとも、何かを企んでるのは確かだろうな。」

「……ですよね。」

これからが本番ってところだな。

聞くだけ聞いて、知らないふりをするのであれば、ぶん殴ってでも

口を開かせるしかない。

それが、死んでまで操られているヤツらを助ける唯一の方法だろうからな。


もし、それでも吐かないのであれば――容赦はしないぞ、ウルム。

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