第303話 エジオで

俺達は城砦都市エジオに到着した。

「もしかして、ここでも戦闘になるかな?」

「さぁな。だが、竜騎士のヤツらを叩きのめしてきたんだ。そうなっても

仕方がないかもしれんな。」

ワミは慕われていたらしいから、多少は恨まれるかも……なんて、思っていたが

そうでもなかった。


「どうぞ、お通り下さい。」

「……予想と違う対応ですね。」

思ったよりもすんなりと入る事が出来たのだ。悔しいのを我慢しているのかと

思えば、そうでもない。


「あ~……いいのか?こんなにすんなり通して。」

門番をしている団員に率直に質問を投げかけると、構わないとの答え。

「リビ副団長から、もしも勇者殿が来られたら通して差し上げろとの命令です。」

随分と手回しのいい事だ。いや、邪魔されるよりもよっぽどマシなんだがな。


街の様子は、前に来た時と大して変わっておらず、商人達があちらこちらで

逞しく物を売っていた。

「……何だろうな。竜騎士達と大規模な戦闘をしたと思ったが、こうも街が平和だと

違和感を覚えるんだが……」

「こういうのは、気にしたら負けよ。何もない方がいいに決まってるじゃない。」

いや、まぁ……そうか?

少し遠くでやり合ったから、気付かなくてもしょうがないんだろうか?


いろいろと考えながら歩いていると、声を掛けられた。

「おぉ、久しぶりじゃねぇか!人数もまた一段と増えたな!」

声の主はリザードマン。しかし、向こうは覚えているようだが、俺達の方は

覚えていない。というか、顔の見分けがつかない。


「子供を助けた時のヤツか?」

「? 何の話してんだ?」

「違うのか?すまんが、それ以外でリザードマンと関わったのを覚えてない。」

「そりゃあそうだろうよ。エッカ焼き売っただけだしな。」

エッカ焼き?


それを聞いて詐欺師が思い出したらしい。

「……もしかして泉の伝説を教えてくれた人?」

「その通り。」

「あぁ。よく覚えていたな。」

「商売人にとっちゃ、記憶も大事な商品になるからな。」

この街で食べ物を売っていたんだったか。

脳筋はまだ思い出せないらしいが、かなり前の事だからな。しょうがないか。


「どうだい?またエッカ焼き食ってくかい?」

「もう夕暮れだしな。軽食よりは普通に食事をしたい。」

「そりゃ残念。じゃ、また。」

それほど残念でもなさそうに、さっさと去っていこうとするリザードマンを

引き止め、最近変わったことがないか確認する。


「ん~、どうだったかな~……あったような、なかったような。思い出せそう

なんだがな~。」

考えるふりをしつつ、自分の売り物へチラチラと目をやっている。

「……わかった。人数分買ってやる。」

「毎度!」

……まったく。


六人全員がエッカ焼きを受け取ると、リザードマンが口を開く。

「変わった事っつっても、そうそうはないがね。前から魔石やら魔鉱石が

頻繁に運び込まれてたんだが、最近はさらに量が多くなったくらいか。」

「何だと?」

「お、やっぱり気になるか?ヴァファールに入りはするものの、まったく

出てこないからな。おかしいだろ?」

嫌な情報を聞いた。ゾンビもどきを作る材料が運び込まれてるとなると、

この先はあまり考えたくない状況になっているかもしれんな……

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