第299話 ヴァファール王国へ戻ろう

「じゃあ、行くか。」

「そうですね。」

宿に泊まった次の日、俺達は街の入り口に立った。

目的地はヴァファール王国、そこに向かって歩き始める。

俺達が滞在した数日、王都の・・・・は平和そのものだった。王を殺したというのに

何も起こらないという事は、やはり代わりの誰かが国の管理をやっていたのだろう。


「フィル、体調はもう大丈夫か?」

「う、うん。ねぇ兄ちゃん。」

「どうした?」

「いや、何でも。えへへ……」

……何なんだ?他の四人も空気がおかしいというか。スターナ、詐欺師、サーシャが

生暖かい雰囲気を出してるような。

いや、それ以上に酷いのが……


「ふふふふふふ……」

殺意が籠っているような、いないような怪しい目でずっと見られている。

「何なんだ、お前は?」

「別に、何でもありませんよ?昨日は邪魔されちゃいましたので……」

……何がだ?

まぁ、あまり気にしないようにしよう。したらダメな気がする。





ダラ車などを使わずに移動しているのは、理由がある。それは……

「クカカカ!」

「でぇりゃあ!」

ゾンビもどきが襲ってくるようになったからだ。

王都に滞在している最中に【見識】で、街の外に反応が出現するようになっていた。


「外は変なのが溢れてきてるわね~。」

「早くヴァファール王国に行きたいのに、も~!」

コイツらをのさばらせて、町や村を襲われても困るから、なるべく始末しながら

回っている。


「でも、今まで立ち寄ったところだと、人が多い場所にはいなかったよね。」

「そうであるね。」

あいつらはなるべく人に見つからないように、どこかに集まってるのか?それとも

俺達だけを狙っているのか……それならいいが、まぁ確証はないしな。

とりあえず今日のところは、近くの街に泊まろう。


やはり町の中ではアイツらは襲ってこない。そして夜。

「さぁ、勇者殿。髪を梳いてください。」

風呂に入ってきて順番に並ぶ三人。だが、スターナから待ったが掛かる。

何事だ?と思っていたら、他の二人を連れてきた。


「え、何々?」

「急にどうしたのさ?」

二人も様子が分かっていないようだ。


「勇者ちゃん、この二人の髪も梳いてあげてくれるかしら~?」

「……いや、構わんが。」

「「え、えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」

詐欺師は小さいから面倒だろうと、フィルはクセっ毛だから意味がないと

しきりに断っていたが、スターナの強烈な後押しと威圧で、何故かやる羽目に

なった。

手間も多少しか掛からないから、問題はないんだが……

脳筋のふくれっ面を横目に溜息を吐きながら、借りてきた猫のように動かなくなった

二人の髪を梳いてやって、その日一日が終わった。

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