第292話 何を考えている?

「「「……」」」

俺達は三人とも押し黙った。


「ふん、気が弱き者共よ。余を前にして立ち尽くすのみか。」

「黒幕と思っていたヤツにこんな簡単に会えると思わなくてな。それに、

お前が四年前の戦争で自分の無能をさらけ出した愚王の類と分かっているからな。」

「兄ちゃん!?」

「あんた、仮にも国王に何いってるのよ!?」

フィルと詐欺師は喚くが、話を聞く限りそうだとしか思えないのでしょうがない。


「言いおるわ、小僧が。」

「事実そうだろう。お前は何を企んでいる?」

「世の安定よ。そのための道化が必要なのだ。」

ジュッドは自信に満ちた目で俺を見てくる。


「四年前の戦争もか?」

「無論だ。」

「……死体から人を生み出すこともか?」

「無論だ。」

眼も口調も嘘を吐いてるときのような迷いは見られない。この男は絶対の信念を

持って語っていると思わせる何かがあった。だが、それでも……


「そのせいで多くの人が犠牲になってもか?」

「さらに多くの命が救えれば問題ないだろう?」

「ふざけた事を……」

「何もしていない者が口を挟むな!後から物を言うだけは容易いだろう!」

こいつ……


「ツクヴァを馬鹿にしてんじゃないわよ!」

「そうだよ!兄ちゃんはいろんな人を助けてきたんだから!」

二人が俺を庇って怒り出した。


「お前ら……」

「小僧が救った命など、魔王を消滅させる事に比べればゴミと変わらん。」

何?


「魔王を消滅させるだと?」

「そうだ。そのために戦争を起こし、魔鉱石を使って人の負の感情を集め……

ク……復活……ケケケ……」

喋っているジュッドの様子がおかしくなり、肉体が変形していく。


「マズい、逃げるぞ!」

「え、ちょ!?」

「これってまさか!?」

辺りにはレリアの姿はなく、いつの間にか消え去ったらしい。くそったれ!

扉を蹴破り、二人を抱えて逃げようとしたが、物凄い速さで追い抜かれ俺の前に

降り立つ。さすがに、この状態の相手に地形もわからず、二人を抱えて逃げるのは

無理があったようだ。


「クケケケケケケケケケケケケ!」

今までのヤツらとは違い、身体中の肉がそげ落ちたように細くなった獣人の王、

ジュッドがそこにいた。


「……まさか王様までとは。」

「もう後戻りできないところまで来ちゃってる感じね。」

ジュッドの叫び声を聞いたせいか、兵士達が集まってくる。しかも普通の兵士

ではなく、生気がない兵士達が。


「チッ……!」

「どうするのさ!?」

「どうするもこうするもないでしょう!?こうなったらやるしかないわよ!」

敵の数が多いが、さすがにコイツらをそのままにしておくわけにはいかない。


「ジュッドは俺が相手をする。他のヤツらを頼めるか?」

「分かったわ。」

「兄ちゃん、気を付けて。」

話が終わったと同時、敵が雄たけびを上げながら迫ってくる。

まったく、面倒だ!

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