第290話 城の中へ

「私が偵察に行く?」

「いや、もしも何かあった場合、対処できないと困る。」

いつもなら詐欺師に城の偵察を頼んだが、さすがにこの状態の城で様子を

伺ってる最中に見つかったら、命の保証ができない。


「でも他に手はないわよ?」

「ボクもあまり思いつかないな。」

忍び込む……か。【見識】で確認しても、あまり人手の薄い箇所は無く、

無理に入ったら、すぐに見つかりそうだ。

その時、視界の端に映る物があり、そちらに目をやった。


「どうかした?」

「静かにしろ。」

そう言って指だけで方向を指すと、二人も事情を理解したみたいだ。

俺が指さした先には樽を城に運び込もうとしている兵士の姿。だが、正門では

無い方向に向かっている事から、他に入り口のような物があると当たりを付け、

後を追う事にした。


しばらく後を付けていくと予想通り城の中に入っていったが、思いがけない

方法で消えた。

「……今、壁を通り抜けたよね?」

「……私の見間違いじゃなかったのね。」

兵士達は何を躊躇わず壁に歩いていき、ぶつかると思ったのだが、音もなく

吸い込まれるようにいなくなった。


「どうなってるんだろうね、コレ。っと、うわ!」

フィルが不思議がって壁を触ろうとしたら、同じように通り抜けて

向こう側に行ってしまった。


「ちょ、大丈夫!? ってもしかして……」

詐欺師も俺と同じ考えをしたらしく、ほとんど同時に壁に触れてみると、

すり抜ける事が出来た。


「いててて……」

「ケガはないか?」

「あ、うん。手の平を擦りむいちゃっただけだから。」

転んだままのフィルを助け起こして、周りを確認する。場所はどうやら

城の裏手みたいだが、近くに扉があった。


「あそこから入ってみましょうか。」

「そうだな。」

その扉はどうやら鍵がかかっていなかったらしく、すぐに開いたが、

不思議な事に階段が続いていた。しかも地下へ進むように。


「どこに繋がってるんだろ?」

「行けば分かる。」

俺達は扉から続く階段を進んでいき、しばらく経つと巨大な部屋に出た。

部屋は地下一階と地下二階で別れており、階段からは地下一階に繋がって

いた。その下では、数人が何かの作業をやっている。


あまり物音を立てないよう、物陰に隠れつつ様子を伺う。

「あ、あの樽だ。」

兵士達が昼間から何度も目撃した物を運んでいる。中身が気になって

いたのだが、蓋を開けて確認したとたん、見なければ良かったと少しだけ

後悔した。


「うぇっ……気持ち悪……」

その中はギッチリと人が埋まっていた。ただし人の形を保ってはいない

物も大量にあったが。

肉、骨、臓器……それらを大量に樽に詰め込んでいたのだ。そこに黒い煙を

出している物体を放り込んだ。

すると樽の中が蠢き、音を鳴らし、固まっていく。


「何よアレ……?」

後には人間・・らしき物だけが残った。

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