第289話 夜中に……

深夜、部屋で眠りに付こうとしている時の事だった。

「……何だ?」

急に外から怒鳴り声が聞こえてきた。

どうやら騒いでるヤツがいるらしく、数人が揉めているらしい。

静かな部屋の中、聞き耳を立てるつもりもないが、勝手に耳に入ってくる。


「んだよ、俺が何したってんだよ!……ヒック!」

「近隣住民から苦情が出ている。今すぐ立ち去れ。」

酔っ払いと、警備隊か何かか?

あまりにも五月蠅くて呼ばれたっていうところか。


「すかした顔してんじゃねぇよ……ったく、こちとら商売に来たってのに、

シケてるヤツらばっかで、虫の居所が悪ぃんだからよ!」

「今すぐ立ち去れ。」

「はっ!同じ事ばかり繰り返しやがって……お前ら人ぎょ」

そこで急に酔っ払いの声が途絶えた。それが気になって窓から少し顔をのぞかせ

外の様子を見ると――


「処理完了。」

酔っ払いの男が、槍で胸を刺され死んでいた。

さらに男を殺した奴らは、その死体をどこかへと運ぼうとしている。

その横顔には生気が無かった。





「あい……?」

「起きろ。」

俺は宿を出る仕度を済ませて、詐欺師とフィルがいる部屋に入って、寝ぼけた

二人の頬を軽く叩き起こす。


「えう……きゃぁ「静かにしろ。様子がおかしい奴らが現れた。」……はぁ?」

寝てるところに入ったのは悪かったと思うが、事情が事情だったので、

軽く説明を済ませる。


「で、追いかけるから用意をしろって?」

「あぁ、早くしないと、アイツらが離れていく。」

今は【見識】で位置を追えているが、実際どのくらいまで離れたら使えなく

なるのか試した事がないので、なるべく早く後を追いかけたかった。


「……わかったよ。じゃあ外に出てて。」

「何かあるのか?」

「着替えるに決まってるでしょ!」

「兄ちゃん、デリカシー無さすぎだよ!」

「……すまん。」

焦り過ぎて、いろいろと忘れていた。さすがにバツが悪く、宿の廊下に

立っていると、準備を終えた二人が出てきた。


「ほら、行くわよ。」

「位置は分かるの?」

「まだ何とかな。」

【見識】には反応が残っている。それを見ながら行けば問題ないのだが、

この方角は……


とりあえず二人とともに、急いで暗い街中を走る。

風の音すら聞こえない、薄気味悪い雰囲気の中を進んでいくと、さっき

浮かんだ考えが正しいと確信できた。

「……ここって。」

「お城……よね?」

さっきのヤツらの反応は、城の中にあった。


「これって、どういう事?」

そうか。この国に入る前の商人の話、薄気味悪いヤツらが増えていると

いうのは、なにも街中に限った話じゃない。

鉄やら何やらが売れる。それをもし武器や鎧にするのであれば、確かに

城の兵士達が一番消費する。あの商人は城に物資を卸していたんだろう。


「まったく、こんな単純な事に気が付かないなんてな……」

我ながら、情けなさに呆れたが、今はとにかく城に潜入する方法を考えるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます