第284話 エーディとの戦い その一

「お……じい……ちゃん?」

サーシャは地面に落ち、動かなくなったガーゴイルを力なく見つめ、


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


悲痛な叫び声を上げた。


「あらら、せっかくの成功体だったのに。」

「成功……何のですか?」

「魔王の力に浸食されても、多少は自我が保てるかどうか。普通は抜け殻に

なって、生前と同じ行動しかとらなくなるんだよね。だから実験したんだ。」

「……その実験のために、サーシャちゃんのおじいさんを?」

「そ。」

悪びれた様子もなく、ただ淡々と事実だけを述べる。


「この外道!」

アリアは剣をエーディに向け直し、斬りかかる。

「おっと。」


縦に、横に、斜めに、前後にアリアの剣が飛ぶも、エーディはさほど難しくも

なさそうに、避け、弾き、逸らしていく。

「くっ!」

「真っ当過ぎるくらい真っ当な剣だけど強いね。もうちょい訓練積まれてたら

ヤバかったかも。」

口調とは裏腹に、焦っている様子は見られない。


「ふざけないで!」

「いやいや、本気だ……よ――っと!」

「あがっ!」

間隙を縫い、前蹴りがみぞおちを捉え、アリアは後ろへと吹き飛ぶ。


「アリアちゃん!」

追撃に入られないように、二人の間に攻撃魔法を張り巡らせるが、

エーディは苦も無く、魔法発動前の魔法陣を切り刻んでいく。

せめて鞭が届く範囲にいるか、質量がある攻撃魔法や落とし穴が発動できれば、

こうも簡単に突破される事は無いのに。

そう思いながらも魔法を止める事は出来ない。


確実に戦力を削る事にしたエーディは、そんなスターナを一瞥してアリアの

元へと向かう。

「無駄な努力は止めた方がいいと思うけどね。」

「ご忠告、痛み入るわ!」

だが奮闘むなしく、先ほどの蹴りで倒れたままのアリアへもう少しと

いうところまで迫る。が、

「あ、あ……れ?」

耐えられない程ではないが、足元が覚束なくなり、魔法を食らいかける。


「サーシャちゃん……」

その声にエーディがスターナの方を見ると、抱えられていたはずのサーシャが

立ち上がり、ボロボロと涙を流しながら、立ち上がっているのが見えた。


「おじいちゃんの……おじいちゃんの仇!」

そう言って薬の瓶や袋を放り投げ、撒き散らされた薬が風に乗って

エーディへと向かう。


「いや、仇ってんなら、そっちの女が殺したんじゃないか。いくら何でも

酷くないかな?」

「うるさい!」

さすがにマズい状況になってきたと判断したエーディは、アリアの始末を

急ぎ、時間はかかりながらも、すぐに手を下せる距離まで接近した。

「やっと着いた。じゃあ、これで終わりだね。」

軽い口調でさっさと剣を振り下ろすのを、スターナもサーシャも止める事が

出来なかった。あと一秒すら経たない内に首を切り落とされるだけ。


……だったはずが、エーディの剣は強い抵抗を受けた。


「ふ……ふふふ。痛いじゃないですかぁ……♪」


艶めかしい喋り方をするアリアが剣を受け止めていた。

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