第276話 再び、クアーズ王国へ

それから日を跨いで図書室に通うが、魔王の情報など見つからず、

結局はそのままクアーズ王国へ向かう事になった。

俺達が出発すると伝えると、ナデュは外まで見送りに出てきた。

「スターナ様、いいですか?女王なんですから、よその国へ行っても

礼儀を忘れず、しっかりした態度でいなければダメですよ?」

「わかってるわ。もう、ナデュちゃんは心配性なんだから~。」

母親と子供のやり取りだな。しかもナデュが母親役だ。


ひとしきりスターナと会話した後、こちらを向いて頭を下げてくる。

「スターナ様の事、どうかよろしくお願いいたします。本当なら

今すぐにでも国に戻って頂きたいんですが「い~や♪」……どうしても

聞いてくれないので……」

苦労かけて悪いな。


「これからクアーズ王国に行かれるのでしたら気を付けてください。」

「どうして?」

「向こうでも今、不穏な空気が流れ出しているそうです。」

「それって……」

イオネでの厄介事が片付いたばかりだっていうのに、またか。


「で・す・か・ら!」

ひと際声に含みを持たせ、俺を睨んでくる。

「ちゃんと護ってくださいね!?」

……半泣き状態で言わないでくれると、ありがたいんだが。

別れの挨拶も終わり、俺達が出発すると、ナデュは俺達から

見えなくなるまで手を振り続け、見送られた。




「んじゃ、ちゃっちゃと向かいましょうか。」

「そうであるね。」

サーシャがやけに嬉しそうな声を上げる。

「久しぶりに戻るのが楽しみである。」

確かにサーシャを連れて旅をして、結構経つからな。喜ぶのも無理は

ないか。


「でも、サーシャちゃんのお家までは少し遠いですね。」

「そうね。あそこはイオネとの国境近くだったし。」

できれば戻ってやりたいが、さっきナデュに言われた事も気になるからな。

後になるかもしれんか。


「今はみんながいるから大丈夫である。」

そう言って、俺の手を握ってくる。最初の出会いからは考えにくい光景だな。

「で、お前は何してるんだ?」

「へ?あ、いや別に何もですね。」

何か隣でタイミングを図ってたように見えたが……


「あ~!アリアちゃんずるいわ。ワタシも手を握りたいのに~。」

「あの、その、えっとですね。」

コソコソと何をやってるかと思えば……


「はぁ、二人ともいい加減にしときなさいよ。道行く人に変な目で

見られてるんだから。」

「そういうお前も頭に乗るな。」

人の上に乗っかって楽している詐欺師を引きはがそうとしたら、手を弾かれた。

「いいでしょ、減るもんじゃなし。たまにくらい、こうさせてくれたって。

ツギャはサーシャにばっかり甘いんだし。」

何で俺が責められてるんだ?


「兄ちゃんも大変だね。」

「そう思ってるなら、どうにかしてくれるか?」

「無理。」

フィルの冷たい一言に落胆しながら、街中を歩き進めていった。

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