第275話 レリア

ヴァファール王国を発ってからどのくらいか?

まさか、こんなところで会うとは思いもよらなかった。

「私は少し、調べ物をしにきたんですが。」

「こんな人の立ち入りが禁じられてるような場所にか?」

「それは、お互いさまかと思います。」

飄々とした受け答えをするレリア。だが、人の気配が消えた異常な雰囲気、

立ち入り禁止の扉が開かれ、中に入れるようになっていた状況。

誰かに誘い込まれたと考えるのが普通で、それは俺の目の前にいるヤツが

やったと考える方が自然で……


「俺に何をさせたいんだ?」

「ふふっ、まさかストレートに聞いてくるとは思いませんでした。」

レリアは薄ら笑いを浮かべる。


「簡単ですよ、魔王を退治してもらいたいだけです。」

「嘘を吐け。」

「嘘ではありません、私の心からの願いなんです。」

今も笑みは顔に張り付いているが、その目は笑っていない。声も真剣味が

増し、本気なのだとうかがえる。


「そんなに魔王が憎いのか?」

「憎い……えぇ、もちろん。それに、これは宿命とでもいいましょうか。

私は魔王を倒さなければいけないのです。そのためなら他の何を代償にしても

構いません。」

今度は息を強く吐き、怒気を含んでいるのが分かる。まるで百面相だ。


「理由は?お前がそんなに魔王を倒したがってる理由は?」

「すぐに分かります。もう結果を待つだけなのですから。」

そう言うと、振り返り部屋を出ようとする。

俺は慌てて声を掛けるが、止まるそぶりを見せず、部屋の外に出ていく。

俺も後を追って、すぐに部屋を出たはずだが、そこに姿はなかった。


「ちっ……逃げられたか。」

すると先ほどまでと空気が変わり、人の気配がし始めたので、扉を閉め直して

俺も部屋を後にした。


「あ、ドゥガ!どこ行ってたのよ!」

「奥の方を調べていただけだ。」

「そうなの?結構探したんだけど~。」

どうやら結構な時間が経っていたらしい。スターナと詐欺師が探し疲れ、

戻ろうとしていたが、俺の姿がなくて歩き回っていたそうだ。

とりあえず合流したので三人のところに戻ると、サーシャの隣には

二十冊くらいの薬に関する本が山積みになっていた。その隣ではフィルと脳筋が

何かやっている。


「じゃあ、私は一枚……」

「僕も引いとこっと。んじゃ、勝負だね。」

「今度こそ、今度こそです。どうですか、20です!」

「ごめん、ブラックジャック。」

「そんな馬鹿な……」

馬鹿はお前らだ。ブラックジャックやってんじゃねぇよ。


遊んでたフィルと脳筋の頬を抓り上げてやると、よく伸びる。

「いふぁい、いふぁふぁふぁふぁ!」

「ひゃめひぇ!ごふぇんふぁふぁい!」

あまりにも騒がしかったから、司書から注意を受けた。俺が。

納得いかない。


その日は諦めるとして、本に夢中のサーシャを引きはがし、宿へと戻った。

それにしてもレリアの台詞、もう結果を待つだけとはどういう意味だ?

アイツが何か隠しているのはわかるが、何を隠しているのかが分からないのが

モヤモヤする。

その疑問が晴れないまま、俺は眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます