第256話 一日の終わり
「ただいま~……」
「やっと帰ってきましたね。」
フラフラと勝手にどこかに行っていたリュリュは、またフラフラと戻ってきた。
「どこに行ってたんだ?」
「ちょっと自分を見つめ直しにね……はぁ……」
俺の顔を見て、溜息を吐きやがった。腹が立つ。
「あれ?サーカス団のみんなは?」
「先に行ったわよ~。バッガさんの様子も心配だからって。」
ゲイル達は自分達がいた宿に荷物を取りに、その後はバッガと合流して、街の
外に出るそうだ。
あんな事があった街にいつまでも居たくはないだろうからな。
「それにしても私達、大丈夫なんでしょうか?」
「何がだ?」
「いえ、その、国王候補とはいえ、大暴れしちゃったじゃないですか?
いくら何でも処罰が無いのはおかしいなと思って。もしかして、後で
とんでもない事になったりしないかなと。」
「やめてよ、もうあんな疲れるのはコリゴリだよ。」
フィルがうんざりというような顔で言う。俺もあんな面倒くさいのはゴメンだ。
クズの顔も見たくないしな。
「それなら多分、大丈夫よ。」
「どういう事だ?」
「国王もバカ息子だろうと、子供に甘いって事よ。」
詐欺師の言ってる意味がよくわからん。
「つまりね、詳しく追及しないで上げるから、見逃してあげてほしいっていう
遠回しのアピールよ。」
なるほど。それで、詐欺師がまだ気付いてないのかと質問したわけだ。
「さすがにアレを野放しにはしないだろうから、いろいろと制限をかけるだろう
けど、見殺しにするよりはマシだって思ったんでしょうね。」
「そうか……」
俺達は喋りながら歩き、泊まっていた宿に戻ってきた。
「だあああぁぁぁ!疲れたぁぁぁぁ!」
何故か、詐欺師も一緒に。
「おい、お前は戻らなくていいのか?」
「私、もう巫女じゃないもんね~。」
そういやそうだった。今更戻っても、向こうからしたらいい迷惑か。
俺は、ずっと抱えていたサーシャをベッドに降ろして、軽く汚れを払ってから
布団をかけてやる。
流石に風呂なり、着替えなりはもう無理だろうからな。
「じゃあ、みんな明日に備えて寝ようか。朝一ですぐに出発するよね?」
「そうですね。」
「長居しても、良い事なさそうだし。でも、その前にお風呂入っちゃいましょ~。」
そう言って、フィルとスターナは別の部屋に行く。
「私もお風呂に行ってきます。」
「あ、付いてくわ。」
脳筋と詐欺師も後を追うように部屋を出ていく。
今日は色々とありすぎて疲れた……この街に着いてから短い期間だというのに
ストレスが溜まるだけだったな。さっさと次の街、いや国か。そこに
向かうとしよう。
そうして俺はベッドに横になって目をつぶった。
「リュリュさん。」
「ん、なぁに?」
風呂上がりの水を飲んでるリュリュに、アリアが話しかける。
「好きなんですか?」
「ごぶぁはぁ!げほっ!」
その質問に盛大に口から水を吐き出しむせる。
「な、なにが、っていうか誰が!?あれは成り行き上で仕方なく!」
「……勇者殿がとは一言も言ってませんけどね。」
単純な引っ掛けにかかり、固まるリュリュ。
「も~……またですよ、またですか。もう本当に……」
「あの、アリア……」
少し怖くなり、ブツブツ呟くアリアを止めようとしたが、キッと睨まれて
また固まる。
「いいですか、今回はあくまで仕方なくですからね!本当に結婚するのは
私ですから!」
そう宣言したアリアの後ろから、さらに声が聞こえる。
「あら~、私もお嫁さんになりたいんだけど~。」
「もう!だからみんなして……!」
その夜は、女性陣がしばらく騒々しい夜を過ごしたという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます