第254話 予想外すぎて
「はぁっ!?ほう、放棄ってお前、出来る訳ないだろ!」
クズが喚いて、周りの困惑の声が強くなる。
「この国での巫女の重要性は知ってるだろ!」
「知ってるわ。」
「だったら!」
腕を斬られ、出血も激しかったはずなのに、ギャーギャーとうるさいなんて、
無駄に根性あるクズだな。
「アンタなんかと結婚?虫唾が走るわ!絶対イヤ!」
「父上からも何か言ってください。」
ついに婚約者まで親頼みか。どうしたもんか。
「リュリュよ。さすがに我が
ではない。」
国王の言葉にニヤリと笑う詐欺師。
「じゃあ、こうするしかありませんね。私、リュリュ・ヴェルグラディアは……
ジュギャアを夫として愛する事を誓います!」
「は?――んっ!」
いきなり詐欺師にキスをされた。
「――ふぅ。精霊王達も祝福していただけますか?」
《ぬ?あぁ、そういう事か。もちろんだ!》
《おめ~♪ヒューヒュー!》
《まぁいんじゃね?》
《あ、えっと、おめでとうございます!》
《まさか、そういう関係だったとは……やるわね!》
「「「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
俺の口から自然と叫びが漏れたが、脳筋とクズとハモった。
「ちょっと待て、どういう事だ!?」
「そうです!勇者殿と結婚ってなん、何なんですか!?」
無視して詐欺師が国王の方を向く。おい!
「陛下、そういう訳です。」
「バカな!?そんな勝手に結婚出来る訳ないだろ!こんなの無効だ、無効!」
「アデント、この国で巫女と結婚するにはどうすればいいんだっけ?」
「それは、両者が愛を宣言して、精霊王達に認め……られれば……」
その言葉に勝ち誇った顔をする詐欺師。
「どう?今、精霊王達は認めてくれたわ。むしろアンタとの結婚なんて
許してくれないんじゃない?」
《却下だ。》
《はんた~い。》
《無理な。》
《……ごめんなさい。》
《生理的に受け付けないわ。》
確かにその条件ならタイミングは今しかない……契約の指輪とやらを
付けてないから強制力がない今しか。だが、俺を巻き込むな!
「巫女と結婚した男性が国王になるなら、ジュギャアを国王にする訳に
いかないし、私を巫女を降りるしかないわね。」
「……そ、そんな物、儀式する時だけの決まりだろ!それに男の方が愛を
宣言してないじゃないか!」
当たり前だ、そんなのしてたまるか!
「それは大丈夫よ。口に出さなくても愛してくれてるもの。その証拠に、
これを見なさい。」
詐欺師が取り出したのは、俺が渡した花。
「ゆ、勇者殿、リュリュさんにピアの花を渡したんですか!?」
脳筋の慌てよう……嫌な予感しかしない。
「ワタシも勇者ちゃんがリュリュちゃんに渡すところを見てたわ~。」
「もうダーリンったら恥ずかしがり屋だから、言葉で伝えるのが苦手で~。」
ダーリンって誰だ……?ヤバい頭が回らなくなってきた。
「脳筋……ピアの花って何だ……?」
「……婚約や結婚に使われる花です。」
前に聞いたような……
”それでですね、教会で神父様に祈りの言葉を捧げて貰うんですよ。
そしてお互いが相手の胸元にプロポーズ用の花を挿します。”
あの花の事かよ!そんな事、今知ったに決まってるだろうが!
周りも騒然とする中、国王の声が響き渡る。
「今回の件について、処分を言い渡す!」
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