第243話 脱走

薄暗い牢屋の中、ケンタウロス以外の三人が同じ牢に鉄枷を付けられて、

閉じ込められていた。

「ここは、君のような少女がくるところではないよ。」

ゲイルが促すが、サーシャは聞く耳を持たない。

「今、助けるである。」

神鉱石のナイフを貰った事が、ここで役に立った。そう思い、鉄格子を切ろうと

したが、二人から止められる。


「君が脱走させたとなれば、同じく罪に問われるだろう?それは我々の

望むところではない。」

「そうだよ。ほら、見つからない内に早く帰りな。」

ゲイルとバーバラはそう言ったが、クゥからは声が上がらない。薄暗い牢屋の

中でも見える光景に、原因をうかがい知ることができた。恐怖で震えて泣いて

いたのだ。

見れば体もボロボロで、酷い扱いを受けたであろうと容易に想像できた。

それは二人も同じだった……その姿を見てサーシャはナイフにもう一度手をかける。


「そんなナイフで切れる訳がないんだから、さっさと……」

まるで手応えを感じさせないように、いとも容易く切れるのを見て、バーバラと

ゲイルは絶句した。


「早く逃げるである。」






あれから四人は押し問答をした。

ゲイルとバーバラは、自分達がやった事にするから、さっさと逃げろと言い、

サーシャは一緒じゃないと断ると言う。クゥは恐怖が上回ってしまったのか、

死にたくニャい……助けて……と繰り返すばかり。


だが、処刑執行の時間は刻一刻と迫り、ここにサーシャがいるだけでマズいと

思ったが、一緒に逃げないなら自分もと頑なだったため、ついに二人も折れて

全員で脱出する事になった。


「捕まった原因はなんである?」

サーシャが走りながら問いかける。

「そりゃまぁ濡れ衣さね。」

「ぐじゅ……サーカス終了後に、バ、バーバラがアウア鳥の卵をニョんだのを

精霊様の加護を受けた鳥を殺すニャんてって、言われたり……」

「シルフ様のいる山で、調理したもの売ってるじゃないかって反論したら、

彼らは同じく加護を受けた人種。亜人ごときと同じにするなって、お怒り

なすってねぇ。」

「他にもいろいろだが、あまり愉快な話ではないので、割愛させて頂けない

だろうか?」

三人が辛そうなのを見て、サーシャが言及するのを止めた。


「でも、ウチの団長って男前だよね。」

「む?」

バーバラがゲイルについて語りだした。

「獣の姿をしているが、一応は精霊の加護を受けてるし見逃してやるって

言われたけど、サーカス団員を見捨てて逃げ出すくらいなら、死を選ぶって。」

「そうそう、あの時はカッコよかったニャ~。エヘヘ。」

「……無駄口は止めようか。」

照れてるのか、スピードが少し上がるゲイル。


この後、体のサイズの問題から、別の場所に閉じ込められているバッガも助けて

逃げ出さないといけないので、急いで戻らなければいけない。

そう思い、他の二人も足を速めるが……


「おやおや。犯罪者が逃げちゃダメだよ。」

前方に一人の男が立ちふさがった。


「アデント……?」

「あぁ、君は確かリュリュを連れて来てくれた……ふぅ、やっぱり薄汚い獣人は

始末しておくべき……いや、少し面白い余興を思いついたよ。」

アデントが手を前に伸ばす。



「せいぜい楽しませてくれるとありがたいね。」

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