第202話 湖畔へ

「う~、寒い~!」

「し、死んでしまう……」

次の日、魔法屋の店主に聞いた通りの方角に歩いていくと、確かに風が

強くなり、寒さも増してきた。

森へ続く道は結構入り組んでおり、すれ違いになったり、変に距離を跳び過ぎて

迷っても困るため、スターナの転移魔法は使ってない。


「フィル、アンタ全身鎧着けてるんだから風が当たらない分、平気なんじゃ

ないの?」

「な、何言ってるのさ……この鎧は金属だよ……?全身を冷えた鉄で包んでるって

考えてみたら、どんだけ――ヘックション!」

確かにそれは拷問だな。


「鎧に耐性付けた方が良かったんじゃないかしら~?」

「お金が無いックシュン!」

中々に世知辛い話だ。

「スターナ、詐欺師、火の魔法を使いながら進めるか?」

「そうね~。」

「しょうがないわね。」

本来なら詐欺師のMPを温存するため、他には敵がいた場合に気付かれないように

するため、目立たないように魔法を使わせたくはなかったが、さすがに

このままは無理みたいだ。フィルが死んでしまう。


「あ、あったか~い。」

「感謝しなさいよ、まったく。」

「ありがとうございます、スターナさん。」

「どういたしまして~。」

全員、火の魔法で暖まりながら進む。だが、詐欺師の出す魔法はともかく、

スターナは進む先に魔法陣が出て、そこから炎が上がるもんだから、悪目立ち

し過ぎる気はする。

ちなみに俺が魔法を使おうとしたら、必死で止められた。

納得いかない。


「そういえばサーシャ、昨日作っていた薬は何だったんだ?」

昨日、寝る前にゴソゴソと何かを作っていたのを思い出して尋ねる。

「地面が雪とか氷で歩きにくかったら使おうと思った薬である。でも、あまり

必要なかったである。」

その言葉に地面を見る。確かにこれだけの寒さのわりに、地面の土に霜が

降りてる事すらなく、普通の状態を保っていた。


「やっぱり、この先に何かあるかもしれませんね。」

「そうだな。」

一日かけて着く場所に、その日中に辿り着くことはなく、途中で野宿をしながら、

先に進んだ。町で寒冷地用のキャンプ道具を買っておいて良かった。



「ここが湖畔だね。」

「綺麗ね~。」

水は凍り、細かく砕けた氷が空気中に漂ってキラキラと光っていた。夜なら

ダイヤモンドダスト現象が見られたかもしれない。


「で、精霊っていうのは、どこにいるんだ?」

「そうね、精霊は体を構成してる属性の力が強いところに住んでる事が多いわ。

ほら、精霊王が溶岩から出てきたでしょ?」

あぁ、アレか。


「だったら水の精霊は……水の中か?」

「この湖畔は綺麗みたいだし、そうかもしれないわね~。」

「凍ってるが、出て来れるのか?」

「無理だと思うよ。」

おい、自分の家みたいな場所から出られなくなるとか、間抜けにもほどがあるだろ。


「いや、でもこの辺りは冬でも湖畔が凍るほどまでは寒くならないはずなんだよ。

だから安心してたのかもしれないね。」

急に寒くなったらしいしな。予想外の出来事で対応できなかったのか。


「ギャギャギャ……」

どうするか考えていたら、変な笑い声が聞こえてきた。


「な、何ですか一体!?」

その声の方へ顔を向けると、全身が氷で出来たサイクロプスと同じくらいの

体格をした猿が現れた。

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