第175話 ダウロへ

「勇者殿、サーシャちゃん、おはようございます!」

脳筋目覚ましは、今日も絶好調らしく、強制的に起こされた後、

朝の支度を済ませる。


「おふぁよ……あふ。」

「フィルって朝が弱いのね。」

「弱くない、苦手なだけだ。」

それを弱いというんじゃないだろうか?


全員、宿の入り口に集まったので食堂に行くと、

「あ、アンタら!」

サイクロプスが数人で飯を食べていた。


「いや、昨日は助かったぜ。あんがとな。」

「大した事でもない。それに礼を言うのはこちらだ、宿の手配や代金を

払ってくれたらしいな。」

「礼儀ってやつだ。それこそ、大したこっちゃねぇよ。」

そう言って、大笑いする。


「アンタらも飯かい?だったら一緒に食おうぜ。」

サイクロプス達は5mほどあるので、特注のテーブルや椅子だが、それと

通常サイズのテーブルを並べる形にして、相席にされた。

せっかくだからと、そのまま待っていた俺達の目の前に現れたのは、

肉、肉、肉、肉。

サイクロプス数人がいるテーブルと俺達のテーブルに、ギリギリ乗れるか

どうかの量が置かれた。


「……え?ボクたちも、これ食べるの?」

「遠慮すんな、奢りだ。やっぱり飯は肉に限るぜ!」

朝から肉料理、しかも量が……どうするか?しかし、断るのも悪いしな。

横のテーブルを見ると、どんどんと減っていく。


「胃、破裂しないかしら……?」

「多分、大丈夫だと思います。多分……」

全員が覚悟を決めて、食べ始めた。



「く、苦しいである……」

「はぁ、ふぅ、こんな、お腹いっぱい食べたの、初めてかも~……」

スターナは女王だから、そこら辺の管理は料理人の方でしてたんだろう。


「どうした、全員で腹抱えて?」

「いや、量がな。」

「量?あぁ、足らんかったか。おぉい!おやっさ「止めてくれ、本気で……」」

食い過ぎて死ぬかもしれなかったので、必死に止める。


サイクロプス達は動けなくなった俺達に、別れの挨拶をして仕事に向かった。

しばらく経って、全員が何とか歩き出せるようになってから、やっと町を出た。

「あんまり歩きたくないけど、少し動いて消費しないと。」

「お腹の中が油にまみれてるような感じがするわ……」

今日は多分、昼飯はいらないな。



「そういえば普通に歩いてますけど、フィルさんも歩きで来られたんですか?」

「うん、そうだよ。」

「よくもまぁ、国を越えてまで来ようと思ったな。」

「魔鉱石が見たかったからね。」

目を輝かせて答える。


「そんなにか?」

「そりゃそうだよ、武器や防具を作る職人としては、一度は叩いてみたい

素材だしね。今回のツアーで、少しは手に入れられるかと思ったんだけど、

はぁ~……」

話では、掘り始める前に洞窟が崩れ、ツアー代金は返金されたが、その代わり

入るなと忠告を受けたので、手に入れられなかったらしい。


「災難だったであるね。」

「もう、そうなっちゃった以上は、しょうがないんだけどね。」

さっきまで生き生きしていたのに、ツアーの話をしてから肩を落としている。

「何でもいいから加工したいなぁ~。」

俺にはよく分からない欲求を呟いている。ドワーフは皆、こんな感じなのか?


魔鉱石の話で思い出したので、聞いておく。

「フィル、素材に関する知識ってどのくらいだ?」

「ん?ん~……多分、大陸のほとんど知り尽くしてると思うよ。」

「そうか、なら神鉱石って知ってるか?」

「神鉱石?……知らないなぁ。でも、なんか魔鉱石に似た響きだね。ボクが

知らないってなると、他のドワーフも知らないと思うけど。」


さすがにレア素材、存在すら広まっていない。

加工を頼む事にしたが、大騒ぎにならないといいんだがな。

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