第174話 眠るまで

食堂の店主に礼を言い、宿に向かう。

こんな遅い時間に、宿に新規の部屋を取ろうとしたら迷惑かと思ったが、

いい方のサイクロプスが話をしてくれていたみたいで、もし宿に来たなら

泊めてやってくれと頼まれたらしい。

しかも宿代はフィルの分も含めて、払っておいてくれたそうだ。


「ありがたいですね。」

「明日、あの人達にもお礼言いに行きましょうか。」

宿に泊まれる事になったので、部屋に荷物を置き、風呂に入りに行く。

採掘場でホコリっぽくなったので、体を洗い流したかったからだ。


「ふぅ。」

今日はまた、色々あったな。

神様と会ったとか誰に言おうと信じてもらえるものでもないが、というか

俺が逆の立場でも、危ないヤツと思うレベルだ。

だが、神鉱石の加工してもらう目途が立って良かった。



俺は長湯をして、体をゆったりと休めた。

そして、服を着替えて部屋に戻る。


ガチャ


「あ……」

中ではフィルがパジャマみたいなものに着替える途中だったらしく、

服を握りしめていて、ベッドに下着だと思われる物やら何やらが散乱していた。

フィルは別の部屋じゃなかったか?


部屋の外を確認するが、自分が泊まる予定の部屋で間違いないようだったので、

おそらくフィルの方が間違えたんだろう。

「部屋、間違えてるぞ。」


そう言ったが、驚きの顔をして固まったまま、こちらを見続けて動かない。

「?おい、どう「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

絶叫とともに、全身鎧をぶん投げられた。



「気付いてなかったんですか?」

つまり、まぁフィルはで俺以外の四人は、全員気付いていたらしい。

いや、一緒に風呂に入ったらしいしな。

どうりで男湯の方で見かけなかったはずだ。


「見られた、見られちゃった、誰にも見られた事なんてないのに……」

「ありゃま。落ち込んじゃったじゃない、どうするのよ?」

フィルは部屋の隅で体育座りをしながら、暗くなっている。


「その、悪かった。」

「い、いや、ボクも部屋をちゃんと確認しなかったから、お互い様っていうか

何て言ったらいいのか。」

謝りはしたが、自分にも責任はあると思ったのか、あたふたとしながら

大丈夫と言ってくる。


「じゃあ、さっさと自分の部屋に戻って寝ちゃいましょう。今は夜中なんだから、

騒ぐと他のお客に迷惑よ。」

「あ、その前に髪を。」

リュリュとフィルは自分の部屋に戻り、他の三人はゆっくり休める時の定番に

なってる、櫛を当てる作業をしていく。


「こんなもんか。」

時間をかけて櫛を通してやった後は、いつも通りだったら、脳筋とスターナが

部屋を出て行き、サーシャが残る。が、

「ちょっと待ってください!」

いつも通りとはいかなかった。


「ゆ、勇者殿。」

「何だ?」

「い、い、い、一緒に、ね、寝ませんか?」

いきなり何を言い出してるんだ、コイツは?


「却下だ。」

「どうしてですか!?」

いや、分かるだろ。


「サーシャちゃんに負けてられないんです。」

「我が輩であるか?」

「ライバルが増えた現在、少しでもアピールしないと!特に一緒に寝てる

サーシャちゃんには、リードされてる感じがして。」

そういう事を考えて、一緒に寝てるわけじゃない。


「ベッドが狭くなるから断る。」

「う~……じゃ、じゃあ違うベッドならいいですか?……いいって言ってください、

お願いします……」

服を軽く掴まれ、上目遣いで言ってくる。


「わかった、わかったから離せ。」

「本当ですか!?それなら、荷物持ってきますね!」

脳筋が慌てて部屋を出ていく。

なんか、段々と俺がゆっくり休める場所と時間が減ってる気がするのは、気のせいか?

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