第173話 次の目的地
「もし貴重な鉱石があるから、それを加工してくれと依頼されたら
受けてくれるか?」
「え、何々、そんなのあるの!?」
フィルがテーブルの上に身を乗り出して、こっちの話に興味を示す。
やはり鍛冶職人としての血が騒ぐのだろうか?
「あるにはあるが、今ここで出す訳にはいかなくてな。」
「ケチケチしないでよ。」
「そういう問題じゃない。」
袋は一回しか使えないと言われたからな。
「アンタ、そんなもん持ってたっけ?」
「気にするな。それよりもだ、鍛冶の腕は確かなのか?」
「あ、馬鹿にしてる。何で他の種族のヤツらは少し背が小さいだけで、
子供扱いすんのさ!」
単純に他の種族だと、子供くらいの大きさだからなんだが……あまり反論すると
ヘソを曲げるから黙っておくか。
「別に馬鹿にする気はない。貴重な鉱石だから、なるべく腕のいい鍛冶屋に
頼みたいだけだ。」
「う~ん、どうしよっかな。ボクも自信はあるけど、どんな物でも加工できるって
思うほど自惚れてないし。」
フィルはしばらく、ウンウンと唸って考えていた。
「そうだ!確かガングルフ王国も回るんだっけ?だったら家においでよ。」
「家?」
「そう、兄貴なら何とかできるかも。悔しいんだけど、鍛冶に関しては天才で、
腕はピカ一なんだよね。しばらく家を放っぽらかしてたくせに……」
凄く複雑そうな顔をしてる。しかし、紹介しようとするところを見ると
本当に仲が悪いわけではなさそうだ。
天才肌の兄……か。
「何があったか分からないけど、この前ふらりと戻ってきてさ、どう?」
「分かった、頼む。」
どうせいつかは加工してもらわなければ始まらないし、職人を探す手間が
省けたと思えばいいか。
「さっきの口ぶりだと、家はガングルフ王国にあるである?」
「そうだよ。ここから八日くらいだね。」
「え、国境ってそんなに近かったんですか?」
「そうね~、ちょうど四日くらいで国境を縦断する町、ダウロがあるわ。」
もう次の王国か。
「う~わ、忘れてた……」
詐欺師がテーブルに突っ伏して、小声で何かを呟いていた。
「どうした?」
「いや、あの、何でもないわ。はぁ……」
どうしたんだ、コイツは?――あ。
「そうか、お前は確か家出したんだったか。」
「うぐっふ!」
「あら、そうなの~?」
どうやら、あまり戻りたくはないらしいが、いつまでも家出扱いという訳にも
いかんだろ。
「いい機会ですから、リュリュさんもお家に帰られては?」
「そうね、そうよね……」
「何だったら、ワタシ達からもフォローしてあげるから。」
そうして二人に言われても乗り気ではなかったが、
「リュリュ。」
「どしたの?」
「家族がいるのに会いたくないとか、めっ!」
「! ごめんね、サーシャに気を使わせちゃうなんて。そうね、近くに寄ったら
顔見せに一回は戻るわ。」
詐欺師はサーシャからの言葉に決断したらしいし、明日からはダウロとかいう
町を目指すか。
しかし、エーディとサベルは悪巧みで仕掛けてきただけで会う事はなかったな。
先に次の国へ入られたか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます