第162話 面倒事は続く

「この度は本当にありがとうございました!」

「いえ、お気になさらず。」

サラが深々と頭を下げて、礼を言ってきた。


「でも……あれは良かったんでしょうか?」

「ん?あぁ、気にするな。」

多分、ブタとモヤシの事を言ってるんだろうが、大丈夫だろ。

たかが、素っ裸に引ん剥いてから縄で縛り上げ、犯罪の証拠、俺と

スターナの証言と爵位はく奪に関して記載した書類を、ヴァファール王国に転送しただけだ。 配達屋に頼んで。

どうやら少し大きめの荷物程度なら転送できると聞いて、尋ねてみると

凄い顔をしていたが、勇者と女王の頼みとあって、断る訳にもいかない

らしく、四苦八苦して送ってくれた。

代金は目を輝かせるくらい多めには払っておいたから許してくれ。


「あ、あの、もし良ければ、ちゃんとしたお礼もしたいし、その……」

「どうした?」

サラが何故か恥ずかしそうにしている。


「その……」

そこまで言うと、俺の手を両手で握ってきた。

「実家に跡継ぎ・・・がいないなぁ~、なんて。」

顔を少し赤らめながら俺を上目遣いで見てきた。


バキィ!――カラン……


何か物凄い音がしたので、全員の目がそっちに行く。

「あら~、おかしいですわ?剣が壊れてしまいました。そんなに脆くないはずなんですけども。おほほほほほ。」

「……おかしいのは、お前の口調と行動だ。」

見ると、剣の柄が握り潰されていた……握力が人間離れし過ぎだ。


そして変な高笑いを止めた後、俺の方にツカツカと歩いてきて、強引に

腕を組んできた。

「ごめんなさい、予約が入ってますので。」

相手を威圧する顔を張り付けたまま、そんな事を言うが

「待て、別に俺は「駄目ですか……?」」

いや、泣きそうな目でこっちをみるな。


「なんだ、決定事項じゃないみたいですね。」

「その、それは!」

今度はサラが反対側の腕を組んできて、

「それに、私ならいいんですよ?」

よく分からん事を言い出した。


「……何がだ?」

俺を引き寄せ、耳に息が掛かるくらいの距離で囁く。

「本妻はアリアさんに譲ってあげます。だから、ね?」

「ちなみに、この国は重婚OKよ~。何なら、その日に結婚も

できるわ。」

スターナがいらん情報を追加してきた。

「う~……!」

脳筋が威嚇するが、サラはどこ吹く風だ。俺はこういう空気が苦手なんだ!

助けを求めるようにスターナと詐欺師を見たら、こっちを見てニヤニヤと

笑ってやがった。後で覚えてろ!


「リュリュ。」

「どしたの、サーシャ?」

「前から思ってたであるが、結婚て何である?」

「「「「「……え?」」」」」

……まさか知らないとは、思わなかった。確か前に結婚だのという単語が

出てきた時は、


”ヅギャ、結婚?するである?”


とか言ってたような。確かに微妙に分かってなかったような言い回し

だったな。

「えっとね、結婚っていうのは男女で、ずっと一緒になる事とでも

言えばいいのかしら?説明しづらいわね。」

「ずっと?じゃあサラも一緒に旅するである?」

「結婚したら無理じゃないかしら。家庭ができるんだから、そんな危険な事もできなくなるし、子供が生まれたら家で面倒見る訳だし。」

「……え?じゃあヅギャは?」

「ヅギャも私達と別れて家に居着くかもね。」


詐欺師の説明を受けたサーシャがこっちに歩いてくる。

「ま、例外もあるし、冒険者は家を留守にする事も多い――って

サーシャ、何やってるの?」

俺の足元まで来たかと思うと、ジャンプして背中に張り付いた。

まるで俺がおんぶしているみたいだ。


「サーシャちゃん?」

「どうしたの?」

「……や。」

ぼそりと呟くサーシャ。この距離でもほとんど聞こえないくらいの小さな声だ。


「サーシャ、どうした?降り「いやぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」」

サーシャが癇癪を起こし、脳筋以上の大音量で叫んだ。

鼓膜が破れるかと思った……

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