第153話 日記

「さて、どうするか?」

とは言ったものの、考えても何も思いつかないため、そこら中を

歩き回り、誰にも見つからないよう、部屋や物を調べ尽くすしかない。


「あ、ここ本が一杯あるね。」

サラと一緒に原因を探していると書斎を見つけた。

俺は棚、サラが机の引き出しを覗いていたら、

「これ、曽々お爺ちゃんの日記だ。」


声を上げたので、俺がカギを壊してボロボロの日記を手に取った。

「悪いな。なんかの手掛かりになるかもしれないから見るぞ。文句なら

子孫に言ってくれ。」

ケヴィンに謝罪の言葉を吐きつつ、日記をめくる。



○月×日

僕の心臓は段々と弱くなっていく。

運動もままならないし、それどころか日常生活にも支障が出る始末。

そんな僕に、父様と母様は次期当主として相応しくないと言った。

ヴァファール国には置いておけない、家を継ぐのは弟のレーグルだからと、イオネ国に僕とバルトだけで来させられたけど、見栄と外聞で

大きさだけは一流の屋敷に住む事になった。

内装が魔法で綺麗になるよう保たれているから、掃除を頻繁にしないで

済むのが唯一の救いだ。


△月□日

息をするだけで辛い。生きているのが、こんなに苦しいとは

思わなかった。

これなら死んだほうがマシだ、いっそ殺してとバルトに言ったら、

初めて頬を打たれて、泣きながら怒られた。

もう、バルトだけが僕の家族なのかもしれない。

どうして女神様は僕を助けてくれないんだろう?

もしかしたら、これを乗り越えれば、来世で素晴らしい人生を

送れるための試練なのだろうか?


◇月◎日

もう数日で……いや、明日にでも僕は死んでしまうだろう。

本当は病気を治して父様と母様に会いに行きたかった。

バルトにお礼もしたいし、レーグルとも仲良くしたかった。玩具だって

譲ってあげてもいい。だって僕はお兄ちゃんだから。

他の子たちみたいに、外で遊んで、勉強だっていっぱいして、みんなに

褒められたかった。

もし、生まれ変われるなら、次こそは誰にも心配かけないぐらい、

強い人間になれますように。



「……」

「曽々お爺ちゃん……」

日記の内容に重い空気が流れる。だが、この日記もおかしくないか?

もう死ぬ寸前の状態で書かれているように見えるが、今日明日の命とは

思えなかったが。

そう思い、日付を確認すると、

「今から一年後、か……」

なぜか日記も時間を超えてきていたらしい。


「そこで何をしておられるのですかな?」

響いた声に振り向くと、顔に影が差したバルトが入り口に立っている。

「お食事のご用意ができましたので、お呼びしようと思いましたが……」

懐から短剣を取り出し、

「まさか、コソ泥とは。私も人を見る目がなくなってしまいましたな。」

戦闘態勢に入られた。


「待て、俺は戦う気はない。」

「あろうがなかろうが、そんな事はどうでもいいのです。死んで

ください。」

そう告げるとバルトは素早く近寄り、短剣を振るってきた。

それをバックステップで大きく避けるが、反応が遅ければ当たっていた。

「っ!避けるとは思いませんでした。」

「運が良かっただけだ。」

相当な実力者だな。この屋敷を一人で守っているだけはある。


「それよりも、サラ。元に戻せないか?」

「え、う、うん!時間よ、あたしたちを過去に戻せ!」

そのセリフを聞いた途端、俺はまた軽いめまいを覚えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます