第152話 もう一人の滞在者

「大きい屋敷である。」

サーシャが聞き覚えのあるセリフを言う。

その後、バルトが出てきて屋敷の中に入るまで、全員があの時とほとんど

同じ言葉と行動を取る。違うのは……バルトの足元にいる幼稚園くらいの女の子だけだ。

しかも普通の子供ではないらしい。俺以外は一切、見ないし話しかけも

しない。 何より……

「誰も触れられないだと?」

体の一部が当たりそうになっても、すり抜けてしまう。


案内された部屋には俺だけ、サーシャには別の部屋に行ってもらってる。

それで、さっきの子供について考える。

状態異常無効だから幻覚の類はないと思う。じゃあ、これは夢?

それにしては現実感があり過ぎるしな。もしかして幽霊とか?

本人に聞ければ、手っ取り早いんだが。

「いいよ、お喋りする?」


考え事をしていた俺の目の前に壁をすり抜けて、少女が現れた。

「俺は思ったよりも疲れていたらしい。」

「せっかく見えるんだから、お話してよ。お願いもあるんだから。」

マイペースに喋りかけてくる少女。


「お前は何なんだ?」

「あたしはね~、曽々お爺ちゃんの子孫!」

何言ってんだ?

「ケヴィンお爺ちゃんはね、あたしの曽々お爺ちゃんなの。」

「いや、分からん。」


根気よく話を聞きだしたが、余計に訳が分からなくなった。

何でもサラという名前の子供は、ケヴィンの玄孫に当たるが、

このままではケヴィンが死んでしまい、自分が産まれないという。

だから、助けてくれそうな人間を過去の屋敷に呼び込んだと。

「過去?」

「そうだよ、約百三十年前くらいかな?」

……ついに時間も飛び越えたか。


「でも、お前は産まれてるんだろ?だったら死なないはず

じゃないのか?」

「まだ産まれてないよ。これから。」

「意味が分からん……」

「だから、このままじゃ産まれないの!曽々お爺ちゃんを助けて

あげてよ!」

つまり自分が生を受けるために、先祖が生きてないと都合が悪いから、

時間を操って誰かに助けを求めたと?

ファンタジー世界、ここに極まれりって感じだ。


「昨日の時点で姿を見せなかったのと、俺だけが見えてたり、

記憶がある理由は?」

「いい人じゃなかったら困るから、一日だけ様子を見たの。他の人が

見えないのも、記憶がないのも、なんでか知らない。」

適当過ぎないか?いや、まぁ幼稚園くらいの子供に説明しろって方が

無理か。

むしろ今までの話を何とか言えたのが凄いな。


「で、どうすればいい?」

「ん~とね……どうにかしてくれる?」

……無理に決まってるだろ。

「あのな、ケヴィンに命の危険が迫ってるんじゃないのか?その原因を

教えたら済む話だろ。」

「原因とか知らないもの。」


俺はこの屋敷に泊まった事を後悔した。

「あ、ちなみに曽々お爺ちゃんが助からないと、元の時間に

戻らないよ?」

最後の一言で、さらに後悔した。

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