第151話 おかしな現象

「父親とか母親とかいないのか?」

「現在は別のところで暮らしていますので。」

いろいろ疑問はあったが、せっかくの料理が冷めるので、食事を

取りながら話をする事にした。


「美味しいわね。この料理って誰が作っているのかしら?」

「これは執事のバルトが作りました。」

さっきから料理を運んだり、給仕をしている老執事に目が行く。


「さっきから他に人を見かけないが、誰もいないのか?」

「ここには、僕とバルトだけが住んでいます。」

「え、二人だけなんですか?」

「そうですね。」

基本的には魔族が住む国に、人間が二人だけしか暮らしていないのは

変じゃないか?


「ワタシはここのお屋敷の事を知らないんだけど、いつごろできたの

かしら?」

「結構、昔からありますよ。一族の別荘として作ったはずですから。」

「そうなの?おかしいわね~……」

スターナが何かを考えてる。


「どうかしたか?」

「いえ、一応は国の情報を集めてたから、昔からあったら知ってて

当然だと思ったのだけれど。」

「国王のディールガルド様には許可を頂いて作ったはずです。」

「じゃあ連絡漏れがあったのかもしれないわね~。」

「ディールガルドって誰だ?」

「前国王でワタシの父よ。」

あぁ、あの暴君だとか言われて、スターナに引退させられたヤツか。

その会話が耳に入ったらしく、ケヴィンが驚いた顔で、バルトはあまり

表情を変えていないが、眉の端が上がった状態でスターナを見る。


「イオネ王国の姫様だったんですか!?」

「そうとは知らず、とんだご無礼を。」

「別にそんな気にしなくていいわよ~。それにほら、この国は世襲制じゃないし~。」

そうか、全然そんな気がしなかったが、前は姫だったのか。

もう女王になってるし、そっちで慣れたから、そんな時代があった

気がしない。

「勇者ちゃん、ワタシだって可愛い時はあったのよ?」

「……心を読むなよ。」

「顔が喋ってたわ。」


食事も終えて、それぞれが与えられた部屋に戻った。

警戒はしていたが、調べても屋敷に二人以外の反応はなかったし、

本当に善意で泊めてくれただけみたいだ。

安心してくつろぎつつ、風呂に入り終わったサーシャ、脳筋、スターナを櫛で梳いてやり、サーシャと一緒にベッドに入る。

そろそろ、一人で寝てもいいと思うが、まぁいいか。



「勇者殿、サーシャちゃん、おはようございます!」

「む~……」

うるさい目覚ましがやって来た。サーシャは布団を頭から被って、

抵抗していた。


出発の準備を済ませて玄関に行き、全員が集まったところで礼を言う。

「急だったのに悪いわね~。」

「いえいえ、とんでもございません。また、いつでもお待ちして

おります。」

「僕もまた会える日を楽しみにしています。」

そうして見送られながら屋敷を後にした。


「いい人たちだったわね。」

「魔王を倒したら、また皆で来ましょうか?」

「そうであるね。」

そして街道に出ようとした時、軽いめまいに襲われた。何だ?と思って

頭を振ってみると――日が暮れていた。


「おい……」

「どうしたのよ?」

「もしかして俺は気を失ってたのか?」

「?何言ってるのよアンタ。」

詐欺師は変な顔をして、こっちを見てくる。


「さっきまで朝だったろ。」

「大丈夫、アンタ?」

「具合悪いであるか?」

サーシャまで心配して俺の顔を覗き込む。となると詐欺師が、

からかってるだけという線も薄いか。

「それなら早く、あそこに向かいましょう。」

「そうね~、泊めてくれるといいんだけど。」

脳筋が指差した先は、さっきまでいたはずの屋敷だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます