第142話 洞窟前の戦闘

洞窟から出てきた数は十五匹、襲ってきた数は三匹。

爪や牙で攻撃しようとしてるから、一斉に攻撃しても邪魔になるんだろう。

他の六匹は後方で見ているだけか、さらに残りの六匹は息を大きく吸い込んで

火を噴く準備をしている。


俺は一歩前に出て、鞘が付いたままの剣で横に薙ぎ払う。

「ガギャ!」「ギィヒィ!」

最初の三匹が吹っ飛び、準備をしていた六匹が慌てたように火を噴いてくる。


「ふっ!」

足に力を込め、上半身を地面と並行になるくらい屈ませて、前方に飛び込む。

「へ?――ビギ!」

間抜けな声を上げた一匹のトカゲの顎を、下から掌底で打ち上げる。

他のトカゲがこちらに目をやってきたが、打ち上げたヤツの尻尾を右手で掴んで

振り回し、打ち倒していく。

「アッ!」「ごふっ!」

「距離を取れ!」

七匹ほど倒したところで、俺を襲えと最初に指示を出したヤツが、もう一度命令を

飛ばす。アイツが指揮官らしい。

すこし距離ができたので、ステータスを見てみる。


サラマンダー Lv16

HP:305  MP:156  ATK:61  DEF:51

INT:58  MGR:32  DEX:49  LUC:43

スキル

【火の守り】【炎の吐息】


大したステータスでもないが【火の守り】という珍しいスキルを取得している。

前に戦ったサハギンも【水の守り】を覚えていたが、○○の守りと付いた場合は、

その属性攻撃が無効になるらしい。

俺も攻撃スキルばかりではなく、防御や補助スキルもラーニングできればな。


無駄な事を考えていると、残りのサラマンダーが作戦を練り終わったらしく、

俺の周りを四方から囲むように移動した。

「俺達の行動も見ても動かないとは余裕だな。」

「雑魚だしな。」

「クソが!」

その一言を皮切りに全員が近くにある2~3mくらいの大きい岩を持って

投げつけてきた。


ドオォォン!ドゴォ!


「命中です!」「土煙で見えん!早く生死を確認しろ!」

「その必要はない。」

俺は服に付いた汚れを叩き落としながら教えてやる。


「……貴様、人間ではないのか!?」

「人間だ。ただ体が頑丈なだけのな。」

「て、敵襲ー!」

今の今まで意地かプライドか、洞窟に呼びかける素振りを見せなかったが、

どうやっても殺せないと判断したらしい、ようやく助けを求めた。


出るわ出るわ、総勢四十三匹のトカゲが中から出てきた。

どうやらこれで全員らしい。つまり、

「お前は確か、スターナといた人間か?」

長ものこのこと出てきた。


「スターナ……か。ずい分と態度が違うな?」

「ふん!あのような小娘でも王だからな。顔を合わせた時くらいは、

相応のもてなしをしてやってるだけよ。」

「何だ。俺はてっきり、面と向かって反抗するのが怖いから、媚を売ってるのかと

思ったぞ。」

「口の利き方に気をつけるがいい、脆弱な人間風情が!」

コイツは周りが見えていないのか?


「お前の部下は、その脆弱な人間に叩きのめされてるんだがな。」

「気絶してるだけか?」

「多分な。」

それを聞いたトカゲの長は足を上げて、近くに倒れている部下の頭を踏み潰した。

グチャッという嫌な音ともに割れる頭と、その光景を見て震え上がる部下達が

目に映る。


「……何してる。」

「弱き者が死んだだけ、それだけだ。」

「やはり、お前は気に食わん。あぁ、最後に確認だけはしておく。アルラウネの村に

攻め込んだのはお前の指示か?」

「もちろん。我ら以外の種族が滅びても問題なぞあろうものか。」

少なくともコイツだけは始末する事に決めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る