第134話 スターナの提案

悲鳴!?チッ、暗殺ギルドの生き残りがいたか!

そう思った俺は、与えられた部屋を飛び出して声の元へ走り出した。

いくつかの角を曲がった後、

「ゆ、勇者殿!!」

「ジュッカ!!」

「「助けて!!」」

着のみ着のままといった格好の脳筋と詐欺師、脳筋の小脇に抱えられて

いるサーシャが、俺に突撃してきた。


「どうした、何があった!?」

「アレ!アレ!!」

「そんなに逃げなくたっていいじゃない、傷付いちゃうわ~。」

「来たぁ!」

必死でスターナから逃げているみたいだったので、操られているのかと

思い、ステータスを確認したが、特に変な状態異常にかかっても

いなかった。


「何だ一体?」

「からかい過ぎちゃったみたい。ふふ。」

「? よく分からんがイタズラでもしたのか?」

「そんなところよ~。」

脳筋と詐欺師を見てもカタカタ震えているだけ。

サーシャは、

「むぐふぅ~……」

脳筋と俺に挟まれて苦しそうにしていた。



「~♪」

とりあえず部屋に三人を連れ帰って、今は時間が空いたのでサーシャの

髪をいてやっている。

「で?何で俺の部屋に集まる。」

「いえ、あの、その……」

「身の危険をちょっとね……」

本当に何があったのか。


「まぁいい、部屋に戻れ。」

「勇者殿、今日は一緒に寝ましょう!」

「賛成!」

「断る。」

「「絶対、一緒に寝る!!」」

「……分かった。」

よく分からん気迫に押し通されてしまった。こんな状況は初めてだ。

幸いベッドは二つあったので、一つを脳筋、一つを俺とサーシャと詐欺師で寝ることにした。

……なんで俺の方に人が多いのか?


「それにしても今回の件、サベルが依頼してたとはね~。」

「結局は捕まえられなかったし、逃げられてばかりであるな。」

「考えようによったら、アイツらに近付いてるって事かもな。

でなければ、ちょっかい出さないだろ。」

「そうかもしれませんね。」

自然に眠るまで、俺達は会話を続けた。



翌朝、

「おはようございます、勇者殿!!」

いつも通りのうるさい目覚ましに起こされて目を覚ます。

コイツ、何時に起きてるんだ?いつも俺より早く起きてるな。


詐欺師とサーシャも起こして、全員で朝の支度をしているとドアをノック

する音が聞こえた。

「スターナよ~。入ってもいいかしら?」

「構わんぞ。」

そうして入ってきたスターナを見て、脳筋と詐欺師の雰囲気が変わったが

昨日からおかしいし、理由も話さない。

いいか、無視だ無視。


「何の用だ?」

「伝えておきたい事があって~。」

「?」

「ワタシも勇者ちゃんと一緒に旅に出ようと思って。」

……は?


「どういう事でありますか!?」

マノムが乱入してきた。というか後ろにアッセムドゥ以外の六魔も

見える。

お前ら人の部屋の前で何やってんだ。

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