第62話 サハギン襲来

「サハギン!?」

「どういうヤツらだ。」

「人の形をした魚の魔物よ!」


急いで声の聞こえた方へ行くと、

「助けて――ギャッ!」

「お父さん!」「早く逃げなさい!」

「いやあぁぁぁ!」

見るだけで数十体ほど街に溢れていた。


サハギン Lv8

HP:185  MP:0  ATK:35  DEF:35

INT:12  MGR:27  DEX:38  LUC:21

スキル

【水の守り】


「ふん!」

「ギヒャ!」

強さはスライムより弱い程度だが、数が多過ぎる。


「ハァ!」

「我、尊き神に願い奉る。炎を生みて敵を焼き尽くしたまえ!」

脳筋と詐欺師も攻撃に移るが後から後から湧いてくる。

「キリがありません!」

「だめ、私の魔法じゃコイツら相手だと威力不足だわ!

一体どこから溢れてるのよ!」


この街の警備はどうなってる!?

「これで三十匹目!」

「私達は平気でも住民の方々が!」

被害がどんどん拡大していく!

まとめて退治しようにも、俺の魔法は威力がありすぎる!

その時、


「……出来た!誰かコレを街中に撒いて欲しいである!」

サーシャが何かを作ったらしい。

「詐欺師!」

「ちょうだい!」

そう言ってサーシャから袋を受け取ると、空高く舞って呪文を唱える。


「我、尊き神に願い奉る。風を生みて目の前の物を散らしたまえ!」


サーシャの作った物は一粒が米粒ほどの大きさしかなく、

詐欺師の作り出した風に乗って街中に飛び散った。

それがサハギンの身体に触れると、

「ヴァァァ!」「ピギィィ!」

ひび割れていき、どんどん千切れていく。


「サーシャ、あれは何だ?」

「特殊で強力な乾燥剤である。一定以上の水分量がある物体に触れると、

どんどん水を奪っていくのである。

サハギンは水がないと生きていけないであるからな。」

「サーシャちゃん、凄いです!」

薬師が使えるとは思わなかった。


「ま、まだ街の外に……数千はいるぞ!」

街を囲む壁の上から声が聞こえてきたので、俺も登る事にした。


「アイツ、壁走ってるわよ……」

「勇者殿ですし……」

「非常識である。」


壁の上に立つと、イオネ王国側からサハギンが大量に押し寄せてきていた。

問題はないがな。

「外なら、被害を気にしなくていいな。

火よ。全てを照らす進化の鍵よ。罪深き者に終焉しゅうえんの始まりを告げ

灰燼かいじんに帰せ…ヴァニシュフレイム!」


地面に炎の円ができる。

軽く二千はいそうなサハギン達をすべて囲むほどの大きさだ。

その円は風に巻かれながら上へと延びていく。

風が炎を、炎が風を強めあって雲まで達したそれは、昔見たことのある、

どんな竜巻よりも大きく激しいものだった。


「勇者殿!」

「暑いのである!」

「やり過ぎでしょ!」

いつの間にか俺の隣にやって来た三人が、口々に叫ぶ。

俺も少しやり過ぎだとは思う。


そして炎の竜巻が球状に収縮したと思ったら、弾けたように膨らみ

辺りが光に包まれた。

「眩しい!」

「眼がぁ!」

光が納まり、音も消えたので眼を開けてみる。


サハギンの群れは消えていた。

遠くの森も焼けて山肌が見える。

中心地には1kmを超えるデカいクレーターができている。


「……あの魔法は封印しとくか。」

さすがに少し反省した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る