第60話 国境都市エツ

「サーシャちゃんは魔法とか使えるの?」

「無理である。」

「魔物に遭遇したら、どうするのよ?」

「呪文唱えるより、薬投げた方が早いである。」

薬を投げて魔物を倒すとは珍しい。


「移動用の薬とかはないの?私達を移動させたみたいに。」

「普通に作ると材料が高過ぎるのである。昨日の配合でわざと失敗すれば

いいであるが、少し間違えたら効果が変わるのである。試してみるであるか?」

「やめておく。」

爆発したらシャレにならん。


山の中を移動しながら、サーシャは草や実を採っていく。

「何も今、採らなくてもいいんじゃない?」

「採れる時に集めないと動物に食べられたりするのである。」

そう言って集めるので、元々多かった荷物が、さらに多くなっていた。


「よくそれだけの大荷物を持って山道を歩けますね。」

「慣れればたいしたことないである。」

体の二倍くらいになったバッグを揺らしながら歩く姿は面白い。


「薬を売りに行くのって、いつもこんな感じなの?」

「こんな感じ?」

「山道歩いたり、道中で材料探したり……街の近くに引っ越した方が

いいんじゃない?」

「あそこはおじいちゃんと一緒にいた家だから。」

「……そっか。」


俺達は半日かけて山の頂上に辿り着いた。

「お~見晴らしがいいのね。」

「エツってあそこですか?」

「そうである。」

脳筋が指差した先には国境を分断するような長い壁と

一部だけ開けた場所に街があった。


「あと、一日くらいで着くのである。」

「とりあえず休憩してから、向かうようにしましょ。」

その後も特に何事もなく順調に街に着いた。

サーシャのバッグは三倍に膨れ上がっていたが。



「やっと着いた~!」

「疲れましたね。」

確かに疲れたな。

「先に宿を取るであろうか?」

「そうね。荷物も置きたいし、私達はこれからどこに行くか

決めなきゃいけないし。もちろん、薬売りくらいは付いてってあげるわよ。」


サーシャが首を傾げる。

「どっか、行くのであるか?」

「そうですね。旅を続けなければいけないので、ここでお別れになりますね。」

「……であるか。」


とりあえずは全員一緒に宿を取りに行く。

「サーシャか。また薬売りかい?」

「である。四人で二部屋お願いするである。」

「二部屋?」

「リュリュとアリア、我が輩とドゥガ。」

誰だそれは。


「ちょっと、一緒の部屋になりたいって事?どうしちゃったのよ。」

「おじいちゃんみたいだった。」

昨日、隣で眠った時の事を言ってるんだろうが、

それだけしか言わないと俺が年寄りみたいだろ。


「後ろの人達は連れか?」

サーシャが頷いた。

「そうかい!そりゃ良かった。ずっと一人で薬売りなんかやってるから

心配したんだよ。あんた達、サービスしてやるから仲良くしてやってくれよ!」

「ありがとうございます。」


店主が話に割り込んで来たので、なし崩し的に部屋割りが決まった。

詐欺師も特に騒ぐ事はしなかった。

「じゃあ荷物を置いたら集合しましょ。」

「了解である。」


数分後、

「私、荷物を置いたらって言わなかったっけ?」

「言ったな。」

「サーシャが持ってるのって何?」

「売り物とその他いろいろである。」


街に入った時と量が変わっていない。

「……まぁいいわ。ちゃっちゃと行って売っちゃいましょ。」

「あるね。」

言葉遣いがおかしいどころじゃない。

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