第29話 それぞれの国

「なぁ、なんであんなところで行き倒れてたんだ?」

「? お腹が空いてたからよ。」

「そういう意味じゃなく…ここら辺にいた理由だ。」

「別に、ただちょっと家出してきただけよ。」

妖精も家出するものなのか。知らなかった。


「ウチは国自体が堅っ苦しいのよね。何か皆の模範にならなきゃいけないとか

聖なるものはやましい行いをすべきではないとか、言ってる事は

理解できなくもないけど何かちょっとね。」

「ガングルフ王国だかにはお前みたいのが住んでいるのか?」

「え、何?あんたそんなことも知らないの?プププ!」


食器を上から被せた。

「え?ちょっと何するのよ出しなさいよ!」


1分後

「ちょっと…苦しいんだけど…」


2分後

「い…息が…」


3分後

「…」


そろそろいいかな?

食器をどかしてみる。

手足がピクピクと動いてる。死んでないな、じゃあいいか。

さて脳筋はま「何すん…すいませんでした。」

食器をまた被せようとすると素直に謝った。


「で、話の続きなんだがガングルフ王国にはどんなヤツらがいるんだ?」

「えっと、そうね。精霊、妖精、エルフなんかね。」

そっちの国にも行ってみたいもんだ。

「ここに来るまで、どのくらい掛かったんだ?」

「そうね…2ヶ月くらいかしら。」

2ヶ月?


「俺は首都からクアーズ王国まで一週間程度だから、大陸自体が

小さいものかと思っていたらそうでもないのか。」

「それは、あんたらが勝手に首都を動かすからでしょ。そのせいで

ウチとの国交もやり辛くなったし、でも女王様は文句言わないし…

なんでそんなことしたのよ!」

俺に言うな。


「事情は詳しく知らんがクアーズ王国とやらのやり取りのせいだろ?

そっちに文句言うのが筋だな。」

「嫌よ、あいつら見た目怖いもん。食べられそうな感じするし。」

まぁさっき聞いたのを考えると確かにな。


「この大陸ってどんな形で、国はそれぞれどんな位置にあるんだ?」

「…アンタさすがに非常識過ぎない?今までどこに住んでたのよ。」

「気にするな、で?」

「そうね、大陸自体は単純に言うとひし形みたいなものよ。それで

北の国家がここ、ヴァファール王国。

東が私達の住むガングルフ王国。

西の国家がクアーズ王国。

南がイオネ王国。

そして最後に中央にあるのがティリア宗教都市よ。」


宗教都市か、バチカン市国みたいな感じか。

「イオネとティリアはどんなヤツらが住んでるんだ?」

「イオネは魔族よ。」

「魔族…魔物ではなく、か?」

「魔物ってのは闇に染まりやすい知能が極端に低いようなヤツらの事を言うのよ。

でも魔族は知能がちゃんとあるから会話も出来るし、国同士のやり取りもする。

ただ好かれてはいないけどね。」

知能の差だけで扱いが天と地ほども違うんだな。


「戦争とか起きないのか?」

「いや、まぁ起きる時もあるけど人間だっていろんなところと戦争するでしょ?

それと変わらないわよ。」

そんなもんなのか。

「じゃあティリアは?」

「あそこは特殊で4つの国から女神ティリアを信仰する人の代表が集まってるの。

基本的に他の国や政治に不干渉なんだけど、あまりにも酷い時は仲裁に

入ったりしているわね。」


俺とリュリュが話してると森がゴソゴソと動いた。

そっちに目をやると、

「勇者殿、リュリュさん、捕まえてきました!」

熊を引きずってる…


さすがに俺もリュリュも呆然としながら見ていると手際よく毛皮を剥がし、

内臓やその他の処理を済ませて木に縛り付けて丸焼きにしている。

「く~まにっく、く~まにっく、フンフフ~ン」

ずいぶんとご機嫌なようで鼻歌を口ずさんでいる。

「あ、もう少し待っててくださいね?いやぁ、まさかこんな美味しそうな

獲物が捕まえられるとは思いませんでした。あ、余った肉は短期間用の

保存食にしておきましょう。」


コイツに嫁の貰い手はないな、と思った。

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