第23話 部屋での会話

しばらくするといい匂いが漂ってきた。

そしてオガヒが料理を作って戻ってきた。


ネアと脳筋も含めて四人で飯を食ったが、なるべく暗い話題を

避けるようにはして話していた。

そのためかネアも戻ってきた時は暗い顔をしていたが、今は笑っている。


食事を終えてしばらくぼ~っとしていると、

「寝室を案内しましょう。」

と言ってきた。部屋に着くと

「昔、家内が使用していた部屋でしてな。ご自由にどうぞ。」

とだけ残して去っていった。


俺と脳筋はくつろいでいた。

「なぁ。」

「何でしょうか?」

「オガヒってやつ、町長をやるにしては若すぎないか?」


疑問を言ってみる。

「この町の先代町長は4年前の戦争で亡くなられたそうです。

それで代わりは皆を引っ張れるような若者のほうがいいだろうという

意見が挙がったそうです。」

「詳しいんだな。」

「騎士は周辺地域の警護もしなければいけないので、小さな町や村の情報でも

覚えるのが必須なんですよ。」

覚えられるのか?


「それにしては盗賊団の話とか知らなかったんだろ?」

「そうなんですよ!おっかしいなぁ…警護してる人の報告や各町村の代表から

話を通すようになってるはずなんですが。」


代表はオガヒか。

仮にも盗賊団と契約しているんだし、それにさっき罪をなすり付けると

言ってたからな。町ぐるみで隠蔽すれば簡単にはバレないか。


「その件はいい。ところで王都が魔法で転移されたと言っていたな。」

「あ、ハイそうです。でも勇者殿は本当にどこから来られたですか?

その逸話を知らない人はいないと思いますが…」

「遠くからだ、気にするな。」

あまり俺の話を聞かれたくはない。


「まぁなんだ、それにしても魔法ってのはそんな事までできるのか。」

「通常は無理です。」

「でも実際出来たんだろ?」

「そうなんですよ!方法は分かりません。ですが、大規模な魔法を発動させて

転移したという王からの発表がありましたから。」


あいつが関わると裏がある気がするな。

「人もいたはずじゃないのか?」

「人々や動物、道端の石ころ一つまで瞬時に移転させたそうです。」

化け物じみているな。


「ちなみに元の場所はどうなってるんだ?」

「それが不思議な現象が起きてるんです。」

不思議な現象?

「魔物が湧いてくるとかか?」

「逆です。寄ってこないんです。」


まるでホラーでも話すような口調になって続ける。

「普通に寄らないだけではないんです。愉快な話ではないですが、騎士団員が

周辺で魔物を捕らえて無理やり近寄らせる実験をしたそうです。

ですが、意地でも近付かなかったと…

死ぬのが分かってて抵抗したり、酷い時は自分で自分を殺したそうです。」


魔物も考える力がある。

しかしそれが低い分、生存本能が強いはずだ。

それが自害か…


「その現象の原因は分かりそうなのか?」

「今のところは…ずっと首都だった場所でそんな怪奇現象が起きるとは

誰も思わなかったですし。」


そう簡単には分からないか。


「ずっと首都だった場所を転移させる話をよく国民が納得したな。」

「納得しない方もいましたが、周辺の惨状を訴える人のほうが多かったので。

その時にレリア殿の評判が一気に上がって表立って反対することも

しにくかったですし。」


一日で首都転移させるようなやつに逆らうバカもいないか。

その時、

「俺の手下を倒したやつはどこだ!!!」

外から声が聞こえてきた。


「昼に捕まえた盗賊は?」

「この町の男性で物を売りに王都へ行くと言っていた方がいたので、

縄で縛って騎士団への文とともに護送してもらいました。」


昼間の反応とさっきの話から、そいつが逃がしたんだろうな。


「早く出てこねぇと町の人間を一人ずつ殺していくぞ!」


しょうがない、出て行ってやるとするか

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