第284話: 再会
セルバを倒したシュリを回収し、ユイ達と合流するべくクーバァハを訪れていた。
この町にいるはずなんだがな。
エルフの里の一つクーバァハ。
ここは、先のエルフ超会議が行われた場所でもある。
エルフ達にとっては中央都市と呼ばれる場所だった。
なぜユイ達がこの場にいるのかと言えば、、
7大魔王の1人、ユリシアを見事討ち取った功績として、里を挙げての祝賀パーティが執り行われていたのだ。
その中にはダークエルフの姿も見えた。
以前ならば、エルフとダークエルフとは犬猿の仲でひとところの場所にいるなど考えられない事だった。
エルフ族の危機として、両者が手を取り合い闘った事は、胸打たれるな。
「それにしても流石に凄い人だな」
「ユウこっち」
クロが袖をクイクイと引っ張る。
「どうしたクロ?」
「ユイの匂いする。あっちの方向」
こんな状況でも匂いで追えるのか。
俺には料理の匂いや酒の甘酸っぱい匂い以外には判別不能だ。
クロに連れられた先にいたのは、大量の料理を口いっぱいに詰めていたユイ、ルーの姿だった。
それを見るや否や脇目も振らずにクロは走り出す。
料理に夢中なのかユイ本人は全く気が付いていない。
ルーと目が合い、何かを訴えかけてはいたが、生憎と口の中のものがそれを邪魔して「んー、うー」としか聞こえない。
正面のテーブルを跳び越え後ろ向きにクロが抱きつき、始めてユイが振り向いた。
「え、クロ?」
「うん。ユイ会いたかった」
久し振りの姉妹の再開だった。
遅れてジラと一緒に合流した。
今日はここで一泊予定だったようで、用意されていた部屋へと案内して貰う。
部屋の中に入ると、まずその広さに驚いたのと、中には壁に寄りかかるアリスの姿とイスに座って本を読んでいたアニの姿があった。
「旦那様!」
アニが駆け寄り俺に抱き着く。
その目には大粒の涙が流れ出ていた。
優しくアニの頭を撫でる。
「迎えに来るのが遅れて悪かった」
込み上げてくるものがあったのか、涙が止まらないのか、胸に顔を押し当てたまま、暫くこの状態が続いた。
「私・・・いえ、
鳴き声に混じりボソリと呟いたアニ。
たぶん俺以外には聞こえていないであろうその言葉に自分達がどれほど辛かったのか、酷い目にあったのか、しかし、それを無事に乗り越えたのだと言う思いが伝わって来た。
「ああ、よく全員無事でいてくれた。アニ、ありがとう。皆を纏めあげてくれて。大変だったろう」
このメンバーでリーダー的な役割が務まるのはアニしかいない。
ルーは欲望に忠実だしアリスは基本自分で物事を判断し、一人で行動する。ユイは、連携とかは苦手なんだよな。まさに猪突猛進スタイルだ。
そんな仲間達だからこそアニは相当苦労したはずだ。
ん、目に見えて俺の魔力が減っていたかと思いきや、いつの間にやらアリスが完全修復されていた。
「そういえば、生意気そうな白い魔女みたいな少女が居なかったか?」
「魔女様は戦闘が終わると、忙しいと言って何処かへ行かれましたね」
「シュタリアさん、凄かったよ!強いし速いし、カッコよかったよね」
「魔女様がいなければ私達も無事では済まなかったと思います」
やはり彼女に任せて正解だった。
お礼を言ってもしきれない。
「今度会ったらお礼を言わないとな」
「あ、ユウ。そういえばシュタリアさんから伝言を預かったよ」
ルーがニヤニヤしながら近付いてくる。
「嫌な予感がしないでもないな。ちなみに何だって?」
「えっとね、この借りは身体で払って貰うからのぉ。っていってたよ」
「身体?何だよ身体って…」
卑しい意味では無く、人体実験とか解剖的なヤバさを感じる。
あの魔女ならやりかねない。
前言撤回だ。是が非でも会わないように気を付けよないとな!
その後、ユイ達の武勲を聞かされた。
こっちも別れてからの出来事を説明する。
その後、何故か巨大なベッドで全員一緒に夜を明かした。
と言っても、別に変な意味はなく健全な夜明けだった。
ちなみに、セイリュウは一度魔界に戻ると言うのでエルフの里に入る前に別れていた。
一緒に行動を共にしてくれたら心強かったんだけどな。
俺達は早朝のやっと夜が開け切ったかどうかな頃にノックの音で目を覚ました。
「私はエルフ評議員の一人、ザーメルンと申します。朝早くからすみません。急ぎ伝えたい事があります」
周りを見渡すと、皆寝間着姿のままだ。皆に言える事だが、少し無防備過ぎないか?ルーに至っては下着を履いていない。こんな姿第三者には見せられるはずもなく代表して俺とジラが話を聞くことになった。
連れてこられた場所は、少し広い何もない殺風景な部屋。
俺らと同じく叩き起こされたのであろう、エルフ、ダークエルフ両名の姿があった。
皆、顔に眠いと書いてある。
だが、そんな事は御構い無しと言わんばかりにザーメルンさんが話を進めた。
「先程遠方より入った確かな情報です」
こんな朝っぱらから呼び出されるくらいだからきっと良い話ではないとは思うが、嫌な予感というのは当たるもんだ。
「7大魔王と交戦中だった勇者連合が・・・全滅しました」
「な、全滅だと?」
「それは本当なのか!」
「間違いありません。千里眼の巫女姫エルス様の情報です」
先程まで睡魔と戦っていたこの部屋の雰囲気が一転していた。
その場に崩れ落ちる者、泣き出す者、外へ飛び出る者など様々だった。
千里眼の巫女姫と言えば、以前エルフのエレナから聞いた事がある。確か、同じエルフ族に遠くを見据える能力を持った人物がいると。その力は、外交をしないエルフ達にとって重宝され、特別待遇されているのだとか。
となると確かな情報なのだろう。
俄かには信じがたい。
「勇者連合の規模はどれくらいだったのですか?」
質問を発したのは隣にいたジラだった。
「大凡600程と聞いています。その中には勇者意外にも屈強な戦士達がたくさんおられたそうです。聖女様や大魔術師様など・・・」
俺は言い知れぬ不安を感じていた。
まさか…あの2人も…
そんな俺の心境の変化を逸早く察知したジラが手を握ってきた。
「大丈夫ですよ。あの2人がそう簡単にやられるとは思いません。だって私に勝った人ですよ?」
ジラには全てお見通しみたいだな。
「ありがとう。そうだな、今は2人の無事を信じるしかない」
それにしても困ったな。
本当ならば、ユイ達を回収し、魔女達の向かったもう1人の魔王の下まで向かうはずだったんだがな。
評議員のザーメルンさんの元に伝令役が歩み寄る。
耳元で囁かれると、その表情を強張らせた。
「先程行われたエルフ超会議にて、今後の私達エルフ族の行動について連絡があります」
ざわついていた場が再び静まり返る。
「私達エルフは何もしません」
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