ともくんのおともだち

作者 南 伽耶子

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★★★ Excellent!!!

読んでいて真っ先に思ったのは「なるほどなぁ、盲点だったわ」です。
国の指定難病認定されている病に苦しむ「ともくん」とその周囲の物語なんですが、それを語る視点の持ち主は何と病院備え付けのテレビ。

そうだよな、あるよなテレビ、必ず。
このテレビの立ち位置がまた絶妙にやるせない。
声をかけることもできない、愚痴を聞いてやることもできない、ただともくんが苦しんだり、体調がいい時は笑ったり、ぼうっとしているのを眺めるしかできない。ちょくちょく出てくる「私はテレビ」という言葉が、出てくるタイミングによって毎回印象が変わるのが特徴的でした。

心情描写がとても丁寧な作者さんだと思います。
童話や絵本にしてもよさそうな、優しく深い内容でした。

★★★ Excellent!!!

ほっこり、そしてサラサラと涙が出て心がスッとなるような物語。本作はこの一言に尽きます。

このストーリーを語るのはなんとテレビ。しかも病院にある古い、カードを差し込まなければ電源もつかない、音をだすことさえ儘ならない存在であるから驚きです。

目の前に在る難病患者をただただ祈り、そして声なきエールを贈る悲しき付喪神のような存在は、それだけで地獄のような印象を受けますが――このテレビはそれでも尚心優しく、ともくんを見守り続けていました。

徐々に弱り、死神すらあざ笑うともくんの元に訪れた、とても小さな存在。静かな言葉に載せて紡がれるその存在とともくんの物語は、奇跡とともにクライマックスを迎えます。

とても静かで、リアルで、暖かな物語。恐らくは元(現?)医療関係者であろう作者が紡ぐのは、テレビという静物からの視点を重ねた――もしかしたら昔見た、あるいは見たかった景色なのかもしれません。

心温まる、奇跡のお話。ごちそうさまでした。